プロローグ2 JobKiller(5)
荒れ狂う心臓をなだめるように、男が訪ねる。手汗がまとわりついているせいか、上手く握ろうにも滑って思うようにいかない。
「お前を雇ったのは誰だ」
ペストマスクは長い嘴を横に振った。
「生憎ウチは今、顧客サービス向上キャンペーン中でね。いつもなら冥土の土産として依頼主をお伝えしてるんだが、個人情報保護の観点で今回に限りシークレットだ。最近は何かと顧客満足を重視する時代だからな。その風潮が、殺し屋界隈にも押し寄せてんだ」
世知辛いねえ。と肩を揺らす。
ただ、沢山の恨みを買っていたことは心当たりあるだろ?
殺し屋の補足に、男は耳を貸さずに集中する。
「このゲームがどうなろうが、お前は俺を殺すつもりだろう」
「そりゃそうだ。こっちも仕事を受けたプロだから、アンタにゃ死んでもらう。ちゃんと依頼をこなしたことも含め、顧客満足度ナンバー1をウリにしたいんでね」
御国からの表彰はねえがな。
殺し屋はカカカと笑う。
「そうか」
言い終え、男は銃口を殺し屋に向けた。
「おいおいおいおい! ウッソだろお前!?」
卒倒しかねない勢いで殺し屋が声を出す。「どうしちまったんだアンタ、ついに壊れたか」
「黙れ!」
男は威圧する。
「どうせここで殺すつもりならこの銃には全弾入っているんだろう。その銃を向けたこっちに渡した向けた時点で、五分だ」
裏切った元部下は動かない。きっと寝返った際の発砲で撃ち尽くしたのだろう。迂闊に動けないのは同じらしい。
「落ち着けよ。不毛な争いで両方死ぬより、神様に祈って五割の確率で助けてもらった方が生産的なんじゃねえの? アンタがどの神様信じてるのか心底興味ねえが、その神様に対して俺が一緒にお願いだってしてやる。幸い俺は無宗教だ。クリスマスにかこつけて高い酒を呷って年末年始はグータラ三昧、無宗教のサラブレッドだぜ。何なら大出血サービスで球数を一発減らしてやってもいい。俺が撃たれて大出血することに比べりゃはるかにマシってモンだ」
「どうせ全弾入ってる銃に確率のクソもあるか」
男は息を荒げる。
「オッサン、頼むから冷静になってくれよ。俺はタイマンすこぶる苦手なんだって。ベッド上ならその限りじゃねえんだけどな。俺のマシンガンピストンが猛威を振るっちゃうんだぜ――だから銃口を俺に向けるなマジで!」
殺し屋はすっかり恐れをなしたようで、自身も銃を持っているにもかかわらず両手を挙げた。戦闘能力は群を抜いて高いが、滑稽なほどの小心者らしい。
「お前は余興のつもりだったようだが、頭の足りなさが裏目に出たな」
男は舌で唇を濡らし、人差し指に力を込める。
「死ね!」
叫ぶ。同時に引き金を絞った。