第五章 Interlude(2)
もう一口。ビールを飲んで話す。
「こんなに規模のでかい話は久しぶりだ。どのくらいの武器がいる? どのくらいのクズが死ぬ? BGMは? プランは? 敵の強さは? 考えただけで射精そうだぜこりゃ! 生きててよかった! 信じてねえけど神に感謝だ!」
フィーバー状態のオールドが一人舞い上がる。
面々が、顔を見合わせて肩を竦める。
「君のそれは病気だ。加えて治す医者もいない」
ソルティの指摘に、男は嗤う。
「病気で結構不治で万歳。最近は本当にチンケな仕事しかなかったからな、こうなるのも仕方ねえぜ」
人を殺しておいてチンケもクソもあるか。
常識的な発言が通用しないルツボにおいては、言わないことがマナーだ。一種美徳とされている。
「そうと決まりゃ色々準備がいるな」
オールドはソルティに手を伸ばす。「多分武器が要る。たんまり頼むぜ」
マルボロにも手を伸ばす。
「また色んな業者に頼むだろうから、その時はイイ仲介を頼むぜ兄弟」
最後に、アンジェラの手を強く握った。ぶんぶんと手を振るせいか、アンジェラの肩関節から玩具のように外れてしまうのではないかと危惧するほど、オールドは強く振っている。
「お前さんのおかげだ。こんなクソ面倒でバカ程楽しくなるような面倒事、しこたま酒呷ってシャブ極めながらのセックスでもなかなか味わえないぜ」
「語彙力が最低の極致だな」
マルボロが渋い顔をする。インペリアルも気の毒そうな顔をしていた。
上機嫌のオールドはアンジェラの頭に手を載せ、乱暴に撫でる。元よりウェーブがかっているせいか、一層髪の波うちが大きくなっていた。
「お礼に今度何か買ってやる。何がいい? ウサギさんのぬいぐるみか?」
「子ども扱いしないで!」
頬を膨らませるアンジェラを見て、カカカと笑う。
「さて、こっから随分忙しくなるぞ」
「ねえ、あたしは?」
気合を入れたオールドに、カンパリが声をかける。
オールドが振り向き、カンパリと目が合う。
「よし、じゃあみんな解散! 帰れ帰れ!」
「だからあたしは?」
オールドの肩を掴む。先程まで有頂天だったオールドの顔が、明らかに曇った。
「お前にお礼、要る?」
「別にいらないけど、あたしだけ除け者にされたみたいな扱いはプライドが許さないわ」
「別にお前だけじゃない。インペリアルにも礼は言ってねえぞ」
「俺は要らん」
断固拒否するインペリアルを横目に、カンパリはなおも食いつく。
「貴方はいつも嫌そうにしてるけど、あたしが運んでくる騒動を心の底ではいつも愉しんでいるじゃない。いつも笑顔で、身体は正直よ」
「やめろ、おチビの教育に悪い言葉を使うなよ」
「君がそれを言うのか……」
オールドの発言に、ソルティが困惑する。