試製大口径無反動砲
東京タワーに繭を作りやがった巨大芋虫を攻撃した試作兵器です
これは、東京に巨大な芋虫が侵入し、こともあろうに東京タワーて繭を作ったときの記録映画に一瞬写っていることで知られている幻の火器である。
形状は明らかに、当時の米軍が装備していたデイビ―クロケット、つまり超小型核弾頭を発射できり無反動砲そっくりの前装式の無反動砲である。
この時の様子から、「核持ち込みだ」と非難する向きもあるが、よく見ると、数門で交互に射撃していて弾着の様子も明らかに通常弾頭であるのが一目瞭然である。
もし核弾頭ならとっくに東京タワーなど溶けてなくなっているレベルであるからだ。
正体は陸上自衛隊の「試作大口径無反動砲」であった。
本体は、口径155ミリの無反動砲で、これに250ミリの弾頭を前装式に装填しぶっぱなす仕組みである。
傍目には、アメリカの核弾頭を使うと邪推されがちであるが、本来は普通科の対戦車及び構築物破壊用の火器である。
要するに普通科に配備されている106ミリ無反動砲の射程を越える支援火器として試作されたものである。
前装式と言うことで、前線での迅速な再装填が難しいという危惧もあるが、250ミリと言う大口径の成形炸薬弾と、粘着榴弾の2種類の弾薬が利用できるのは、なかなかの魅力的なものであったのだ。
現在のレベルでも成形炸薬弾で250ミリと言うサイズは破格のサイズであり、また粘着榴弾にしても、かなり防御の固い構築物でも一撃で破壊しうることが期待できたのである。(ホプキンソン効果で、限定的な対戦車用にも使える点も当時は評価された)
と言うわけで東京タワーに繭を作った芋虫退治にこの試作砲を持った1個中隊が富士学校から派遣され攻撃部隊に加わり射撃したが、射撃精度が今一なのである。
対戦車用に使えるのも零距離射撃くらいである。そもそも106RRが対戦車用として有効な兵器になったのは、滑腔砲となり初速が上がって弾道が低伸したからだが、この大口径無反動砲は威力は向上はしたものの
精度は今、一つ。
コンパクトな無反動砲プラス低核出力弾頭を組み合わせて従来の野砲の火力を補うことが基本的な発想である兵器システムから核弾頭を抜いてしまうと、牛肉のないすき焼き、松茸のない土瓶蒸し、濡れ場のないアダルトビデオと言える。
このためこの無反動砲が実用化されずに終わったのは、非核装備であることを様々な事情から(核開発や配備のコスト、政治的理由)強いられた自衛隊らしい結果である。
ただ興味深いのは、平成元年に再度、この無反動砲が再検討されたことである。
今回はレーザー誘導砲弾のランチャーとしての検討である。
残念なことに今回は「精度が高い」ゆえに(レーザーシーカーや照射機材含めての)コスト高から、没になるという皮肉な結果になったのである。
あんまり効果なかったですね(>_<)