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お隣は魔王様  作者: 中村まり


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スィーツめぐり

がちゃり、とマンションのドアを開けて、沙也は、自宅へと帰ってきた。


「うふふ・・ 今日は、丸太屋のシュークリーム、ゲットぉ!」


ニコニコしながら、小さなシュークリームの入った箱をテーブルの上においた。


ふんふんと、鼻歌混じりにキッチンの棚をごそごそと探す。お気に入りの紅茶を探すためだ。


このシュークリームは、普通のシュークリームと思うなかれ! 数々のグルメ雑誌の中で、金賞、ダントツ一位を誇る美味しいシュークリームなのだ。 一日の仕事が終わって、会社の帰りに、恵比寿の有名なパティシエさんのお店に寄ってみたのだ。


これを手にするまでに、店先で並んだ一時間は、その価値に値する!


そうして、ささやかながらも居心地のよいワンルームの小さなマンションに戻ってきた。我が城だ!


私は、高校生の時に、両親を亡くして、今は、大学を卒業して、一人暮らしのフツーのOLさんである(キリっ!)。キリっとした顔がいるか、と言うと、いるのだ。


なぜなら、今の私は、なんとワンルームと言うゴージャス・セレブ(自称)のお部屋の住人だからである。しかし、キッチンは、3口のガスコンロ。お風呂トイレ別、と言うゴージャスな待遇なのだ。 キッチンが、電気コンロ一口とか、お風呂とトイレが一緒とか、そういう暮らしとは、大学生活を卒業と同時に、お別れした。



・・・そこ、庶民言うな・・・


ふ、ふんだ。庶民と言いたければ言え。とにかく、私にとっては、このマンションが我が領地であり、我が城なのだ。


そして、このゴージャスセレブ(自称)の沙也姫(自称)は、「ワンルーム城(自称)」で、これから、絶品のスィーツをいただくのさ。


・・・(自称)が多いような気がするが、そこはあえて気にしない・・・


本音を言えば、 社会人一年目の身分で、これはちょっと贅沢かな、とは思ったんだけど、自分には、何しろ、お家以外での生息地がないからなー。ヒッキーには、自宅環境は大切なのだよ。仕事で会社に行く以外は、ほとんどすべて引きこもっている。後は・・・ネット小説ばかり読んでいるかな。ふ、暗いと言いたければ言え。ビバ!根暗なのだ。 私のお給料は、すべてスィーツと家賃に消えていくだけ、と言っても過言ではないが。


社会人一年目、仕事もまだ慣れないけど、一応は、なんとかなっている。会社に友達もできた。彼氏はまだいない。と言うか、出来たことない・・・(涙 


好きな人・・・うん、いるけど、片思いかな。向うは、こちらを人として認識すらしていないと思う。だって、壁の影から眺めているだけだもん。


・・・そこ、寂しいとか言うな。 


そうして、いそいそとお気に入りの紅茶をポットにいれ、お湯を少し注ぎ、茶葉を蒸らす。こうやって淹れたお茶は絶品なのだ。私は、イングリッシュ・ブレックファストティーが好き。味にコクと深みがあって、香りも素敵。


そうやって、自分で淹れた絶品なお茶と一緒に、頑張ってゲットした「丸太屋のシュークリーム」を口いっぱいにほおばる。


「う、う、う・・・おいひぃ~」


・・・あまりに美味しすぎて、言葉にならない。


ああ、幸せ。幸せ。 なんて、至福の時なのだ。 


シュークリームって、カスタードクリーム オンリーとか、生クリームオンリーとかあるけど、やっぱり、カスタードクリームと生クリームのハイブリッド型が一番おいしいと思う。

丸太屋のシュークリームは、本物のバニラビーンズを使っている。バターもきっと、純正バターだろう。


カスタードのコクのあるトローリ感と、生クリームのふんわりリッチな味わいに、サクサクとしたバニラがフンワリと香るシュー生地っ。これだ!これ。私が心から求めていた味はっ!


ああ。美味しいなあ。ああ、幸せ。


これを作ったパティシエさんは、天才だ。あまりの美味しさに、パティシエさんの背後に、後光だ、後光が射しているのが見える! 神様!ここに、天才がっ!天才がいるよっ!


そうやって、シュークリームの美味しさに、ひとり鼻息を荒げて悶絶していたのだが、こんな風に、つつがなく平和で、ありきたりの日々を満喫している普通のOLの私に、まさかそんな衝撃的な展開が待ち受けていたとは、まったく思ってはいなかったのだ。


それは、とあることをきっかけに始まったのである。


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