試製56式105ミリ対戦車自走砲
これは、作ってみたけど今一つな105ミリ自走砲を生かそうとした工夫でしたが
これは当時でも、あまり知られていない陸上自衛隊の幻の装備の一つである。
どんな車両かと言えば、M24戦車に105ミリ榴弾砲を搭載した車両である。
さてこう聞くと、56式自走105ミリ榴弾砲を連想される方々がおられると思うが、実はほぼ同じ車両である。
単に運用が違うだけである。
そもそもこの車両はアメリカのM37を参考に試作した自走砲であるが、機関トラブルがあり、うまくいかなかった。
そもそもは普通の105ミリ砲を改造しないで積もうとしたのが問題の元であった。
とりあえずは苦労重ねた結果、二次試作までして制式化はしたが量産には至らなかった。
が、しかしである。良く見たら、かっての我が陸軍以来の「砲戦車」にも見える。
本格的な「自走榴弾砲」を狙うから射程の問題(通常の野砲をそのまま積むのでは高い仰角をとろうとした場合、後座した砲尾が床と干渉する恐れがあり射程が制限される)、が発生するのである。
しかし、水平に近い弾道で、戦車を狙う「対戦車自走砲」ならばそれほど問題なくなるのである。
またかっての砲戦車の多くが不十分な防護(後方に装甲がないとか)と比べたら、十分な防護もある。
そして更に魅力的なのは、すでに105ミリ砲用に対戦車榴弾が実用化されていることである。少々、初速が遅くても、整形炸薬弾の特質上、関係なく口径が大きいことのほうが効いてくるとこが魅力的なのである。 主力戦車が当面76.2ミリ
、後の61式でも90ミリ主砲 では、ソ連の重戦車相手では心許なかったのである。
「足が悪くても、いいから後ろについていて」欲しかったのである。
こうしてこの車両も、再評価され量産が始まるかとなった矢先に、今度は名古屋方面に出現した怪物への対応で出撃したが、やはり前から問題の機関のトラブルは解決せず、更に基本の車体が小型なM24を選択したためのスペース的な余裕のなさ、この事件の前から新型のM41が配備され始め、M24がリタイヤ始めたことからも、補給面の先行き等も懸念されるようになった等、一気に問題が噴出したためお蔵入りとなったのである。人にも武器にも運、不運ガありますな
運のないものもある物です