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死体蹴りが必要になった社会  作者: ごんの者
2章 【女子高生は死体売り?】
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第11話「始業前のワイドショー」

 席に座ったところで、授業が始まるまで何かすることがあるわけでもない。教室を見渡し、クラスメイトの会話に耳をすます。


 俺の席の後ろ側、窓際のスペースが特に騒がしい。ちらっと見ると、制服をお洒落に着崩し、髪色も校則にかからない程度に染めている女子生徒たちが、ワイドショーのように情報を交換し合っていた。


「久遠くんって、クラス替えしてから初めて来たよね?」


「ねー。これからちゃんと学校来るのかなー?」


「いや、来ないっしょ。なんかもう働いてるんでしょ?」


「C組の二階堂 可憐ちゃんと同じエンバーマーって、仕事してるらしいよ」


 ワイドショーの主役は俺みたいだ。しかし、多少ボリュームは抑えてるものの、こっちにまで丸聞こえだ。


「二階堂さんも今日、登校してるみたいだね。男子たちが騒いでたよ」


「二階堂さんと久遠くんって、繋がりあるのかな?」


「ないっしょ。てか、エンバーマーって死体蹴りの仕事でしょ? あの学園のアイドルがそんな仕事してるイメージ湧かなくね?」


「C組の友達が二階堂ちゃんに聞いたらしいんだけど、お給料はいいんだってさ」


「給料いいならさ。久遠、結構優良物件じゃね? 幸薄そうだけど顔立ちは整ってるし」


 言ったな!そこのギャルA。テナント募集中だから、すぐに契約に来い。


「でもエンバーマーって評判悪いじゃん。親とかが良い顔しなさそう」


 ギャルB。お前の親が亡くなったとき、俺がいると便利だぞ?わざわざ葬式にエンバーマーを呼ばなくても済むからな。

 というか、なぜ俺は人の会話に、心でツッコミを入れて擬似会話をしてるんだ……。やめだ、やめだ。


「――でも、お金は欲しいじゃん。買いたい服いっぱいあんのに、金欠なんだよね」


「あたしもー。最近、売りも調子悪くて」


葉月(はづき)の見た目で儲からないなんてないっしょ。馬鹿なおっさんたちからお金巻き上げてるんでしょ?」


 話の過激さに驚いてしまう。これは、おそらく援交とかの類の話じゃないのか……?ギャルC、もとい葉月さん、可愛らしい顔をしてそんなことをしていたのか。


「でも、そういうのって怖くない? 危ない目とかに遭ってないの?」


「遭ってないよ。それに分が悪いのは向こうだしね」


「でも、気をつけなよ。最近は、駅前で死体を売ってるやばい奴もいるって聞いたし」


「えー、そんなのがいるの? 気持ち悪いなー……」


 駅前で死体を売ってるやばい奴……?


 俺は席から立ち上がって、ギャルのクラスメイトたちに話しかける。


「ごめん! 今の話、詳しく聞かせてもらえる?」


 彼女たちは驚いて、目が点になっていた。無理もない、ワイドショーで取り上げられていたご本人が、登場して来たのだから。

 しかし、驚いたのはそこではなかったみたいだ。


「久遠くんも――その、そういうことに興味があるの?」


 そういうこと……?そういうことってどういうことだ。

 それに、なんか凄く白い目で見られているような。


 始業チャイムが鳴り響いたとき、俺はやらかしてしまったことに気が付いた。


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