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死体蹴りが必要になった社会  作者: ごんの者
2章 【女子高生は死体売り?】
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第10話「時を止める異能」

 二体のレヴェナントと対峙した激動の一日。そこから一夜明け、俺は久しぶりに高校に行くために、制服に袖を通していた。

 エンバーマーになったのが、高1の夏――16歳の時だ。それ以来、高校にはあまり行けていない。

 特に最近は酷い。2年に進級してから早1ヶ月。その間、出席した日数は0。うちの高校では二年時にクラス替えがあるため、俺は自分のクラスメイトをまだ見たことすらなかった。


 部屋から出ると、制服姿の可憐が待っていた。


 俺と可憐は、エンバーマー専用の社寮に住んでいる。俺は男子寮で可憐は女子寮。だけど、出掛けるときいつも可憐は、俺の部屋の前で待っている。

 女の子を待たせるとは何事か、と思われるかもしれない。けれど、俺が女子寮に入って女の子の部屋の前で待ったりすると、女子寮の管理人から白い目で見られてしまうのだ。

 だったら別々に行けばいいんじゃないかと思い、可憐に提案したこともあった。それを聞いた可憐は、白い目どころか、ハイライトが消えた黒い目をしていた。


「おはよう、隼人くん。久しぶりの制服姿だね」


「おはよう。制服を着て、自分が高校生だったことを思い出したよ」


 俺と可憐は、同じ高校に通っている。別に二人で同じ所に通おうと決めたわけではない。そもそも俺と可憐が初めて出会った場所が、今の高校なのだ。だから、未だに可憐は制服を着ているイメージが強い。


「もう新学期から一ヶ月経ったんだよな。クラス替えして一ヶ月いないってのは、ちょっときついな……」


「べつに無理に仲良くする必要なんてないよ。毎日行くわけでもないし」


「まあそうなんだけどさ。流石にクラスメイトの顔と名前を、一人も知らないってのはなー」


「大丈夫だよ! 私は、隼人くんのクラスメイト全員の顔と名前を知ってるから」


 可憐は、俺とは別のクラスのはずだが。


「へー、凄いな。そういや、可憐はちょくちょく学校行ってたんだっけな。別のクラスの生徒とも交流があるなんて、流石は可憐だな」


 可憐は学校屈指の美少女だと評判だ。黒髪ロングの大和撫子。人当たりが良く、性格まで美人だなんて言われている。たまに陰のある表情を見せるのもそそられると、男子が言ってるのを耳にしたことがある。


「別に交流があるわけじゃないよ? 単純に隼人くんのクラスメイトを知りたかっただけ。それに学校なんて表面だけ取り繕っとけば、どうとでもなるし」


 どうとでもならない奴がここにいるぞ。いや、表面を取り繕うことさえできないからか。

 しかし、交流がないのに他クラスの生徒を知ろうとするなんて、可憐は熱心だ。表面を取り繕うというのは、そういうことの積み重ねなのかもしれない。


 そんなことを話していると、俺たちの高校が見えてきた。梵南(そよぎみなみ)高校。頭は良くも悪くもなく普通、部活動はなぜかワンダーフォーゲル部だけが強い。そんな高校だ。


 校門に入ると、2人の女子生徒が近づいてきた。


「可憐!? 久しぶりー! お仕事、休み貰えたんだね?」


「久しぶり! うん。昨日結構忙しかったから、副支部長さんがお休みくれたの!」


「そうなの? これは男子たちも騒ぎ出しちゃうねー」


「もー、やめてよー」


 なんて会話をしながら、女子生徒二人に引っ張られていく可憐。一瞬、可憐が俺の方を見たが、俺は視線を逸らす。学校にいる間は、俺なんかとは関わらない方がいい。


 可憐と別れてから、俺のクラスである2-Fの教室に向かう。

 ドアを開けて教室に入ると、時間が止まったかのように、教室内の喧騒が止む。

 時間を止める異能にでも目覚めてしまったかな……。


 そんなことを考えながら、教室に入るが、自分の席が分からない……。

 仕方ないので、入り口近くで友達と話していた――今は俺が時間を止めているので、話していない――女子生徒に話しかける。


「ごめん、俺の席って分かるかな……? 久遠 隼人っていうんだけど……」


 女子生徒は、自分が話しかけられたことにひどく驚いていたが、親切にも教えてくれた。


「――多分、あそこの席だと思うよ」


 教えてもらった席は、窓側2列目、後ろから2番目の席。

 プリントを配るときは穴があって大変だったろうな、なんて思いながら席に着く。


 いつの間にか、止めた時間は動き出していた。成る程、止められる時間にも制限があるんだな。レヴェナントと戦ってるときに使うなら、気をつけないと。


 ――いや、メンタルを削られるからこの異能を、戦闘中に使うのは控えよう……。


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