表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クズでも転生できますか?  作者: Perestroika
1/3

第1話 死んだのですが?

コンテニューできないゲームをリタイアした。

 あぁ、意識が薄れていく。

 痛みはない。けど、なんか寒気がするなぁ。

 地面に自分の血だまりができているのが分かる。

 ふと、視線をずらすと。

 ──アイツ、笑ってやがるよ。俺を刺したあの女。


 にしても俺、死ぬのか。なんか実感が湧かないな。

 アイツらのことを考えると、少し寂しい感じもするが。

 ごめんな。俺、人生クソゲーからリタイアするわ。


 意外と早かったな。




 こんなクソみたいな世の中とおさらばできる。




☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆




 夕日が眩しく感じる7月下旬の5時前。田舎なだけあってか、人通りの少ない駅前。

「でさー、最初コイツが何言ってるかわかんなかったの」

「ウケる! ()()()()だもんね、木賊とくさ

 目の前を歩いているこの二人は、俺の数少ない親友の不来方紫苑こずかたしおん東安庭菖蒲ひがしあにわあやめ。後ろに俺がいるの忘れてませんかね。

 愛宕木賊あたごとくさ。これが俺の名前。変な名前?知ってる。

 この名前のおかげで、小学校の頃はすぐに名前を覚えてもらえた。まぁ、それだけなんだけど。

 如何せん俺は()()だから、覚えてもらったところで友達にはなれないけどな。

 上等だ。友達なんていらない。

 こんなクソみたいな世の中なんだ。友達なんて作ったところで、ソイツらもクソみたいな奴らだと思ってた。

 でも、菖蒲だけは違った。家が近所で親同士の仲が良かったというのもあったが、どんなに俺が拒絶しても気にせず話しかけてきた。

 最初は、変わった奴だと思ってた。でも、何かはわからないが、他の奴とは違うと小学生の俺は思ったのだろう。気づけば菖蒲とは()()になっていた。

 菖蒲のおかげで、小学校の頃と比べて大分まともな中学校生活を送れただろうな。

 そんで高校生になって、紫苑に出会った。コイツも変わったやつだよ。……お前が言うな?その通りですね。はい。

 高校生活の初日の自己紹介で、何を血迷ったかこう言ったんだよ、俺。

『愛宕木賊です。趣味は体を動かすこと。中学ではサッカーやってました。後、友達はできないのでいりません』

 思い出しただけで頭が痛くなってきた。なんでこんなこと言ったんだ、俺。

 クラスがざわつく中、紫苑と目が合った。他の奴らが変な物を見る目を俺に寄せる中、コイツだけは違った。

 キラキラさせてたんだよ、目を。

 その時、俺笑っちゃったんだよ。それでまた変な目で見られてさ。

 紫苑とは隣同士だったから、打ち解けるまでにそう時間はかからなかった。


 ──だからって、今その話を菖蒲にするなよ。恥ずかしいだろ!

 というか、お前らいつ仲良くなったんだよ……。


「うるせーよ。てか、自称じゃねぇ。俺は自他共に認めるクズなんだよ」

「僕も菖蒲も、木賊をクズだなんて思ったことないよ? ね?東安庭さん」

「そうだよ! あ、アタシのことは菖蒲でいいよ! 東安庭だと長くて呼びづらいでしょ。アタシも紫苑君って呼んでいい?」

「じゃあそうするね! 全然呼んでもらって構わないよ!」

「てか紫苑。お前らいつの間にそんな仲良くなったんだ……?」

「え、あぁ……。 今だね!」

 コイツやべぇ。コミュ力お化けかよ。

「すげぇなお前……」

「木賊の友達は僕の友達!」

「まぁ、木賊の友達ってアタシくらいしかいないんだけどね」

 コイツ……。今、俺を笑ったな? ダークサイドに堕ちそう。

「菖蒲さん! LINE交換しようよ!」

「うん、いいよー……って、あれ」

「どうしたの?」

「あれー……。アタシ今日スマホ家においたままだったみたい」

「菖蒲……もう学校終わったぞ。気づかなかったのかよ」

「そういや今日スマホ見てないや! ごめん紫苑君、木賊に教えてもらって?」

「わかったー! 木賊、菖蒲さんのLINE教えて! 3人でグループ作ろうよ!」

 女子高生かお前は。

「あいよ。……って、あれ」

「まさか!」

「あっれー木賊? 人の事言えないんじゃない?」

「一緒にすんな。学校に忘れてきたかもな」

「あ、木賊。そういえば帰るときスマホ机の中にいれっぱなしだったよ?」

「今言うなよ! わり、ちょっと取ってくるわ」

「はーい。アタシたちここで待ってるね?」

「先帰っててもいいぞ?」

「いいの! 待ってる!」

「はいはい……。じゃ、すまんがちょっと待っててくれ」

「寄り道しないでまっすぐ戻ってくるんだよ?」

「お前は俺のオカンかよ。すまん紫苑、菖蒲とちょっと待っててくれ」

「了解!」

 俺は二人を駅前に残して学校に戻った。




 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆




「あった。良かったー」

 自分の机の中を確認すると、黒いスマホが入っていた。

 あんまり使わないとはいえ、なくしたら困るからな。

 スマホをブレザーのポケットに入れて、教室を出ようとした……その刹那。

「何だ?」

 わずか一瞬だが視線を感じた。こう見えても人の視線には敏感な方だ。特に、悪意ある視線にはな。まぁどう見えているかは知らんが。

 今の視線は違う。悪意ではない。何か……欲しいおもちゃを見つけた時の子供のような、興味や好奇心のような視線だ。

 しかし、教室には俺一人。文化部に割り当てられた教室でもないし、ここは3階だから校庭の運動部の奴らでもない。

 何か変だ。早く教室を出よう。そう思って、教室のドアに手をかけた。



「愛宕木賊だね?」



 声をかけられた。どこかに隠れていたのか?

 振り返ったその先には──セミロングの黒髪にメガネをかけた少女が立っていた。

「ねぇ、聞いてるんだけど。君が愛宕木賊だね?」

「……だったら何だ。つーか、お前誰だ? ウチの生徒じゃねーだろ。」

「あれ、よく分かったね。ちゃんとここの制服も調達してきたんだけど」

「いくらウチの校則が緩いからって、そんな物騒なもん持ち込む生徒なんている訳ないだろ」

「あ。盲点だった」

 コイツ、バカなのか。

 しかし問題はそこじゃない。この女は、何故か黒と赤の日本刀の様な物を持っている。

「まぁいいや。君が愛宕木賊と確認出来たらそれでいい」

「おいおい、何する気だよ」

「大丈夫。一瞬で終わるから」

「終わる? 何がだ」

 よ。と、最後まで言えなかった。

 言葉が出ない。上手く喋れない。

 それに、目の前にいたはずの女がいない。

 視線を下げると、漆黒の刃に深紅の刃文が映える刀身が、俺の腹から突き出ていた。

 そして、さっきまで目の前にいた女の声が、俺の後ろから聞こえた。

「さようなら。この世界の、愛宕木賊。そして──」



フォレストヒル(向こうの世界)で会いましょう。




☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆




「木賊遅いねー」

「そうだねー。何してるんだろ?」

「紫苑君から連絡してみてくれない?」

「分かった!」




東安庭菖蒲ひがしあにわあやめ


不来方紫苑こずかたしおん


この二人は。


愛宕木賊あたごとくさが既にいないことを。


まだ、知らない。

他サイトで書いているものをこっちでも書き始めました。


拙い文章ではありますが、読んでいただけると幸いです。


感想や誤字報告などいただけると嬉しいな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ