第3話 「商人、はじめました。」
必要な装備を買ったり、行商人を雇ってみたり。今回はお買い物回になっています。
シンジ達は市場にやってきた。
ルカンドの市場はかなりの大きさだ。ルカンドの街は背後に緑の丘陵地帯を擁し、砂漠のほとりの街道のすぐ脇に大きな市場を持ち、丘陵地帯で盛んな牧羊により毛織物が多く産出される土地柄である。
当然、毛織物目当ての行商も多く訪れるため、馬車などの移動設備も豊富な品揃えがある。
馬車などは動物に牽かせる場合が多いが、丘陵地にその飼育場があるためこれもまた豊富な種類がいる。
ちなみに、ゲームのほうのアラベスクではいろんな動物をプレイヤーの好みで設定できた。この世界の中ではそのデータがあちこちにあふれ返っているらしく、珍妙な家畜に出会うことも多い。
カタツムリ型の動物が砂漠で荷馬車を牽いている姿を見たときは驚いたものだ。干からびそうで実は乾燥に強いとか。なんなんだろうね。
そのほかにも市場には大小さまざまな露店が並ぶ。扱う商品も様々。ここで生産されるだけでなくあちこちからも持ち込まれるからだ。
「盛況ですね。わたしは食材を中心に見て回ってきます。ご予算はいかがしましょうシンジ様。」
「ありがとう、ルミ。でも相場不明なところが多すぎて予算をどうすればいいのか・・・」
「シンジ。旅の携帯食なら4人くらいのキャラバンが質素な生活をして1日に消費するおよその価格が銅貨で10枚ほどだそうだ。それを目安に渡したらどうだ。 隣の町までは1週間はかかると思う。」
価値の低い貨幣は枚数の割に価値が低い困ったちゃんである。現実世界のように紙幣があるわけではないので、手形か貨幣しかやり取りの手段がない。
昔やった別のゲームでやたら重量に細かい財宝=経験値のゲームがあったが、財宝として銅貨120万枚が出たときは困った。
重量的に許された持ち帰り可能枚数が1,000枚しかなかったから。経験値の為の報酬であり、渡すとバランスが崩れるというゲーム的な話もあり、持てるだけ持つとあとは捨てていったのだった。ほかにも事例は事欠かないだろう。
ところでこの世界の貨幣は最高貨幣まで含めてかなり手持ちに保持しているが、この場で使えるのは銀貨を控えめに、普通に使うのは銅貨と石貨くらいだろう。
銅貨は9,999枚ある。ゲーム的なカンスト数字であったのでこの枚数だが、銅貨以外の全貨幣を同じようにカンストして持っている点を考えれば膨大な金額である。
「二週間程度として考えたら銅貨140枚だけど、ルミの買い物もあるだろう。銅貨300枚渡しちゃうからルミに必要な雑貨も好きに買ってきてね」
「えっ。あ、はいわかりました」
「ルミ。自分のために買う雑貨類は生活用の服を中心に選びなさい。安いこともあるけど、絶対必要な品だから。冒険装備は集合してからまた買うから大丈夫。 シンジもそのつもりで居なさいね」
「承知しました、ミカエラ様」
「じゃあ、ルミ。 僕たちは仲間を探してくるよ。夕方に宿で落ち合おう」
「お気をつけて、シンジ様」
ルミと別れ、ミカエラとふたり、人を探して歩く。仲間になってくれそうな行商人だ。
「売っているものと売り方でその人となりを見分けるのよ。手早くそこそこの価値のものを売りさばける子が優秀な子。高すぎるものを並べていたり、量が多すぎる安いものを並べている子は不慣れと思ったほうがいいわ」
だてに280年も年を重ねていないということか。というかその前に分析・情報収集に優れるAIだったか。
「あ、お兄さん。ウチの商品を買わん? エルフでしょ? この銀細工だったら精霊の邪魔をせえへんからかっこよく飾れるで。値段もお手ごろや。じゃらじゃら貨幣持ち歩くよりはコンパクトにアクセサリに変えておいたほうが持ち運びも楽やで」
「この子目ざといわ。さっきルミに少額貨幣ばかり何百枚も渡したのを見ていたんでしょうね。言っていることは正しい。まあシンジは不自由しないだろうけど、一般の人ならそういう認識よ。あとはこの子が仲間を求めているかどうかね」
小声でミカエラが目利きの結果を教えてくれる。
「あっちのおっちゃんじゃだめなのかい。優しそうだし、売りものも言われたとおりのもの、すばやく売りさばいてしまいそうな勢いだよ」
見れば、ミカエラが言った条件にぴったりな商売をしている”おっちゃん”が居た。
「同行するんでしょ? おじさんは却下。かわいい子じゃないとお姉さん認めませんよ。」
ミカエラの条件などいたって簡単。単にミカエラがおっさん嫌いなだけだった。そのあたりはシンジも嫌なものを強要するほど金銭に困っているわけではない。ましてや仲間になるなら気が合うほうがいいだろう。シンジはミカエラの言うとおり女の子に声を掛けてみることにした。
「きみ、商売上手だね。名前は?」
「ウチ? ウチはルチア。行商人や。そんでこの銀飾りだけど銅貨50枚から200枚の価値のものまで取り揃えてる。でも売約済みもあるからいまお勧めできるんはこの銅貨50枚の腕輪と100枚のネックレスやね。それぞれ3個ずつあるで」
「それが売れたら全部売り切れなのかい?」
「せやで。売り切れたらここで特産を買い込んで・・・次の街に行くんや」
「よし決めた。全部買い取ろう。君も含めて。」
「おおきに・・・って は!?」
銅貨950枚を手渡すシンジ。代金の550枚にプラスして払った400枚はルチアを雇う代金のつもりだ。
「いや、行商人の仲間を探してて。君さえよければ同行してもらいたいなってね。その400枚は支度金代わりのつもりなんだけど」
「こんなナンパのされ方はじめてや・・・ええで。ウチも仲間を探しとったところや。羽振りのええ人が仲間になるなら、願ったりかなったりやで」
「あとでドラゴンの枕亭にきてね。あたしたちはそこに泊まってるから」
「了解やで。ほかの代金回収したらそこへ行くわ。ほなまたあとで」
ルチアと別れる。やってみようと思っていた商売の戦力も揃った。あとは旅装備の買い物を済ませないと。
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「まぁ、まずは足元の装備からね。武器は後回しにしても攻撃力に心配はないと思うわ。既に武器を持っているあたしとシンジがいれば戦力的には充分でしょう」
話しながら歩き、動物屋に到着。荷車を引く動物はほんとうに種類が多い。
まずはこの”ぞー”。気が抜ける「ぞー」という鳴き声からその名がついた。かなり大型種で力強い。鼻が長く耳が大きい。姿形はぶっちゃけあの動物である。身体の大きさに見合って食料の消費もすさまじいが運搬能力の高さも一級品である。
そして可愛さなら”カーゴハウンド”。小型種だがおとなしく、狼をもう少し大きくした姿。
人に良く慣れ、荷車を引いたり、その背に荷物を乗せて付き従ってくれる。
イロモノな動物の代表格は”扉カタツムリ”だろうか。殻に閉じこもれないカタツムリで、殻は単なる背負子、飾りになってしまっている。
大人になると殻に扉ができ、その空洞に荷物を入れることができるようになる。
身体は短めの毛で覆われ、さらさらとした感触。胴の下は小さな足がびっしり。これをチョコチョコと動かして前進したり後退したり、横移動したりする。
なにげに最高速度30kmも出るあたりなにか謎の機構が備わっていそうである。
「無難にするならカーゴハウンドね。走りトカゲや仁王立ちトカゲが居たらそれでも良かったんだけど。カーゴピッグもなかなかね。数は人数分必要かしら。えさも必要だし、動物用品を運ぶために1頭追加してもいいわ。」
動物を売る場所に馬車も一緒に売られていた。結局購入したのは次のような内容だ。
カーゴハウンド4匹+扉カタツムリ2匹+2頭立て馬車2台+大型大八車(2頭引き)1台。
「動物が1匹10万シリング。馬車が1台20万シリング。大八車は10万シリング。しめて110万シリングだよ。」
日に焼けたガタイの良いおっさんが聞き分けの良さそうな子たちを見繕いながら計算してくれる。
「ええと。銀貨11枚ね。はい」
「毎度! おまけでエサと動物用の水樽を大八車に積んでおくよ。3週間分くらいになるはずだ」
久しぶりの大型商売に気をよくしたのかもしれない。だいぶおまけをしてもらったようだ。
エサは1匹の1日分が10シリング。今後飼っていく上でも費用的にたいしたことはなさそうだ。
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動物の購入が終わると、宿に立ち寄って動物を預ける。そこで代金回収が終わったルチアと丁度会うことができた。
雑貨の買出しが終わって宿で待っていたルミも連れ出して装備の購入だ。冒険者の買い物としては一番醍醐味のある買い物だろう。
まずは武器・防具屋から行くことにした。
「いらっしゃい。 そこそこの装備なら揃っているよ。 今は特殊効果の装備はおいてないがな」
今、パーティの武器装備状況はシンジのコレクション、ミカエラのワンド、そしてルチアのダガーだけだ。
ひとあたり店内を見渡してみて、店主の言うとおり特別な装備がないため、シンジのコレクションの中からレベルが中級以下ののものを武器屋で手直ししてもらう方針になった。
「おやじさん。手持ちの装備の手直しはお願いできるかい?」
「かまわないぞ。手数料は研ぎなおしや修理と同じくらいでいい。あまりに大掛かりなときは都度相談になる」
「ありがとう。じゃ、早速手持ちの装備から見繕っていこうか」
シンジがアイテムボックスからリストを取り出す。蒐集家らしく、武器ランク毎にきっちりリストにまとめられている。
「あたしは・・・このロングボウとグランドスタッフを貰うわ。防具は自前があるから大丈夫。前衛はルミとルチアがいるから遠距離を中心に装備を固めるようにするわ。近接はスタッフでぶん殴ろうかな」
「ふむ。前衛のほうが良さそう、ということなら、ウチはチェインメイル、鉄のハチガネ、鉄の盾、カトラスがええなぁ。防御を固める方針でいくわ。」
「わたしは動きやすい装備、硬革鎧と、風のターバン、ロングソードで良いですか? わたしは避けと攻撃力を重視する方針でいきますね」
それぞれ、最後にブーツを見繕い、選んだ防具に関してはサイズの微調整をお願いした。武器についてはとぎ直しをしてもらう。
「全部で銅貨350枚だよ。矢は消耗品だから別口で買うか、自分で作ってくれ。」
「了解。 それじゃ、直しをお願いした装備の仕上がりはいつになりますか?」
「明日には完成してるよ。夕方に来てもらえばいい」
「ありがとう。じゃあ、明日また来るよ」
ジンジが代金を支払い、引換証を受け取りった後店を出た。ちなみに予定装備状況は次のような感じである。
・シンジ 魔法戦士・スキルマスター
種族:ハーフエルフ(カモフラージュ、実種族はデウス・エクス・マキナ(転生体:電脳神))
LV:150(カモフラージュ、実レベル1500)
頭 :決意のバンダナ(ラストクエスト終了記念品)
両手:増幅の杖+9(廃人時代に過剰精錬済み)
胴 :オートヒール魔道師のローブ(カード効果「オートヒール」付与済み)
足 :ジャンプブーツ(コマンドワードで10m跳躍が可能)
アクセサリ①:オートプロテクションリング(自動的に防御10の魔法をパーティに掛ける)
アクセサリ②:魔力回復の指輪(歩くたびに魔力が回復する)
・ミカエラ 魔法戦士
種族:ハイエルフ
LV:200(カモフラージュ、実レベル650)
頭 :決意のバンダナ(ラストクエスト終了記念品)
両手:長弓/スタッフ(持ち替え)
胴 :エルフ王のローブ(見た目は普通のエルブンローブ、歩くたびに魔力回復の効果)
足 :エルブンブーツ(隠密5の効果を持つ隠密行動用)
アクセサリ①:女王の涙(エルフ専用装備、魔法の威力調整を操れる)
アクセサリ②:魔王の瞳(魔力を蓄積できる)
・ルチア 商人・軽戦士
種族:人間
LV:150
頭 :ターバン・鉄のハチガネ
右手:カトラス
左手:鉄の盾
胴 :チェインメイル
足 :ブーツ
アクセサリ①:商業許可のネックレス
アクセサリ②:なし
・ルミ 奴隷・剣士
種族:銀狼人
LV:150
頭 :ターバン
両手:ロングソード
胴 :硬革鎧
足 :ブーツ
アクセサリ①:奴隷証ネックレス
アクセサリ②:なし
ルチアとルミの装備は一般品ばかり。シンジとしてはこれからレベルが上がり、慣れてくればもっと武器を融通してもいいと思っている。
「装備の準備ありがとうございます、シンジ様。」
「ウチにもありがとうな。あとは日用品と家畜の物資を買えばええね」
「なにを揃えようか」
「せやな。まず大事なのは水と食料の確保。大八車があるからそこに積み込めば問題ないやろ。衣類の類はさっきルミが買うてきた分で問題ないからだいじょうぶやで。あとは調理道具とか洗濯用の洗剤とか、水浴び用のたらい。旅先のお風呂を沸かすためのマジックアイテムなんかも安価に売ってるんや。使用回数が10回で温度もさほど上がらんけどな。」
「いろいろあるんだね」
「せや、今回はシンジはんにぎょうさん売り物をこうてもろたから、そのへんはウチが準備しましょ。ちなみに商人には【動物の世話】っていうスキルがあって、連れている動物のエサを3匹まで、うまいことその辺の道草から融通できるんや。これで大八車に積まれとったエサは2倍持つようになるんや。」
「なるほど・・・」
旅のために準備する食料は場所によりけりだが、乾物がほとんどである。干し芋、ジャーキー、魚の干物。小麦粉を積む場合もある。野営が多いため、火であぶればすぐに食べられるものと、スープにしやすいものが好まれる傾向にある。
調理道具もそれに準じたものが多い。狩りをする場合もあるので各種包丁、それから串、スープ用の鍋。
油やスパイス類はシンジが山盛り持っているから今回は購入しなかった。このへんはゲームの中でドロップアイテムとして用意されていたのでアイテムボックスに山ほどしまってあったりする。
風呂桶の大きさでひと悶着あったものの、無事に買い物も終わり、宿から引っ張ってきた馬車に荷物を積み込む。
旅の準備はこれで万全だろう。
・・・
・・・・・・
旅の仕度が終わった一行は、ルチアの行商用買出しに付き合うことにする。
行商は、その土地の特産品をほかの土地へ運び、高く売ってその差益で儲ける職業である。
ルチアはルカンドで毛皮などを仕入れることにしたようだ。パーティには馬車と大八車があり、持ち運びに苦労することはなさそうである。
「おじちゃん、イノーブのなめし毛皮とジャイアントシープの毛玉をみつくろってや? 予算は5千シリングや」
「ふむ。このところジャイアントシープの毛玉の入りが少ないからイノーブのなめし毛皮のほうが多くなるがかまわないか?」
「ええで。でも、おまけはあんじょう頼むで!」
「うむ。じゃあイノーブのなめし毛皮を8山、それからジャイアントシープの毛玉を1ダース準備しよう。おまけとしてこいつをつける。砂トカゲの皮を一山だ。」
イノーブは猪型の魔物で、分厚い皮と密度の高い毛が生えていることが特徴である。夜は冷え込む砂漠において地面に敷く敷物や防寒用の装備に使われる材料だ。ジャイアントシープは草地に住む巨大な羊である。あまり群れを作らず、住処を変えながら暮らしている。4ヶ月に一度くらいの頻度で毛の一部が生え変わるが、そのタイミングで砂浴びをした場所に毛玉が沢山残る。それをかき集めたものが取引されている。砂トカゲは体長1m程度の砂に潜って暮らしているトカゲで、皮鎧の材料になったりする。
「イノーブが一山500シリング、ジャイアントシープが1,000シリングというところやろうね。砂トカゲは400シリングくらいやろ?」
だいたいの価格を聞き出すルチア。商人のおいちゃんが頷いているところを見るとほぼあたっているのだろう。
「シンジ、終わったで。これが仕入れ値。持って行く先によってレートが変わるけど、原産地に対して大体1~2割くらいの儲けが出るんやで。多いときは8割くらい利益が出るときもあるけどな。まぁ、欲張らないように慎重にいこうか」
大八車に積み込まれる皮。と毛玉。上から覆いの布をかければ積み込み完了だ。
「そうか。こうやって仕入れて行商にいくんだね。」
「せやで。特産物の種類によっては隣町で売らんで遠くまで運んで売ったほうがええのんもある。その辺の情報収集をするのも商人の醍醐味やな。」
「さっきは予算枠内で特産品をお願いしてたけど、普通はああじゃない感じ?」
「せやな。こっちの特産の相場が分からんからああいうようにお願いしたんや。行商人は町を巡るもんやけど、同じ町に戻ってくることも普通にあるさかい、品物そのものの相場のほかにも、ああやって知り合いを増やすという意味合いもあるんやで。」
「商人はネットワークが重要、だもんね・・・」
「わかっとるやないか、シンジ。 せや、シンジも買い込んでみる? 仕入れはウチが代行したるさかい。」
「え? いいの? ちょっと憧れていたんだよね。 蚤の市とか自力じゃ無理だったし、こっちの世界でもギルドに所属できないから諦め掛けてたんだ」
「それじゃ、毛皮以外の商品がええから・・・毛織物にしたらどうや?」
ルカンドの特産品のもうひとつ「毛織物」は価格がかなり張る品物だ。手の込んだ毛織物は絨毯が有名で、床に敷かずに壁に掛けて鑑賞する用途に使うほどだそうだ。
もちろん、暖かさを追求した下地専用の毛織物もある。
「どれを買おうか迷うな・・・ここは商品価値を優先して壁掛け用のものを・・・」
「シンジ。申し訳ないけど、ウチの販売力・コネだとそれを売りさばくのは厳しいねん。下地のほうにしてもらえると助かるわ」
「それじゃしょうがない・・・下地のほうにしよう。おっちゃん、下地用の暖かい毛織物を見せてもらえる?」
「おお、見てくれ。こっちがゲル(テント)の床用の毛織物。ジャイアントシープの毛玉でできている。そしてこっちはすこしだけ高級な柄物の敷物だ」
「この二つは他でも取り扱ったことがあるで。床毛織物が1メルト四方で銅貨200枚、柄物は同じ1メルト四方で銅貨1,000枚くらいやったな」
ルチアの相場を聞き、市場のおっちゃんが笑いながら話す。
「その市場はあまり流通量がないか、生産地じゃない相場だな。うちの扱いなら床織物が1メルト四方で銅貨100枚、柄物は1メルト四方で銅貨600枚で卸せる。1本の最大サイズは2メルト×4メルトまでの大きさになるから買うときは気をつけてくれ」
織物はくるくると巻かれて売られている。必要に応じて切り売りもするらしいが、ほとんどはそのままのサイズで売り買いされるらしい。
シンジは2×4メルトの床織物を10本と、1×1の柄物を10本仕入れることにして、ルチアに告げる。
「ようさん買うんやね、シンジ。ならおっちゃん、纏め買いするからあんじょう負けてや? このお店がお安いことと良い品質のものを売ってるって宣伝もして来るさかい!」
スキル【値切り交渉】が発動している。同じ品物を10以上一気に購入する時に有効なスキルだ。
「ふむ。床織物は8メルト四方10枚で銅貨8,000枚のところを6,400枚にしましょう。柄物は1メルト四方10枚で銅貨6,000枚のところを4,800枚にまけましょう。そのかわりうちの店名を宣伝してください。”ティガー織物”という名前です」
「おおきに。ティガー織物店、ね。売り先でしっかり宣伝したる! それじゃシンジ、支払いはよろしく。」
シンジがアイテムボックスから銀貨を11枚、銅貨を200枚取り出して店主へ渡す。受け取った毛織物は馬車へ積み込んでいく。うきうきとシンジが作業をしている横からミカエラが話しかけてきた。
「そろそろ出発しようか? さっきからカタツムリが「出発したいっ」って引っ張ってるのよ。」
「わかったよ、ミカエラ。 さあ、次の街シュバリクへ出発だ」
4人に増えたパーティ。キャラバンにはまだ人数が足りないが、実力は立派にキャラバンクラス。さて、彼らの道行きに待っているのは何であろうか。
いよいよ出発です。




