第九章 Like Thunder(13)
身長は170センチをやや上回るくらいの体格である。それなりに筋肉もあり、引き締まった体だ。男にしては長い黒髪をポニーテールさながらにまとめあげ、『サムライ』という呼び方がしっくりくる。
銃器の類は確認できない。しかし、男の左腰には日本刀は一振りさがっていた。なんとも珍しい得物である。日本刀自体はそこまで珍しいものではない。ルツボの外であっても、持っている人間はいると聞く。マルボロ曰く「福岡という修羅が跋扈する国じゃ、一家に一本ないと安心して眠れないらしいぜ」と言われるほどの代物である。
同業者だ。
オールドは直感した。そもそも、こうした場所で一般人がいるはずない。当然といえば、当然の帰結だ。
「我が名は『クロガネ』」
男が、硬い言葉を編んだ。
「オールドファッション、貴様の名前は昔から聞いている」
ああそうかい。オールドは適当に返事をする。
「こうして貴様と刃を交えることができる日を、待ち焦がれていた。我と手合わせーー」
「ゴチャゴチャうるせえなお前」
痺れを切らしたオールドが、クロガネの言葉を遮った。
「俺は俺以外の人間がウダウダお題目並べてんのが本当に嫌いなんでね。要件から述べやがれ」
クロガネが、哀れむように目を細めた。
「興も解せぬ獣か」
「間延びと丁寧は大違いだ。お前の前戯は恐ろしいくらい退屈さ。どれだけ愛を感じた女でも、白けて股が乾いちまう」
「下品な男だ」
「よく言われるよ、それも一種の褒め言葉だがね」
クロガネが構える。右手で柄を握り、厳かに切り出した。
「抜け」
オールドが目を見開いた。
「なんだと?」
「抜けと言っている」
わずかに刃を見せ、刀が灯りを弾く。
「ルツボ最強の殺し屋オールドファッション、貴様を殺し、我がその称号を使ってやる」
「こんなところで俺が抜くのか?」
殺し屋は当惑の表情を隠さない。当たり前だと目で語るクロガネに根負けし、オールドは深く息を吐いた。
「外はそこまで好きじゃないんだがな」
呟き、ズボンのファスナーに手を伸ばした。社会の窓を開け、「オカズはどうしようか」とぶつぶつ漏らす。スマホどこにやったかなと、自分のポケットをまさぐる。
クロガネの視線が、オールドを貫いた。
「どういうつもりだ」
「どうもこうも」
オールドの声色は大真面目だ。
「熱心なリクエストにお答えして、この場でシコシコ抜いてやるのさ。ちょっとだけ時間を頂戴するぜ」
ああ。と適当に手を振る。
「ガチガチになった俺のエクスカリバーは頑丈だから、そっちは日本刀で切り掛かってくれていいから」
小馬鹿にした対応に、クロガネが青筋を立てた。
「貴様ァ!」




