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7/12

買い物、夕餉の仕度、子供達。

登場人物多いです。

そして、ちょっと生意気な女の子が出てきます。

次の日、今日は休日だ。


カルチャーショック。

休日、貰えるんだ・・・。驚いたポイントはそこである。

いやいや、休日は貰えたのですが、世の中には休日出勤というものがございましてね云々。

ちなみにカルチャーショックとは英訳でCulture shock、異文化に見たり触れたりした際、心理的にショックを受けたり戸惑うことである。

休日出勤しないなんて私の中では異文化ですよ、退屈ですよ、心理的にありえないですよ私が。


なんでこんな社畜に成り下がった、私。

今日買う物を考えながら、出かけるために服を着替える。

あれ、なんか心が落ち着くぞ・・・?ちょっと、ショッピングするのにわくわくしてるんじゃない?私今、普通の女性なんじゃない?

休日というものにリラックスしているんじゃない!?

クローゼットの中にはふりふりと可愛らしい私服が並んでいる、さぞや可愛らしい服を選んでいるだろうと思い、姿見を見てみると。


スーツですな。


おい、誰だ普通の女性なんじゃないかとか言った奴。

普通の女性は出かけるのにスーツとか着ない、しかもパンツスーツ。悲しくなるでしょうが。やめろ。

なんでこんな社畜に成り下がった、私。(2回目)

あっ、でもなんか、パンツスーツって本当に落ち着く・・・。


着替えよう。

びっしりと決まったスーツを汚さないように脱いでいく。これ以上着てたら駄目な気がしてきたんだ。

とにかく着替えろと私の中にいる灯子が訴えてるぜ・・・。

そして決まったのは、クローゼットの中にある服で最も地味な服だった。

おばさんにはこれが限界よ、というかもっと地味なやつがいいです。


さて、今日はいろいろと買いに行きたいと思います。

あのですね、これから暮らすにはちょっと、ちょっと派手すぎる物が多いんですね。

一人暮らしには贅沢すぎる2LDKのマンション。なによりも、灯子の母親が決めた物件で広いのです。

そのため、ベットには天蓋なんて物が取り付けられておりまして。


いらないよ!!!!!!!

誰に見られるってんだ、邪魔くさいにも程がある。

そりゃあ最初は面白可笑しくて使ってたけどね、何日も経つと飽きてくるよね。しかし母上に頂いたものなので捨てるわけにもいかず。

物置に、しまおう。

あれ・・・でも物置ってすでになにか入れていたような・・・。


あっ。


善人しゃんアルバムだ・・・。

説明しよう!善人しゃんアルバムとは、灯子が福永さんの小学1年生から大学の卒業間際まで撮ってあるアルバムである!(許可無し多)

許可有りから盗撮まで、沢山の写真がございます!

なにが善人しゃんだぶん殴るぞ灯子。


しかし、福永さんの幼少期は可愛かったなぁ。

一応保管して置こう、保存状態はプロが見ても凄いと言うだろうレベルなのだから持っておく価値はあるだろう。


べ、別に将来売れるだなんて思ってないし。


_______________


さて、やってまいりました、主婦に大人気のスーパーでございます。

家に必要な家具などは午前中に選んで購入しました、後日トラックがせっせと運んでくださるかと思います。


特売の声、レジを打つ音、おば様方のあらやだ、スーパーは相も変わらず賑わっていた。

そんな度々聞こえてくる会話の中で、今日の献立を決めようとする私。

ほうほう、今日は息子さんの誕生日なんですね声が大きいですわよ。

あらあら、旦那さんが野菜食べないんですか?声が大きいですわよ。

出たな!ですわよ星人!

おほほ、今日の献立は秋刀魚の塩焼きですわよ!

こ、小鉢はなににするんだ!俺ん家は浅漬けだぜ、羨ましいだろ!

私の家はホウレン草のゴマ和えですわよ!

な、なにぃ!?鉄分の多く含まれる健康料理だとぉ!?

さらに納豆も追加ですのよぉほほほほ!

くっ、さすがですのよ星人!強敵だ!!!


「あ!この前のお姉さん!」


その元気な声に、意識が現実に戻ってくる。いかん、頭の中で茶番をやってしまった。

納豆のパックをカゴに入れてから声をかけてきた男の子、この前卵を譲った子供達の1人に視線を向ける。

カゴを置き、目線を合わせて口を開く。


「こんにちは、お兄さんに卵は届けられたかな?」

「うん!優一お兄ちゃん驚いてたよ!」


花が咲くように笑う彼、可愛い。

よかったねー、と頭を撫でると男の子は嬉しそうに笑った。その手にはツナの缶詰。


「あっ、悠次お兄ちゃんに届けなきゃ!」


悠次お兄ちゃんとは、一緒に来た兄弟だろう。

焦った様子で走っていく男の子。やばい、あれは


「うッ!」


あぁ・・・。

転んでしまった男の子、止めればよかったと後悔先に立たず。

すぐさま立ち上がり、駆け付けて男の子の顔を見てみると、くしゃくしゃに歪んでいたが泣いてはいなかった。

抱き上げて背中をぽんぽんと優しく叩く。


「よく我慢したね、えらい、えらい」

「ぅ、うぇ・・・ッ」


ちらりと肩に押しつけている顔を見てみると、鼻水が加わっていた。


「どこも痛くないかな?大丈夫?」

「だ、い・・・じょぶ・・・」

「本当に?」

「ぅ、ん・・・ッ、手はすごし、いだい、けど・・・だいじょぶぅ・・・」


そう言われ、手のひらを見てみると少し赤くなっていた。打ち付けたのだろう。

しかし手が真っ先に出てよかった、頭から転ぶだなんて冗談じゃない。

膝も少し赤くなってるだけ。


「うぇぇぇッ・・・!」

「おーしおし、痛かったねー」

「いだぐないぃ!」

「うん、そうだね。よーしよし」


男の子を宥めながらもお兄さんを捜索。

鼻水は後で拭いてあげよう、鞄の中にティッシュがあったはずだから、この男の子を下ろしてから取り出すことにする。

すると1人の中学生くらいの女の子がこちらを指して、大声を上げた。


「悠次ー!いたよ!」


どうやら男の子のお姉ちゃんみたいだ。男の子は顔を上げ、笑顔を見せる。

もう泣きはしないかな。


「うわぁ!?この間の!?」

「私は怪物か」

「す、すんません。この前はありがとうございました!」


出てきた悠次くんだろう子、彼はこの間の戦場でおば様達に潰されかけていた子だな。

思い出して少し笑ってしまう。


「ほら、降りてこい裕司!」

「やだ」

「やだじゃねぇよ!お姉さん困ってるだろ!」


ぷくっとふくれ上がる小さな頬、この子は裕司くんというらしい。

なるほど、ゆういち・ゆうじ・ゆうし、1・2・4か。

ならばさっきの女の子は三女かな?


「お姉さんからもなんか言ってやってくれよ!」

「そうだね・・・裕司くん、お顔が汚れてるから拭こう?格好悪いよ~?」

「!降りる、拭いてっ」

「はいはい」


膝を折り曲げてゆっくりと裕司くんを降ろす。


「はい、は一回って優一お兄ちゃん言ってた!」

「ふふっ、はい」


鞄からティッシュを取り出して裕司くんの鼻にあてる。

はい、ずびー。

裕司くんの顔を綺麗にしてから、私の肩に付いているだろう鼻水も拭く。結構付いていた。


「悪い、裕司が汚しちまって・・・その服高いんだろ?」

「気にしないで、友人に貰ったお古だから」


それに、洗えば落ちる。

気にしてしまっているのだろう、悠次くんの頭をふわりと撫でた。安心したような笑みを浮かべる悠次くん。

うん、やっぱり子供は可愛いね。


「・・・普通の人だね」


突然口を開いた、後ろでこちらを見ていた女の子。


「知らない人が裕司抱えてたから、ショタコンかと思ったー」

「おい優海!口悪いぞ!」

「なにー?思ったことそのまま言っただけだけど」


つんっとそっぽを向く女の子、優海ちゃんと言うらしい。3だね。

栗色の長い髪、悠次くんとは少し違う茶色かかった瞳。美少女です。私の周りには綺麗な子達が沢山います。


「あーあ、やっぱ卵取るような人は違うよねー。庶民臭い」

「優海!!」


悠次くんが大声を上げて、怒る。

驚いた、さっきまでは呆れたように裕司くんを叱っていた悠次くんが、本気で怒っている。

優海ちゃんはそのまま知らん振りをしてどこかへ行ってしまった。


「ごめん、妹が、迷惑かけて、迷惑、かけっぱなしで・・・ッ」

「・・・ごめん、なさい」


悠次くんと裕司くんが、頭を下げる。

ちょっと、私がいじめてるみたいじゃあないか。


「顔上げて、裕司くん身長止まるよ」

「止まんないよ!」

「悠次くん、顔上げないと嫌いになっちゃうよ」

「えッ」


勢いよく上げられた頭。

よし、これで周りからの痛い目は無くなるだろう。唖然とする悠次くん。


「優海のこと、嫌いに、なったか・・・?」

「・・・どうだろうね」


あんな正面から喧嘩を売られて、カチンとこない人は居ないのではないか。

でも所詮は子供、子供の反抗期だとでも思えばどうとでも受け止められるだろう。照れ隠し然り、勢い然り。可愛いものだ。


「優海ちゃんに伝えておいて」

「・・・なんて」

「一般人臭くても、子供の笑顔は見られるんだから。って」

「!」


卵1パックだけれど、受け取った時の悠次くん達の笑顔を私は、長い間忘れないだろう。

私の、唯一の戦利品なのだから。


2人の頭を撫でて、カゴを置いてきた場所へと駆け足で戻る。

そのまま置いといてしまった、邪魔になっているだろうに。申し訳ない。

元々いたコーナーへ辿り着くとそこには、1人のおば様がいた。

誰だろうか、なにやら厚化粧な人だ。


「あら、やっと戻ってきたわね」

「はぁ・・・」

「貴女の勇姿を見て感動したわ!人は見かけによらないものねぇ」


まったく話しが掴めない。

会話の内容からいうに、勇姿、というものを見たという。そんな勇者みたいなことはしていなかったと思うけど・・・。


「ほら、子供、面倒臭がらないで保護者さん探してたんでしょ?」

「・・・それが勇姿だと?」

「えぇ」

「んなこと当たり前です、勇姿なんて大袈裟な」


カゴを見張っておいてくださり、ありがとうございました。

そう言って頭を下げてから、レジに向かう。

今日は一段と疲れたな・・・慣れない買い物などをしたからだろうか。早く寝て、明日は早く起きよう。


さぁて、今日は豪華な夕食ですわよ!

くそう!ですわよ星人め!

ほうれん草は新鮮で美味しそうですわよぉっほっほっほ!!

分かったぞ!お前は社畜だからホウレンソウを選んだんだな!!


あっ


_______________


午後8時27分。

俺、伊藤優一は自宅を目指して歩いていた。その足取りは如何せん重い。

今日は宮本さんがいなくて忙しかったな、彼女がいたら色々と仕事を任せられるんだが・・・。

資料のまとめや接客、お得意先のお客様への電話。やることは沢山ある。

今度はなにを覚えて貰おうか、慣れてきたらレジの精算でもしてもらおうかな、あの女性はすぐに覚えてしまうだろう。

鞄の中身でタバスコが2つ、顔を出す。

お守り代わりに見ているとなぜだか、革靴の重さが一気に消えた気がして仕方がない。


宮本灯子、我が会社の期待の星である彼女は変わった人である。

自分から雑務をやると言ったり、自分の名前を間違えたり、レインコートを着てきたり、裏表の無い褒め言葉だって言ってくる。


“美形だなと”


その一言が頭の中をぐるぐると巡回しては、長年固いと言われてきた頭を熱く溶かしていった。

貴女の方が美人ですよ、ならば貴女の隣に居てもよろしいでしょうか。

いつも言ってきた言葉なのに、その時はなぜか、喉に詰まった。

大きく、綺麗な黒曜石の瞳。


付き合っている男性が、いるのだろう。

丁重な動きでレインコートを脱がせてくれた、あの細い腕。その手は滑らかな動きをしていて、慣れているのだと一目で分かった。

そりゃそうか、あんな魅力的な女性に、恋人が居ないわけがない。


恋人が居ないわけ、ないんだ。


家の前に着くと騒ぎ声が聞こえる、また悠次と優海が喧嘩しているのだろうな。苦笑いしながらも玄関の扉を開けた。

この後、最愛の妹を怒ることになるとは知らずに。

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