第九章 Like Thunder(4)
「見覚えのない横文字があるんだが、これはなんだ?」
「僕からの、ちょっとしたオマケだよ」
人差し指を振りながら、ソルティは得意げに語る。
「ブリーチングチャージって言う、ドアや窓をプラスチック製爆弾で破砕する武器なんだけどね。ウチでも取り扱いを検討するから、是非オールドに使ってもらって、好評そうなら本格的に品ぞろえの一つに加えるつもりなんだ」
「悪いな」
「君からはいつも多く貰ってるからね。お得意様サービスの一環だと思ってくれるとありがたいよ」
納品書通りの武器があるか、オールドは確認する。M&P9にG36、いくつかのマガジンと手榴弾。オーダー通りの、過不足のない完璧な納品だ。
封筒を取り出し、報酬を渡す。
「今回はどんな仕事なんだい?」
興味本位で尋ねるソルティに、オールドは軽い調子で話し始めた。
「別荘みたいなところに未だ引きこもってるらしいから、そこに俺がブチ込んで殺しまくる。聞いた話じゃちょっとした腕利きもいるらしいから、そいつ目的で今回は殺すな」
メモを見ながら、見取り図を頭の中に複写する。
「あと、バイパーを唆して麻薬を無駄に振り撒いてたのは中華系の新参マフィアみてえだな。どうやらルツボでの身の振り方を分かってねえらしい。本土の中国から送り込まれて、資金稼ぎにあくせくしてるらしい」
「余程外の世界で強くなるためにお金が欲しかったのか、少し急いだわけなんだね」
だろうなと、オールドは首肯した。
「身の振り方なんてあるの?」
アンジェラが尋ねる。無法が渦巻くルツボに、そんなものがあるのかといった目だ。
「法はないが、モラルはある。俺たちみたいな裏稼業の人間が麻薬をどうしようと構わねえが、普通の家庭を持ったサラリーマンや主婦だっているわけだ。そうした奴らに迷惑かけることは、マナーに反する」
「じゃあパパがいたような自警団に任せたらいいんじゃないの? 普通なら」
「ダメだな」
オールドの返事は早い。
「ニコラスがいたような自警団は、飽くまで治安維持がメインだ。加えて小悪党を捕まえることが仕事の大部分で、組織に対してドンパチはできねえ。自警団の連中にだって家族はいる。そいつらに危害を及ばせないためにも、自警団は組織との交戦を最大限回避する」
「じゃあそいつらは野放しに……」
言って、気付く。
殺し屋と銃業者が、自信ありげに笑った。
「そのための俺たちだ。目には目を、歯には歯を。悪には悪を、クズにはクズだ」
カクテルを飲むソルティが、「今日の夜はもう決まってるわけだ」と話す。
勿論。オールドは笑む。
「今夜はKFCだな」
「晩御飯の話?」
純粋な瞳でオールドを見上げるアンジェラに、オールドは人差し指を振った。
「Killing Fucking Chinese(クソ中国人をぶっ殺せ)だ」




