22話 金色に輝く聖女の槍、魔導機竜
冥王ブラド・ズィクル・ストラーム・ドラグは苛立っていた。
「ええい!何故未だにあの忌々しき黒き神殿を落とせていないのだ!」
配下のアンデットが答える。
「恐れながら申し上げます。
恐らく奴らがもつ魔導武具が最大の障害かと思われます。」
「そんな道具の方が不死の軍勢より強いと言うのか!」
「い、いえ!その様な事は無いかと。」
「なら貴様はさっさと黒き神殿を落とせる策でも考えろ!」
「は、はい!」
「(ちっ、だから今のアンデットは弱いのだ。
しかし、このままでは千日手か・・・)」
「ドラゴンゾンビを動かす!
奴らに絶望を与えて行け!」
「グルガァァァァァァァァ!!」
絶望が黒き神殿に向かって進軍する。
「ククク。我輩にとってはこんなドラゴンゾンビなどとるに足らないが貴様らにとっては強敵だろう。」
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北側の城壁
北側の城壁にはリリナがいた。
「【金色に輝く聖女の槍】!」
リリナは聖女の槍の力の真の能力を開放する。
金色に輝く聖女の槍、その能力は自分や味方の強化能力である。
自分と味方の身体能力を強化して、自分以外の味方の魔力を増幅させる。
つまり、金色に輝く聖女の槍は仲間が多ければ多いほど強くなる魔導武具である。
この魔導武具の所有者は、黒き神殿の守護者所属。
聖女リリナである。
金色に輝く聖女の槍の強化を受けたセルム教軍はアンデットを押していた。
聖女リリナはその特殊な魔導武具を持っているがゆえに軍勢対軍勢の戦いでは、他の黒き神殿の守護者より一歩上である。
「皆さん頑張って下さい!」
聖女リリナが兵士達を励ます。
「いける!いけるぞ!我らには聖女リリナ様が付いているぞ!」
「「「「「うぉぉぉぉぉ!!!」」」」」
聖女リリナに率いられた軍勢は他の黒き神殿の守護者の率いる軍勢と比べて異様に士気が高い。
しかし、そこに絶望が現れる。
「グルガァァァァァァァァ!!」
「ど、ドラゴンゾンビだと!?」
「伝説のアンデットか!?」
兵士達は動揺する。
スウゥゥゥゥ!
ドラゴンゾンビは大きく息を吸い込む。
「ど、竜の息吹だー!!」
「か、隠れろ!!」
ドラゴンゾンビの口から竜の息吹が放とうとする。
竜の息吹と言っても普通のドラゴンが使う炎の息吹ではない、ドラゴンゾンビが使う竜の息吹は呪いの息吹である。
【呪う竜の息吹】
呪う竜の息吹は轟音をたてながら逃げ遅れた兵士達を巻き込みながら城壁の上を通る。
「―――――!」「――――――!!」「――――――!?」
呪う竜の息吹の轟音に兵士達の声が書き消される。
呪う竜の息吹が無くなったころには、息吹を受けて死んだ兵士が転がっていた。
「「「「「!!?」」」」」
だが、死んだと思われた兵士達が立ち上がるが、その姿は不死者だった。
「「「「ァァァァァ!」」」」「「「ァァァ!」」」
呪う竜の息吹は、この攻撃で死んだ者を不死者にする追加効果があった。
不幸はまだ続く、リリナ達の上に絶望の鉤爪が迫る。
リリナ達は死を覚悟した。
だが、絶望をも振り払う、存在がこの戦場に来ていた。
【光学式魔力
大規模殲滅
拡散砲】
拡散された、光の魔力が、大規模に広がり、不死者を殲滅する。
その光景は心を奪われるような美しさだった。
されど、その光は当たった者に滅びをもたらした。
リリナ達の上にいた絶望は、美しく、無慈悲な、滅びの光の前に滅び去った。
リリナ達の遥か上空に、無慈悲なる戦場に輝く滅びの光【魔導機竜】、その上には黒き魔神セルムがいた。