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沙也とドラゴン~2

そうして、沙也は森の滝の傍へ来ていた。もちろん、亜空間経由の瞬間転移ですよ。


最近、魔力も使いこなせるようになってきて、ちょっとだけ自信が付き始めていたのだ。


「誰も・・・いないよね?」


沙也は、周到に周囲を確認し、人がいないことを確かめた。この森は、人の町より何千キロも離れた所にある。絶対に人がいないジャングルの秘境のさらに奥にあるような土地なのだ。


周りに人がいないことを確認して、沙也は、いそいそと服を脱いだ。


温泉のシャワー!!


アクアに至っては、水をみた瞬間、滝つぼに飛び込み、バシャバシャと水しぶきを上げて、嬉しそうにしていた。やっぱり、故郷の森は居心地がよいらしい。


滝の下に立ち、頭から滝の水(と言うかお湯)を浴びた。体に付着しているものが浄化されて、黒い霧となって離れていった。


( 浄化の力って凄いんだ!)


う~気持ちいい!


温泉の滝の水は、透き通っていて、とても綺麗だったし、辺りを見渡せば、陽だまりの中で、木々の緑がキラキラと光を反射していた。空は抜けるように青くて、澄んだ水(お湯)と空気と、ドラゴンしかいない。


これって、すっごい贅沢よね、と思いながら、沙也はアクアと一緒に、ウキウキと水浴びを楽しんでいた。


その頃、森の中で、王子は従者から文句を言われていた。


「だ~か~ら、王子様、どうしてこんな辺境の森の奥地にまで来なきゃならないんですか?」


「いちいち文句を言うな!」


隣国のカルタス王子は、魔の森と言われている一角を探検していた。瘴気の問題は、ビクトリアヌス魔王領周辺の国々まで広がりつつあり、彼の国でも、憂慮されていた。


瘴気を放つ森の一つが、最近、浄化され、美しい元の姿に戻ったと言う噂を聞いた国王が、王子に調査を命じたのだ。


王子は、騎士数名を連れて、森の中を探索していた。


「確かに、瘴気は発生していませんね。驚いたことに普通の森に戻ってますね。」


優秀な騎士の一人が口を開いた。ビクトリアヌス魔王領と異なり、この国の人間は、普通の人間だった。魔法など一切使えない。


「ああ・・・本当だ。普通の森に戻っている。この原因さえ突き止めれば、他の森にも応用してつかえるはずだ。」


「おい!川の水が澄んでいるぞ。」


「川の上流に何か、瘴気を浄化するものがあるのかもしれない。」


そうやって、川の上流に向かって歩いてきたのだ。


「おい、ちょっと待て!」


王子は、滝の傍まできて、何かの気配を感じた。


「誰かが滝にいる!」


騎士たちと王子は、そうっと、気配を消して、滝に近づいた。その木々の隙間から覗くと、滝で水浴びをしている裸の女性がいた。


肌は抜けるように白く、プラチナブロンドの髪は水にぬれていた。滝の水で反射されて美しく幻想的な様子を呈し、その傍では、ブルードラゴンの子供が楽しそうに水遊びをしていた。


「エルフだろうか?」


王子は我が目を疑った。こんな森の中で、ブルードラゴンと共に水浴びをしている美しい女性は、エルフ以外の何物でもないはずだ、と思った。


「綺麗だ・・・」


王子は我を忘れて呟いた。


娘は比類のないほど美しく、眼を背けることが出来なかった。


(もしかしたら、女神だろうか? 噂に聞くクロノス神の再来か?)


ふと見ると、滝つぼの傍に脱ぎ捨てられた衣類があった。彼女が女神ではなく、普通の娘であることに、やっと気がついた。綺麗すぎて見惚れていたせいだ。


あの衣服は、きっと彼女のものだろう。


王子は、彼女に逃げられたくなかった。そっと足音を消して、衣類に手を伸ばした。


(よし!これで彼女は逃げられない。)


彼女のドレスを手にしたまま、王子は声をかけた。


「おい、君!」


沙也は、びくっとして振り返った。そこには、青年が自分のドレスを手にして立っていた。


(私!裸!!)


目を丸くして、沙也は咄嗟に、頭から滝つぼに飛び込んだ。一度水に潜り、頭から水面に出した。これで胸から下は見えないはずだが、両手を胸の前で交差させて、体を隠した。


水から上がってきた彼女の顔を見て、王子はさらに息を飲んで凍り付いた。美しかった。


プラチナブロンドで濡れた髪に、アイスブルーの瞳、すっと通った鼻梁で、こちらを見つめていた。娘から女へと移り変わる時期。花で言えば、固い蕾から、美しく花開く頃の娘とも女ともつかない華やかさがあった。


魔王ユリウスと幾度となく情事を重ねたせいで、唇はふっくらとして、薄く赤く色づき、薔薇の花ような香り立つような色気も纏っていた。


エルフか、ニンフ・・・ どちらにしても、美しい。王子は、魂が奪われるかと思った。 王子は息をのんで、娘を見つめた。


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