2話 旅の始まり
僕の乗るルール行の特急列車は今止まっていた。
ルール行と言っても街には色々な区画があるらしく、僕らが向かっているのは中央区と呼ばれるルールの玄関街へ向かっている。
「ねぇふみー。」
「なに?」
「この列車は何を待ってるの?」
僕はふみーに聞いた。
この列車は現在、ルールから5kmほど離れた山間部の信号場で追い越し待ちをしている。
だけど特急を待たせてまで優先させる列車なんて一体何があるんだろう?
「あぁ、今こいつは軍用列車を待ってるんよ。」
「ぐ、軍用列車…!?」
ゲームでそんな単語が出るとは思いもしなかった。
まぁ確かに、車内で説明を聞いたときに『ギルドはプレイヤー及びNPC、または、その両方で構成された部隊を持つことができる』とは言ってたけど、軍用列車って…
「そうそう、さっき言った通り、このサーバーにはサーバー中央のセントラルキャッスルを中心に、東西南北にエリアが別れていて、それぞれのエリア中心にも、運営の都市があるわけよ。今待ってるやつは、俺の属する北エリアの中心、PermafrostKingdomから軍需品を仕入れた列車。」
ふみーがそう言い終えたその時、窓の外で轟音が鳴り響いた。
軍用列車が通過した音だ。
音が止んでしばらくすると、直ぐに僕らの乗る列車も動き出した。
「さあ、ルールはもう少しだ!」
「うん!楽しみだなぁ!」
ルール中央労働区:ルール市民鉄路 勝利ターミナル
「すごい…ここがルール…!」
僕は思わず呟いた。
「ふん!サーバー内ギルド都市ランキングトップ10の常連都市を舐めるなよ!」
ふふん、と鼻を鳴らすふみー。
だけど、ふみーが自慢するのもわかる。
だってここ、全てのスケールが違う。
何もかもがでかい。
「買い物だったら付き合うぜ。初期装備だと盗賊は厳しいし。」
「ふみー盗賊だったの?」
「いや、防御特化の射撃手。まぁ、マルチだと初心者狩りとか多いし、念の為ってね。せっかくだし、最初は奢ってやるよ!」
「ほんとに!?やったー!!ふみー大好き!」
思わず飛び跳ねた。
まだお金はあまり使いたくないし、そもそもお金も足りないだろうから、ほんとに助かる。
ありがとうふみー。ほんとに大好き!
そして僕は中央区の市内へと足を運んだ。
ルール中央労働区:公営商店街
「これ似合うんじゃないか!?これもどうよ!?」
買い物を始めてから30分ぐらいがたった。
服屋で防具を買いに来たはずなのに僕はふみーの着せ替え人形として、ずっと突っ立ていた。
まぁ、あながち悪くはない気分だけど…
「でも、ステータスとかは?」
「あ?あー大丈夫。後で合成させときゃどうとでもなるから。」
「じゃあ大丈夫だね!」
安心して着せ替えを楽しもう。それがいい。
結局、買い物は直ぐに終わった。
武器はマチェットでスキルにより、破壊力が増加。これのおかげで、設置オブジェクト破壊効率が上がるらしい。
肝心の防具だけど…
「もこもこしてるけどさ、これ、盗賊にあってるの?」
「フード脱いでマフラーとゴーグルつけときゃ寒冷地仕様の盗賊っぽいぞ。普通にかわいいし。」
僕の防具は、上が白くてもこもこしたジャンバー。手袋と、ショートパンツとタイツに軍用ブーツを履いた若干女子っぽい服装だ。
「いつ行くん?」
「明日。今日は泊まろうと思うんだけどどこかホテルないの?」
僕はふみーに聞いた。ホテルのような建物が見当たらなかったからだけど…
「あぁ、ホテルならあのクソでかいタワー。あれ。」
そう言って、ふみーが指さしたのは、高さ300mは超えているであろうタワーだった。
「えっと…あれ?」
「さあ、ならば泊まるぞ!書記長特権で最上級の部屋に泊めてやるぞ!」
そう言って、僕を抱えるふみー。
「わわわ!ちょっと待っててばー!」
そのまま僕の話を聞きもせず、ホテルへ入っていった。
さぁ、明日は旅の始まりだ!