13話 黒き魔神とホムンクルス
目覚める。
黒き魔神の長き眠りは終わる。
魔神の直感が彼女の魂が現世にきたことを告げる。
ピキピキ
セルムを覆う黒き水晶が割れていく。
バキッ
黒き水晶の中からセルムが出てくる。
この世界の何処かにリリアナの魂がある筈と信じて。
目覚めたセルムが最初に見たものは赤ん坊だった。
「ん?」
近く行って見てみると、手紙があった。
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捕虜になった聖女の血と英雄の片腕から出来たこの生け贄で怒りをお静めて下さい。
―――――――――――――――by信者一同
生け贄だと・・・
俺は生け贄を望んだ事など一度もない。
その根性叩き直してやろうか。
俺はそう思い赤ん坊を抱え魔導武具【黒銀の鎧】等を装備して神殿最奥から出た。
いくつなの聖堂を越えて神父の様な男に出会った。
「おi「おや、神官戦士ですか?」
「ちっ違「神父以上の御方しかはここには来ない筈ですが?」
「だからo「他の人に見つかるまえ戻りましょう。」
神父は俺を連れて神殿の出口の方に連れてった。
神父がセルムの事を魔神だと分からなかったのには理由がある。
神父以上の信者は、セルムの顔と【黒き鎧】を量産型ドゥーグ達などからの映像などで知っているが、セルムが着けていたのは、【黒き鎧】ではなく魔導武具【黒銀の鎧】で顔を隠していた為である。
そして俺は神殿前にいた。
神父としては親切心でやった事何だろうが、俺からしたら家から追い出された気分だ。
「ぱぱー」
赤ん坊は俺の事を父親だと勘違いしているらしい。
「俺はパパじゃない。」
「ぱぱーぱぱー。」
「だから違う。」
「ぱーぱ、ぱーぱ。」
「・・・もうパパでいい。」
俺は赤ん坊が変える気配が無いことを察して諦めた。
「ぱ・・・ぱ・・・。」Zzz
寝たらしい。
なんでこいつは初対面の相手に抱えられて、安心した顔で眠っているのだろう。
しかしよくみるとホムンクルスだしなんとなく彼女の感じがするが・・・勘違いだろう。
しかし名前が無いのは、不便だな。
そうだな・・・名前はリリーにしよう。
俺は生活費を稼ぐ為、冒険者ギルドに行った。
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冒険者ギルド入り口
「ここが冒険者ギルドか・・・
勇者だったころには行った事なかったからな。
・・・入ってみるか。」
冒険者ギルドの中は賑やかだったが俺が入った瞬間全員こっちに視線を向けた。
それもその筈黒い鎧を着て片腕の奴が赤ん坊を抱えて入って来たのだから。
リリーの目が潤んできた。
「うぇーん、ぱぱー!」
「大丈夫だ。リリー皆見ているだけだ。」
「ほんとう?」
「ああ大丈夫だ。」
セルムがリリーを落ちつかせていると。
冒険者の三人組がこっちに来た。
「雑魚が、冒険者ギルドで子守りしてんじゃねえよ!」
「イラつくんだよ!」
「金払って貰わねえと気がすまねえな。」
リリーが泣きだす。
「うぇーん、ぱぱーこわいよー。」
「テメエら表にでろ。」
「雑魚1人で俺達に勝てると思ってんのか!」
「いいぜ行ってやるよ負けるのはお前だからな!」
冒険者ギルド前
「こいよお前らリリーを泣かせた罪俺が裁いてやる。」
「はっ雑魚が調子乗ってんじゃねえ!」
三人組の1人が殴りかかってくる。
俺は避けてから足払いする。
「うげ!」
転んだ冒険者をそのまま蹴りとばす。
ガッ
「1人倒したからって調子乗ってじゃねえー!」
二人同時に殴りかかる。
「さっきの見て何も学ばなかったのか?」
二人共足払いをして蹴りとばす。
「くそ覚えてやがれ。」
捨てゼリフを言って三人組はいなくなった。
「気を取り直して冒険者ギルドにもう一度入りるか。」
「はいるー。」
冒険者ギルド
「何か依頼はあるか?」
俺はギルドの受付嬢に聞いた。
「依頼を受けるには、冒険者登録が必要になります。
この用紙に必要事項を記入して下さい。」
用紙を渡される。
「名前を書いていただければ冒険者登録出来ます。」
よし、・・・セルムじゃ不味いか、ラグアダム帝国から取ってラグアにしておくか。
「ラグア様ですね。冒険者登録完了しました。
冒険者ランクはFとなっております。
依頼に関しては依頼板を見てください。
討伐依頼は、依頼を受けずとも討伐対象の体の特定の部位を持ってくれば依頼達成です。」
俺は依頼板を見た。
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ゴブリン討伐
変異種、紅いワイルドボアー討伐
グレムリン討伐
ラプテラス討伐
私のネコを探して
鉱石運び
木材運び
等々
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先ずはゴブリン討伐からだな。
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エントレントの森
早速ゴブリン退治といくか。
「ギイギイ。」
「ギャギャ。」
2体か少ないがまあいい。
先手必勝だ。
油断しているゴブリンを蹴りとばす。
「ギイ!?」
「ギャァギャァ!」
片方のゴブリンがこちらにきずいて襲いかかってくる。
「ふん。」
蹴り落とす。
「ギャ!?」
瞬殺だった。
勇者として数十年強い魔族と戦ったセルムに取ってゴブリンは敵ですらなかった。
「ブォォォォ!!」
「こいつは紅いワイルドボアーか!」
林の中から紅いワイルドボアーが現れる。
「変異種は通常種より強かったな。
魔導武具を使うか。
光栄に思えワイルドボアー魔剣を見せてやる。」
セルムの後ろから空間が黒く歪み魔剣が出てくる。
「これが魔導武具を呼び出す魔導武具【黒き神殿の門】。
そしてこの魔剣は魔導武具【魔剣グラウアリオール】。」
「さあ【魔剣グラウアリオール】の餌食にって・・・。」
ここで俺は重大な事にきずいた。
左手はなく、右手はリリーを抱えている、つまり【魔剣グラウアリオール】を持つ手がない。
「どうしよう。」
リリーを落とすのは論外、敵は目の前だからゆっくり降ろしているとその隙に攻撃されてリリーが傷付く可能性がある。
・・・!
「このまま射出。」
俺はそのまま射出する事にした。
「ブル!?」
剣が飛んで来ないと思っていた、紅いワイルドボアーに魔剣が刺さる。
「ブルァァァ!!」ザス
魔剣は脳天に刺さり紅いワイルドボアーはそのまま絶命した。
「これぞ発想の勝利だ。」
「しょうりだー!」
(´・ω・`)狂帝「リリーを生け贄として差し出したのは、狂信者達の独断と偏見。」