第四章 Cocktail Party(15)
「でも鮮度の問題上、生きているうちに切り落とすのがベストだっていうこともネットには書いてあったわ。私はオールドに大金を払い込んで一文無し」
わざとらしく、「嗚呼」と悲劇のヒロインじみた声で話す。
「でもこんなところに新鮮な人肉があるわ。人肉は高いと聞くし、なんと恵まれているのかしら」
「ま、待て!」
男が大慌てで声を出す。どこにそんな力があったのかは知る由もないが、相当慌てているのだろう。手足の拘束も忘れ、じたばたとしている。
その男に構うことなく、アンジェラはオールドに手を伸ばす。
「私には追々お金が必要だもの。背に腹は代えられないわね。オールド、電話を貸して頂戴」
「待てって!」
襲撃者が声を大きくさせる。そこで初めて気づいたように、アンジェラが首を傾けた。
「なにかしら。まさか情報を出し惜しみしていたとでも言うの?」
「一つだけ、一つだけある!」
男はもう、なりふり構っていられないような状態であった。それなりに痛めつけられていたはずなのに必死に声を出し、自分は活かすに足る存在であることを証明する。
「このチビを狙った理由は一つだ。上のやつに頼まれたんだ!」
「上のやつだと?」
オールドが訝しむ。
「そのチビが持つネックレスを奪うことと、万が一に備えてチビも殺すことが上からの指示なんだよ! それ以外は何も知らねえ信じてくれ!」
喚く男を無視し、オールドはアンジェラに詰め寄る。
「そのネックレス、そんなに高いのか?」
おどけながら、アンジェラが首から提げるネックレスを掴む。数秒ほどいじった矢先、カキンと軽い音がして割れる。否、ふたが外れた。
オールドの手に、小型サイズのUSBメモリが乗っている。外見だけ見れば、それなりに綺麗なネックレスのチャームと言えなくもなかった。
一同が沈黙する。
「Oh……」
何かまたロクでもないことが押し寄せる気配を察知して、オールドは黙って頭を抱える。
その様を見たカンパリが、無慈悲に言ってみせた。
「やっぱり、オールドが素直になる日はロクなことが起きないわね」