第四章 Cocktail Party(10)
左へ跳ねる。
一瞬前までオールドいた地点を、鉛玉が抉った。がりがりと床が削れ、跳弾がカウンターに突き刺さる。転がった先にある二人用のテーブルを倒し、即席のバリケードを作った。如何に名うての殺し屋といえど所詮人間、銃弾が当たれば痛いし、最悪死ぬ。
管楽器のテンションが落ち着き、ピアノソロが駆け込む。控えめなドラムや管楽器の手を牽き、全身で思い切り踊る女の情景が浮かんだ。夕焼けを背景にし、汗が散ることも厭わず、炎のように踊る。腰をくねらせ、珠のような汗が光る。
最近てんでご無沙汰だから、これくらい情熱的に踊ってみたいもんだ。
オールドは内心切望する。
銃撃が一瞬落ち着いた瞬間を見計らい、手を伸ばす。椅子の背もたれを掴み、ハンマー投げでもするかのように全力で投げた。ナイフのように軽量ではないため、力技だ。
顔に椅子投げを受けた男が、膝から倒れる。首の向きが常軌を逸していていたような気がしないでもないが、オールドは考えないことにした。死んでいればよし、生きていたら後で殺す。
「これ以上店の設備を壊すなよ頼むから!」
「すまんな」
オールドは平気な顔で嘘をついた。
「音楽のせいでなんにも聞こえねえよ!」
テーブルを持ち上げる。そのまま、機動隊の盾のように持って駆け出した。迫る銃弾を受け止め、ものともしない。
フットボール選手も絶賛級のタックルが一人を強烈に吹き飛ばす。木製の壁に体をめり込ませ、動かなくなった。
意識を保持して五体満足の刺客は、あと三人。
三人の真ん中で腕を広げ顎を上げ、オールドは挑戦的な笑みを作った。
「さ、続きを踊ろうぜ」
一人がオールドの顔に銃口を向ける。
「銃は素人童貞か?」
突き出された銃口を右拳の甲で受け流す。即座に手首を返し、銃を持っている相手の右手首を掴んだ。ぐいと引き寄せ、オールドは身体を半身にさせる。二秒前までオールドに向いていた銃口が、あっという間に仲間を睨む。
「撃つな!」
一人が叫ぶ。
しかし、遅い。反射的に引き金を引いた後だった。安物の銃が、火を噴く。オールドの背後にいた男が倒れ、あまりの痛みにのた打ち回ることすらできずにいた。




