表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オールドファッション  作者: 僕と久保
86/91

第九章 Like Thunder(15)

 デカいなと、オールドは分析する。ただの駄肉ではない。殺すことに特化した、筋肉の付き方をしていた。きっとあの男にとっては筋肉こそが武器。オールドで言うところのマリアなのだろう。


「筋肉はいいぜ、筋肉は」


 裏切らねえからなと補足し、男を見る。さて、どうしたもんか。銃は先の衝撃で遠くへ跳んだ。銃を拾いに行ってもいいが、その隙に叩き潰される可能性が高い。あまり、分がいい賭けとは言えなかった。マリアを使うのも、得策とは言えない。確かに腕を刺すことくらいならできるだろう。しかし、それと引き換えに手痛い一撃を被る可能性は高い。相手はカウンター狙いかもしれない。絶対に一振りで絶命できる自信があるなら話は別だが、ない。オールドもプロだ。自分の実力と、それがもたらす結果の推測くらいできる。それができない人間が、真っ先に死ぬ。ルツボはそういう世界だ。


「となると――」


 結論をつける。腰回りの武装を外す。少しでも重くなりそうなナイフ含め、マガジンの類もすべて床へ。マリアに軽いキスを添え、降ろした。


「こっちも筋肉でやるしかねえよな」


 息を吸う。緊張感で、肺に熱が満ち満ちる。ボクシングスタイルに構え、ステップを刻む。

 相手の出方を窺いながら、オールドは刺客をつぶさに観察する。左足を前に置いていることは、利き腕は右と見ていい。あくまでボクシングのように殴るのであれば、だが。

 男が吼える。身長に見合ったストライドで、一気に詰め寄る。爆風が押し寄せるような迫力に、オールドは「ひゅう」と口笛を吹いた。

 男が右腕を薙ぐ。オールドはしゃがむ。かわし、左フックを男の右わき腹に。同時に、殺し屋は顔を顰めた。


「ンだよこれ!」


 左手を振って吠える。鉄板でも殴ったような感覚だ。あまりの痛さに、左手が痺れる。筋肉の鎧とは、このようなことを言うのかと感心した。


「お前身体ン中に鉄板仕込んでるんじゃねえだろうな!」


 ぎゅあぎゃあ喚くオールドに構うことなく、男は淡々と腕を振る。一発一発が勢いのある、必殺の攻撃だ。救いと言えば、この男に格闘技の心得がなかったことに尽きる。寧ろあれば、こうした躊躇いのない一撃を出せないのだろうか。わかりやすく直線的な攻撃を、オールドは堅実にやり過ごした。腕の振りが風を作ろうと、当たらなければ意味がない。

 とはいえ――

 殺し屋は冷や汗をたたえる。万が一当たってしまえば、今度こそおしまいだ。男はこれまでここまで粘る相手を見てこなかったのだろう。なぜ攻撃が当たらないのかと、不思議そうな表情までする始末だ。

 こっちの攻撃も、まったく通らねえ……。

 オールドは歯噛みする。どれだけ慎重に攻撃を重ねたところで、効かなければ意味がない。対格差が激しいあまり、蚊が刺すような威力しかない。

 男の右脚を、自信の左足で押しとどめる。しかし威力を殺しきることはできず、勢い余って背後へごろごろと転がり込んだ。

 人造人間かよ。誰に言うでもなく、オールドはぼやいた。

 まずい。オールドは感じ取る。こっちは精神的にも削ることを強いられている。加えて一撃が即死レベル。捕まるのは、時間の問題だ。


「さっさとケリつけるか」


 しかし、こちらの攻撃はまるで効かない。少なくとも打撃は、まるで手ごたえを実感できない。

 ならばどうするか?

 簡単だ。打撃以外で挑めばいい。


「お前さん、ネクタイの用途を知ってるか?」


 告げ、自身のネクタイを緩める。


「一つは、ちゃんとした身だしなみ用。男の価値はこれで決まる」


 二つ目は――


「拘束、並びに絞殺用さ」


 タイを解き、ヒュンヒュンと振り回す。


「行くぜゴリアテ。処刑の時間だ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ