第七章 Time check
オールドとアンジェラは、街に出歩いていた。正確には、少女の服を求めて、だ。
かつて名古屋と呼ばれ、交通の要所として栄えていた場所は日本の土地でなくなってもその盛況ぶりに衰えは見せない。寧ろ変な利権関係から切り離されたせいか、愛知県の時よりも活き活きとしていた。駅の周囲には店が一層立ち並び、互いに活気を競っている。ルツボの中点だけあり人通りも多く、人の多さだけで考えれば大阪や名古屋にも引けを取らないレベルだ。
「いいかおチビ、絶対にはぐれんなよ。五分に一回、お前の名前を読んで定時点検するからな。Time checkだ」
「耳にタコができたわ」
上から何度も注意を促すオールドに、アンジェラは頬を膨らませて抵抗する。「わたしだってもう立派なレディよ。はぐれるわけないじゃない」
「盛大なフリはやめてくれ」
げんなりしながら、オールドは少女と歩く。
こうして二人で街を歩くきっかけは、実に単純な一言からだった。
『私の服がないわ』
言われてみれば全くその通りの、アンジェラの指摘だった。下着も服も、現在少女が着ている一着に限っている。思えばオールドのもとへ転がり込んでなし崩し的に匿っているが、数日経っていた。その間にシャワー等は自由に使わせていたが、流石に同じ服では心身ともに滅入るらしい。アンジェラの小さなわがままが、オールドの背中を急き立てた。
しかしオールドは一人身。加えて周りに幼児服の造形に富んだ人間がいない。適当に買ってもよかったのだが、無駄にしたくはなかった。よって少女を連れ、気に入った物を買わせる寸法だ。
「そういやインペリアルには、子供とか家族とかいたんだったな。岐阜に」
アンジェラじゃなくてあいつ連れて服買いに行けばよかったか。
一瞬考えたが、辞めた。いい歳した男が二人、少女の服選びに興じているとなればあまりに怪しい。警察はいないものの自警団的な組織は存在する。自警団に肩を叩かれても、全くもって文句が言えない状況だ。幼女を攫い、軟禁し、自分たちの好きな服を着せて犯しているのだろうと濡れ衣を被せられるのも嫌すぎる。あまりに突拍子のない発想かもしれないが、日常茶飯事に起こり得るのがルツボだ。
「それとおチビ、ちゃんと領収書は俺が回収するからな」
「だからおチビじゃないわ!」
喚くアンジェラが、ふと目を丸める。
「領収書?」
「温室育ちは領収書も知らねえのか」
そのくらい知ってるわよ。
少女は眉間に皺を寄せて怒りを示すが、迫力に乏しかった。
「私が知りたいのは、その領収書がなんでいるのかって話よ」
真っ当な疑問に、オールドは真っ当なテンションで返した。
「確定申告でいるんだよ。毎年な」
「確定申告」




