第3話 この世界のお話。
その昔、この世界では。
ここは、緑に覆われた世界の小国家。国の名前は【緑色国家フォレストヒル】と言う。
穏やかな人が多くて、みんな仲が良くて。
小さな国だけど、平和な国だっだ。
──彼らがくるまでは。
ある日いきなりやってきた彼らは、自分達を【式色号団】と名乗り、この国を治めている者に合わせろと言ってきた。
赤や黄色、紫やピンク、白や黒。カラフルな装備に身を包んだ彼らに、国民たちは不信感しか覚えなかった。
当然国民たちは、国王どころか、王が住む屋敷にすら近づけようとはしなかった。
そしたらいきなり、民家や木々に火を放って回った。
国民たちは怒った。何をするんだ! と。
火は一瞬の間に広がっていって、徐々に炎に変わっていった。
呆然とする国民たち。それを嘲笑うかの様に、どんどん火をつけて回るカラーコードの者達。
そして、全身真っ赤な装備を身に纏った幹部らしき男が、真っ赤な剣を呆然する国民達に向けてこう言った。
『この世界は単色すぎる。だから俺たちが彩らせてやってるのさ。どうだ、綺麗な赤だろう?』
誰も彼が言っている事が理解できなかった。
それからはあっという間だった。
小さな国だからこそ、国全体が炎に包まれるのには、そう時間はかからなかった。
大人達が絶望し、子供達が泣きわめいている。まさに、阿鼻叫喚といった様子だ。
そんな中、一人の男の高笑いが聞こえてきた。さっきの真っ赤な装備の男だ。
『ハハハハハハ! いいねいいね! もっと染まれ! 俺の色に!』
誰しもがもう駄目だと思った。このまま国全体が燃え尽きてしまうと。そして、全員死んでいくのだと。
──しかし、こんな状況でも。生きることを、国を守ることを諦めていない者たちがいた。
彼らの名は【聖緑なる自警団】。君達の世界で言う警察、または自衛隊の様な組織だ。
彼らは最後まで戦った。
彼らは最後まで国民を守ろうとした。
彼らは、最後まで生きようとした。
彼らは。最後まで。諦めなかった。
国民は彼らに最後の希望を託した。
──だが、国民の希望は幹部の男一人の力によって潰された。
幹部の男が持っていた真っ赤な剣は、火を噴いていたのだ。
幹部の男がその剣を軽く一振りすると、目の前で構えていた15、6人ほどいたスペアミントの面々が炎に包まれた。
どうやら幹部の男の剣は、炎を飛ばすことができるらしい。
『俺とコイツの力に敵うと思ってるのか?』
真っ赤な剣をちらつかせ、悪魔のような笑みを浮かべる幹部の男。
スペアミントのリーダー格である筋骨隆々な男は、その言葉と言動に黙っている事ができなかった。
痺れるほどの咆哮を上げ、幹部の男に突っ込んでいった。
だが、普通に考えれば分かることだろう。
幹部の男には、到底かなわないことを。
リーダー格の男の体を、幹部の男の剣の刃が斜めに通り過ぎ、その通った線から真っ赤な炎が吹き出した。
最後まで諦めようとしなかったスペアミントの面々も、もう諦めるしかないと覚った。
それもそうだ。いくら鍛えてきたとはいえ、平和な国で警察ごっこをしてきた者達と、敵いそうにない異能を持った者。
一目瞭然という言葉がぴったりだろう。力の差があまりにも歴然としていた。
結局、美しい緑の覆う小国家は、一晩のうちに焼け焦げた黒と灰色、そして灼熱の赤が入り混じる街並みに変わり果ててしまった。
大多数の国民が死に、数少ない生き残りや怪我人達は、元自分たちの国から少し離れたところに集落を作り上げ、細々と生活していた。
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