幻の原子力ガスタービン装甲列車
この破天荒な代物は国鉄の原子力ガスタービン機関車の検討から始まった計画です。
これはもともと、国鉄は、鉄道技術研究所が、世界的な原子力ブームの昭和30年に動力調査研究室という部署にて検討した、幻の「原子力ガスタービン機関車」という代物がベースになった、当時最先端のメーザー砲を搭載した装甲列車である。
先にも述べたように陸上自衛隊はメーザー砲実用化のための試作装置を製作するなど、積極的に指向性エネルギー兵器実用化に取り組み、最終的には部隊配備まで進め、怪物退治に投入したりしている。
その過程でついて回ったのがメーザー砲の「電源」であった。防衛庁の技術研究所がある日目をつけたのが上記の国鉄での研究であった。
原子炉の熱を利用、熱交換器で 空気を加熱、加熱された空気でガスタービンを回して発電する、早く言えば、原子力発電所を積んだ電気機関車ならば出力は気にすることはない。
また重量の問題も鉄道レール上を移動することから、道路上を(それも当時の整備中の程度の良くない道路を)移動するより条件は緩和されるのも、大きなメリットと考えられた。
そして国鉄と極秘の情報交換で検討され、とりあえず形にした計画が、(1)原子力ガスタービン機関車(2)メーザー砲車(3)制御/司令車両(4)補給車両(5)火力支援車両(6)工作/支援車両(7)補助ディーゼル機関車
の7両からなる「装甲列車」である。
編成をみてもわかる通り、かって日本陸軍やドイツ陸軍が運用した装甲列車と違い降車戦闘を意図せず、また対空戦闘も考慮しないのが特徴である。
火力支援車両はメーザーが効力低下する雨天時や、メーザーの射撃範囲を外れた至近距離の目標に対する自衛火器として、車両の前後に61式戦車の砲塔を搭載したものである。
メーザー砲を射撃する際は両側にアウトリガーを展開し旋回砲塔の安定を図っている。
なお、原子力機関車から強力なパワーを供給されるおかげで、自走砲形式のものを遥かに上回った7000メートルもの実用射程を持つに至った。
とこのように良いことずくめのメーザー装甲列車だが、世界的にも例の少ない原子力機関車、 があまりにも高価な代物となることが判明、また「無理に原子力発電所まで機関車に積まなくても」と言う常識的判断が優先されたため、幻の装甲列車になったのである。
陸上自衛隊は、妥協案として国鉄が別途開発したガスタービン機関車をもった編成を提案したが、こちらも最終的には燃費などから没。
陸上自衛隊はぶつぶつ言いながらも、メーザー砲搭載装甲列車は断念せざるを得なくなったのであった。
やはり常識的判断が勝ちましたな。
個人的には実物が見たかったですが。