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試製自走多連装ロケット砲奮戦記  作者: 通りすがりの野良猫
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試作多機能戦車とその戦績

先に紹介したM3ハーフトラック改造ミサイル搭載車と同時に運用された試作多用途戦車についての紹介

かって世界の兵器開発の主眼が核兵器とミサイルに移っていた時期があるのはご存知だろうか?

特に何でもかんでもミサイルが主たる兵装、は陸海空3軍に共通したブームとなったのである。

まず軍艦では、アメリカ海軍初の原子力巡洋艦、ロングビーチ。これなど全く、在来の火砲を装備しない巡洋艦としてデビューした。

航空機では、今も我が国を守るFー4はもともとミサイルのみ装備していた。

陸上兵器では、アメリカ陸軍もシレイラ対戦車ミサイルを装備する戦車を3種類も開発したくらいで、ソ連もミサイルを主兵装とした戦車を試作していたのである。

わが陸上自衛隊も、アメリカ陸軍には出遅れたものの、国産対戦車ミサイルを開発したのは既述の通りである。

さて、61式戦車の後継で74式戦車が開発されたのはご存知の通りだと思うが、試作に終わった戦車の系列にはもう二つ存在した。

1つは先に紹介した軽戦車、もう1つがこれから紹介する、試作多機能戦車である。

これは資料映像にもあまり残されていないものだが、その後の戦車開発に多大な影響を残した点で重要なものである。


この車両は、約45トン、エンジンを前に、戦闘室を後方に置いた日本の戦車としては珍しい配置の車両である。主砲はこれまた珍しい127ミリ砲を砲塔に装備しさらにミサイルまで砲塔後部に搭載したのである。

このミサイルは最も最初に自衛隊に試験用に導入されたエリコンの地対空ミサイルをベースにしたミサイルで当時として先進的な対空、対地兼用のミサイルであった。

また車体自体も戦車と自走砲を兼用することを目的に設計されているのである。

面白いのは、試作自体が、車両の開発に重点を置いた(その1)と、完成した車両を遠隔操作する(その2)の二段階に分かれていたことである。

当時から50年近く経った現代ならば遠隔操作の技術も進み、場合によれば自律戦闘すら可能なレベルのものが作れそうだが、この試作(その2)は小隊単位での自律戦闘まで計画するすこぶる先進的な計画だったのである。

なんせ時代は大阪万博の頃、テクノロジーがもたらす未来は明るいものが多かったのである。

と、ここまで読まれたらだいたい想像はつく通り、全ての目論見はコケたのである。


一応、試作(その1)までは完了したのである。

そして、その2に移行する矢先に以前も紹介した富士山麓の異星人の侵略拠点の出現となったのである。

このときはリタイヤしたM3ハーフトラックにミサイル搭載したりなどの応急的車両も投入したが、本命はこの試作多機能戦車の遠隔操作による攻撃が主力になるはずであった。


ところが相手が悪かった。相手は小笠原諸島に飼ってる怪物すら遠隔操作できるテクノロジーの持ち主。

遠隔操作する周波数も、いくつかのチャンネルしか選べない陸上自衛隊のレベルと訳が違う。

攻撃開始後、しばらくでものの見事にジャミングされ、機能停止となったのである。

さらに困ったのは遠隔操作に自信を持ってた技術研究本部は、代替の有線操縦など「邪道」であるとして採用しなかったのが裏目に出たのである。

先に述べたようにこの地上からの攻撃は、異星人に対する陽動作戦となったため、戦略的な意義はあったのは幸いであったが、なんら戦闘に寄与できなかったのは、計画に大きな駄目出しとなったのである。


またさらに追い討ちをかけたのは、新機軸を狙って採用した新規装備品でトラブルだらけになったのである。


海上自衛隊のたかつき級DDAから採用された5インチ砲Mk42をベースに開発された試作127ミリ砲は自動装填で

30発以上という高射砲なみの発射速度で対空自走砲としても使えるように考えたが、艦艇と違いより狭い中で高い発射速度を得るのは機構的に無理が生じ毎分15発程度に抑えざるを得なくなった。

またこの砲の連続射撃は必然的に激しい振動を発生したため、まだソリッドステート化の進んでなかったミサイルの火器管制装置に悪影響を与える始末であった。


またミサイル自身も、レーダーはともかく、レーダーで探知した目標のグラウンドクラッターの除去に手間取り、なかなかロックオンできない始末であった。

これに対して赤外線ホーミングでの誘導に切り替えて、対空目標のロックオンについて改善を図ろうとしたが、今度は地上目標の誘導についての問題が発生、このため、対空用と対地用のそれぞれの誘導装置と異なる種類の弾頭を持つミサイル搭載となり、一気に価格は高騰してしまう羽目になったのである。、


またアメリカとドイツの共同開発のMBT70に影響されて砲塔内部に操縦手を配置、常に操縦手は前を向くようにカプセル型の操縦手席にしたばかりに、操縦手は船酔いに似た悪影響を受けてしまうなどのトラブルも発生した。


車体自体も負けてはいない。こちらはこちらで、後に日本戦車の特徴となった油気圧式懸架装置の試作型を搭載した(射撃の際の車体の安定を強化し、一方で反動を受けるスペードを設置しないで済む)が案の定、オイル漏れ、ダンパーの設定の検討不足から変な振動が発生するなどトラブルが発生した。


かくして、試作多用途戦車は単体の車両としては、全ての新規開発の装備品に不具合が発生する大惨事となったが、結果的には各装備品の先行試作となり、74式戦車、75式自走榴弾砲、のちの81式短SAM、など様々のプロジェクトに多大な貢献をしたのである。



まあ時代より一歩も二歩も先行していたから無理ないですな

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