プロローグ2 JobKiller(6)
カチン、と軽い音が転がる。
「――は?」
繰り返す。
カチン、カチン、カチン、カチン、カチン。
累計六回。黒のリボルバーは、一度も火を噴くことなく弾倉を一周した。
男は、一体何がどうなっているのか理解できずにいた。リボルバー銃はジャム――要するに弾詰まりがほぼ起きないシンプルな機構がウリの一つでもある。そのリボルバーが一度も発砲しなかったということは、行き着く結論は一つしかなかった。
「一発も、込めていなかったのか……!」
「ご名答。一瞬でもいい気になってたアンタは、この上なく滑稽だったぜ」
遊ばれた。今際の際まで来て、必死な醜態を晒すよう仕向けられたのだ。
「じゃ、死ね」
殺し屋が弾を放つ。先程までの慌て振りが全て嘘であるかのような、淡白で、冷たい一言だった。
男の眉間から、黒光りした花が咲いた。日の灯りがあればさぞかし綺麗な赤だっただろうそれは、最後の花火と言わんばかりに吹き出す。
男が地面に倒れ込む。眉間を確実に射抜いたため、即死だ。
念には念を入れて、殺し屋が数発男の身体に銃弾を撃ち込む。びくんと大きな痙攣を境に、男の身体は完全に沈黙した。
仕事の完了を確認した殺し屋は、黙ってその場を後にした。裏切りの協力をした元部下は、いつの間にか消えていた。もしかしたら自分の裏切りに対する粛清を恐れて、逃げたのかもしれない。殺し屋にとって、あの裏切り者が今後どうなろうとまるで興味がなかった。
銃をしまい、薄闇の中を歩く。
「つまんね」
今宵の騒ぎは、誰の目にも留まることなく幕を閉ざした。