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試製自走多連装ロケット砲奮戦記  作者: 通りすがりの野良猫
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M3ハーフトラック、最後のご奉公

こともあろうに、陸上自衛隊富士学校近くの、富士の裾野に異星人の前進基地が配備され、彼らは怪獣をリモコン操作している。

さあどうする?


我が国の防空用ミサイルとして、現代ではPAC3が有名になり、その先代のナイキJは左翼から目の敵にされ、長沼ナイキ訴訟や、大阪府能勢では基地整備の妨害工作など大変な目にあっている。

さて、その更に前のナイキ アジャックスが今回のお話の主役である。


ことの発端は、異星人からの侵略であり、様々な情報から日本の富士山麓にいつのまにやら前進基地が設けられていたことが判明したのである。


一番驚いたのは、陸上自衛隊富士学校。目と鼻の先に異星人がいたなんて!

しかも彼らは怪物を遠隔操作する技術まで持っていたのである。こうなっては、緊急事態である。可能な限りの戦闘準備をしなければならない。

憲法第9条を彼らの言葉に翻訳してる暇はないのである。

何せ9条に謳っているのは「国際平和」であって「惑星間平和」ではないし。


さてこの時、やはり問題になったのは、巨大な怪物への攻撃兵器である。以前から怪物が日本に来襲する都度、様々な兵器を投入してきたが、やはり威力不足が指摘されていたのである。当時のことだから、単なる「大威力の兵器」なら核兵器であったが、そんなもの日本の狭い国土で防衛用に使えるはずもなく、「それ以外」の兵器を使わなければならなかったのである。(その現実を無視して左翼は自衛隊のナイキなどを核と絡めて攻撃したのには、まさに「印象操作」を感じる)

多連装ロケット砲は何度も投入されているが、実質的には牽制くらいにしか役立たないものであった。

レーザーなどの指向性エネルギー兵器は、一部では実用化されていたが、まだ射程の面でリスクの高い物であったし、安保条約により、以前投入された「熱線砲」など後に(結果的に巨大芋虫の繭の羽化を促進させた故に)「自走羽化器」とまで酷評されたこともあり、あまり当てにされていなかった。


こうして「より強力なロケット兵器などないか!」と言うことで苦し紛れにでっち上げて、作ってしまったのが、M3ハーフトラックにナイキ アジャックスミサイルを強引に搭載した車両である。


この二つの装備はいずれも後継が決まり予備として保管されていた物であり、都合良く富士学校には多数のハーフトラックが、さらに比較的近い神奈川の武山には換装されたばかりのナイキアジャックスが保管されてあったのである。

常識的には車体全長に匹敵するような大型ミサイルを搭載することなどあり得ないが、近隣に未知の敵がいる恐怖と危機感がそんな常識などぶっ飛ばしたのである。


とりあえず連射や再装填などしなくても良いからと言うことならば話は簡単であった。


また本来ならきちんと誘導するハズであるが「まっすぐ撃てば目標はでかいからあたる」との強引な判断であった。


一応、レーダーは小さなアンテナがランチャー下部にあるがこれも、ナイキ用どころか、用途廃棄のF86Fから卸したもので単に射程を測るだけの代物であった。


当初はハーフトラックにナイキアジャックスをそのまんま、搭載する勢いであったが、車体の倍の長さのミサイルは振り回せないという現実には勝てず、ブースターを外した状態での搭載となったのである。


サイズ的には、海上自衛隊のターターが手頃であったが、なけなしの対空ミサイル(当時は、ミサイル搭載護衛艦は、あまつかぜただ1隻しかなく、余裕がなかった)を「陸自にとられる」のを警戒した海自が先手を打って、あまつかぜを首都東京の防空任務につけてしまったので、何も言えなくなったのである。


在日米軍は気軽に、ナイキハーキュリーズやらオネストジョン、リトルジョンを提供しようか?と申し入れもあったが、いずれもW7やらその他、核弾頭込みの話だから、危なくて乗れなかったのもあり、結局、ちょっと無理めの「自走ロケット砲」ができたのである。


なお、この車両の特徴は「無人兵器」でもあった。

何故か?

万が一、有人であったら、発射の際のブラストで吹っ飛ばされる危険性が高いのと、そうでなくてもこの時代のミサイル故の信頼性の無さからあまりにも危険すぎるとなったのである。

なお、無人ではあるが、ずっと無人ではなく、所定の待機エリアまでは有人で自走、ナイキなどもそこで装着、そして面倒なリモコンも、思いきって、ステアリングは固定、アクセルのオン、オフとその中間の3段階だけ制御としたのである。

まっすぐ行き、射程距離が届く所まで来たら、止まって射つようにされたのである。

(ミサイルランチャーそのものが左右に旋回できるようにもなっていたが、現場では時間を惜しんで、ランチャーを正面で固定している物が多かった。)


これは当時の「最先端の誘導兵器」のレベルを熟知している富士学校ならではの開き直りのような単純明快なシステムある。

しかも基本的には無線で操縦になっているが、実は有線の接続口が車体後部にあり、万が一のときはここにケーブルを繋ぎ、コントロールできるようにしてあったのである。

そしてこの良く言えば簡潔明瞭、悪く言えば、貧乏臭いシステムは結果として大当たりになる。

このハーフトラックが使われた攻撃にはより高度な誘導システムを持つ高級な無人車両も使われたが、敵の電波妨害で使えなくなったのに、この「でっち上げ自走ロケット砲」は半数近くが少なくとも有線誘導で到達、その65%がロケット弾を発射できたとのことで意外な評価となったのである。


結果としてこのハーフトラック改造車両は、直接の戦果なは乏しい(公刊された資料でも明記されている)が、敵の異星人達の注意を反らしたりするには、大きな効果があったと記録されている次第で、ほとんどリサイクルした兵器を活用した「知恵と勇気」の賜物と記録されたのである。



資料映像とあわせてお楽しみください

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