第六章 Spettatore(10)
沈黙が降りる。オールドが左腕を伸ばし、それとなくアンジェラをかばい始める。
各々の呼吸音すら手に取るように聞こえる、不気味な沈黙だ。誰一人無駄な動きをするわけでもなく、様子を伺いあっている。
二十秒。
地球の歴史四十六億年よりも長く感じた間を得て、王が左手を挙げた。
「いいのですか?」
部下の一人が尋ねる。
「あのような無礼者、ここで消しておくが吉かと」
「消せる前提で話すなモブ野郎」
部下が銃を眉間に向けた。
「言葉を遮るな、卑しい殺し屋の分際で」
「俺はモブ未満のお前の言葉を遮ったんだ。王の言葉じゃねえ。あとお前こそ王の安定してポジションの下でぬくぬくしてる卑しい身分じゃねえのか?」
「言わせておけば……ッ!」
双方が火花を散らす中、王が銃を下げるよう顎で促す。部下は数秒迷う素振りを見せたものの、おとなしく指示に従った。
「若いことと無知であることは時折罪と考えられるが、僕はそう思えなくてね」
両の手を合わせながら、王が話す。
「若さも無知も、本人が自覚している限り治すことができる。経験を積み、知識を蓄え、有意義に時計の針を回すことができれば、きっといい大人になれるだろう」
僕のようにね。
王は付け足す。
「だから君も、これからその幼さと無作法を直せばいい。今回だけは、若さに免じて許してあげるよ」
腑に落ちない表情をしていたが、アンジェラは素直に頭を下げた。
「ありがとう。寛大なのね」
「二度目はないさ。僕は仏じゃない」
さて、と王は仕切り直す。
「何が知りたかったんだい? 僕でお答えできることなら、何でも答えてあげる」
「ずいぶん気前がいいのね。嬉しいわ」
「僕は生粋の中国人だからね」
王が笑った。
「振る舞う時は、大盤振舞いする主義なのさ」
腰を上げ、ソファの最奥に体を沈める。




