第六章 Spettatore(8)
声は容姿に沿った通り、丸みのある声だ。
「今日はどんな用で、こっちに?」
言いながら、腰を掛ける。詳しい銘柄はわからないものの、かなり上等な一人用のソファだ。王の丸い体を、高級ソファが優しく抱きとめる。
話の糸口を探りながら、オールドは口を開いた。
「麻薬のことで、いくつか」
「麻薬かい」
王は話す。
「昔の中国は麻薬関係で随分と酷い目に遭ったからね。僕も教科書でしか知らないけど、それは酷かったらしい」
で、
王が続ける。
「麻薬関係の何が知りたいんだい?」
問いかけが終わり、発言の権利が移る。
舌で唇を濡らし、オールドは話し始めた。
「つい最近、ルツボで出回っている麻薬を外へ売ろうとしている動きが強まっているといった情報を手にした。それを巡って、ニコラスという男が死んだこともアンタは知っていると思うが、その件で聞きたい」
一拍置いて、オールドは質問を投げた。
「ニコラスを殺した男は、外の世界に麻薬を流そうとしているって判断で間違いないな?」
「僕は、事実しか語らない」
王が強く言い切った。
「僕が興味を示すものは、圧倒的な事実。そこに誰の思惑がどう絡んでも、別にどうだっていい」
王は部下から出された茶を啜る。
「でも一応それらしい答えを言っておくと、ニコラスを殺した男――“バイパー”は間違いなく麻薬の流通速度を上げている。先日君が殺した、ヤクを使って強姦する奴がいただろう? そいつも、バイパーから買った麻薬を使っていたよ」
ほお、とオールドは漏らす。
「シャブを使ってしゃぶらせていたくらいは知ってたが、世間は狭いんだな」
「どんな目的で流通を急いでいるのかは興味ないけど、速度の上昇ぶりは目覚ましいよ。他にも――」
そこで突如、アンジェラが右手を天高く掲げた。
オールドが、全力で目を剥く。
王も、微笑みは崩さぬままだったが心なしか硬直しているように思えなくもなかった。




