特殊削岩弾
これは魚雷、ミサイル弾頭として取り付けられ発射、命中後は超硬合金製のブレードで掘り進むものだったが
これは現実に形になるまでは苦労の連続であった代物である。
これは手っ取り早く巨大な岩塊を砕いて前進したいと言う施設科の願望を、ならば手っ取り早くミサイルを使ったれと技術研究本部で取り組んだのがきっかけである。
ところがどっこい、これまた矛盾する問題である。形が不定形な岩石に、ミサイルとして撃ち込むと、必ずしも最適な角度で食いついてくれるかわからないのである。
特に命中箇所の岩石や土砂の堅さが不均一な場合は、ドリル部分がまともに入っていくかも疑問であったのである。
それならばいっそのこと、ミサイルで無理に飛ばさなくても、施設科の隊員が何らかの方法でアクセスして弾頭部を設置、そこから起動したほうが良いと結論され、制式したものの陸上自衛隊の施設科では削岩ミサイルは実質的にはお蔵入りになったのである。
ちょうど第二次大戦でドイツ軍の空挺がエバンエマール要塞を吹っ飛ばすのに使った成形炸薬弾のように据え付けて使うようにされたのである。このため確実性は向上したが、設置の面倒なところは、従来の発破とあまり大きな違いは見られなかったため、あまり用いられる兵器にはならなかった。
ところが、こいつに目を着けたのは意外にも海上自衛隊。これにはソ連海軍の原子力潜水艦の大型化がある。
具体的に言うとタイフーン級の弾道ミサイル潜水艦、オスカー級の巡航ミサイル潜水艦などである。
近年機密解除された改タイフーン級の「赤い10月」は、アメリカへの亡命を阻止しようとする、アルファ級からの魚雷を喰らい、かつ魚雷発射管あたりをアルファ級に衝突しながらも、十分な浮力を維持できたことが記録に残されている。
このような大型潜水艦を攻撃し致命的損傷を与えるために、対潜ロケット、アスロックの弾頭部や潜水艦に積む魚雷の頭部にこの削岩弾の技術を活かせないかとの検討依頼があったのである。
まずは大口径の22インチ魚雷の弾頭部に適用が検討された。魚雷の誘導装置のすぐ後方にまずは成形炸薬弾頭があり、その後ろに、タンデムで削岩ユニット次弾頭が装備された。
これは戦車の、増加装甲ユニットとして使われる反応装甲を無効にするタンデム配置の対戦車ミサイルのアイデアを元にしている。これにより、潜水艦の外殼をまず成形炸薬で破壊、そこに削岩ユニットをぶつけ被害を拡大する構想である。
テストでは、タイフーン級の断面を模したケーソンに実射、これを破壊する効果を上げた。
ただアスロック弾頭、対艦ミサイルへの適応はやはり重量の制約から、破壊力も減少するため、費用対効果の薄いものとして限定配置となったのである。
この通常弾頭のミサイルや魚雷では困難な貫徹能力から、巨大生物にも使われたが、実際に効果があったのは特殊潜航艇に搭載された潜水艦用長魚雷であったのみであったのはやむを得ない結果だろう。
なかなか狙いどおりいかないのが、世の習いってもんです。巨大生物相手に花道を飾りましたが、その後はデッドストックとなってしまった次第です。




