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第31話 「やってきた大海嘯 その3」

いつもご覧頂きありがとうございます。

緒戦の戦端が開きます。



地底人から人々への最初の攻撃は例の魔法兵器による擬似ファイアボールの一斉射であった。


「奴ら撃ってきやがった! 盾を持った者は周りをかばえ、急げ! 魔法部隊はすぐにプロテクションだ!」

「了解! プロテクション!」


降り注ぐ低威力のファイアボール。



前面に展開していた遊撃部隊はプロテクション等の魔法を駆使してなんとか第一撃目を耐えていた。シンジ達の側面部隊はリフレクションシールドが火球そのものを迎撃し、大事に到っていない。

相手から一方的な敵対行動に出てきた以上、抵抗しなければこちらが殲滅される。

穏便に済ませる方策はもはや残されてはいなかった。



・・・

・・・・・・



「始まっちゃった・・・」

「冒険者連中に結構な被害が出るかと思ったらそれほどでもなくて良かったけど・・・後方に控えている部隊が未知数でちょっと怖いな。ちょっと偵察に出て、相手の規模を確認してきたほうが良さそうだね」

「偵察・・・ですか。戦闘中に偵察は厳しいのでは・・・」


ルミの言うことも尤もではある。既に戦端は開かれ、矢と魔法の応酬が始まっており、あのなかを容易に移動することは至難に近いだろう。それでもシンジには余裕があった。


「大丈夫。この隠密外套(エルヴンマント)と飛行の指輪があれば上空をそーっと移動できる。あとリフレクションシールドの緊急発動も併用すればほぼ安全だから」

「たまにシンジはんが何なのかようわからんくなるときがあるな。主に異常なレベルの装備とかで」

「今は出し惜しみのときではないから、大盤振る舞いってことさ。実際のところ、ルミもルチアもアーシェラもあのへんの魔法兵よりは数段強くなってるんだけど、自分でわかってる?」

「さっきから戦闘を見てても遅いニャ、と思ってはいたニャ。そうか、自分が強くなってたニャ・・・」


あまり気にせず訓練をしていた3人だったが、いままでの戦闘でパーティを組んでいるシンジから分けられた経験値量がはんぱなさすぎたのが原因であった。竜神との戦闘で曲がりなりにも勝利を収めていたこともある。レベル数値をよく確認すれば全員200に到達していた。


「えらいレベルが上がったような気がしてて、あまり気にせえへんように訓練しとったけど、やっぱりシンジはんが犯人やったか。ウチらは強なって嬉しいけど、今後、ズルはほどほどにせんとな。自分の実力を把握し切れへんなるわ」

「そのへんは今後は気をつけるよ。さ、それはそれとして・・・ちょっと偵察してくるから!」


シンジはそう言ってフードを深く羽織ると”飛行の指輪”の力を解放して飛立った。



・・・

・・・・・・



シンジが魔法の射程外の高度を維持しながら敵陣地内へ飛行していくと、かなりの数の兵数がいることがわかる。


「かなり・・・数万は優に超える兵力が居るな。これだけの兵数がいるのに兵站があまり見えないのが謎だ・・・食糧事情とかはどう解決しているんだろう。」


ゲームではお馴染みの三国志では食料が戦争を継続させるための重要な要素だった。”武士は食わねど高楊枝”などという言葉は貧乏暮らしが板につき、戦争などなくなった時代の武士が貧乏を誤魔化すために言った言葉でしかない。不思議に思ったシンジが【サーチ】をかけるとなんとなくその原因がわかった。【サーチ】に表示された兵士達のステータスに「無生物」というステータス表示があったからだ。すなわちそれは、アンデッドかゴーレムであることを示す。


「独特の腐臭もない以上、あれはゴーレムか・・・それもフレッシュゴーレムってことはキョンシーと同じ原理ね・・・どおりで兵站が極端に少ないわけだ」


ゴーレムならば食糧不足とは無縁。さらには簡易な命令しか受け付けないが、一度受けた命令は取り消されるまで実行し続けるという厄介な性質も持つ。恐怖にあおられて退散するといった現象は期待できない手合いということだ。


「これはかなり酷い消耗戦にしかなりようがないな・・・しかも敵陣はまだまだ奥があるようだし。ひとまずは本陣に戻ってフレッシュゴーレムについて報告を上げよう」


シンジは一旦冒険協会(ギルド)が設置した防衛本部に赴くと、そこにいた知り合いの職員に見てきたことを報告する。同じような報告が他の冒険者達の報告も含めて上層部にあがるだろう。

報告した後、シンジは3箇所に分かれて防衛線を展開しているオリビアとミカエラの二人にも念話で情報を入れる。


<<シンジだけど。さっき偵察を敢行してきたら、敵軍の主力はフレッシュゴーレムだったよ>>

<<えっ。あれ全部そうなの?>>

<<指揮をしている者の姿もちらちら見えますが・・・?>>


<<ああ、当然指揮する人間はゴーレムじゃないし、部隊によってはゴーレムが少ない部隊があるかもしれないね>>

<<まぁ、倒しても気兼ねの要らないヤツが沢山居る、ということは判ったわ>>

<<それから、シンジさま。アムフルスから見ていますと、アムフルスを目指して大部隊がやってくる様子はあまりないようですわ。恐らくですが、”大きな都市”を目指して行軍しているように見えます>>

<<周辺には興味なし・・・か? まぁ、突然の食糧事情とかで周辺に侵攻するかもわからないから、一応気をつけておいてくれるかい、オリビア。あるいはゴーレムが制御不能になると、ところ構わず暴れるから、そのとばっちりが行くかもしれないから>>

<<判りました。>>

<<ミカエラも、大本命側にいるんだから良く気をつけてね。場合によっては禁呪も解禁しないと対処できない可能性が高いから、魔力は出来るだけ温存して、切り札として取って置いてね>>

<<りょーかい。魔力回復薬も貰ったし、充分気をつけるけど、ある程度は大胆に行動させてもらうわ>>

<<まぁ、しかたない・・・か。本当にやばかったら皆で転移陣から脱出するように!>>

<<おっけー!>>


念話を終わらせ、ルミ達の下に戻る。戦況としては、中央部が徐々に押されつつあるという状況だ。周辺部を受け持つシンジ達が所属する隊はなんとか相手側を撃退し、陣形を保っている。


「シンジ様。敵が思ったより中央突破に戦力を割いているようです。先ほど伝令がありましたが、側面部隊は中央に向かって側面攻撃を仕掛けて、突破力を削る指示が出ています」

「今踏ん張るならそれしかなさそうだ。敵の後方部隊がまだまだ居ることを考えるとちょっと怖いけど、正面を突破させるわけには行かないからね」


シンジは中央に向かう伝令に、偵察してきた結果を伝えると、大魔法の詠唱準備に取り掛かった。選択した大魔法は【大雷雨(サンダーレイン)】。効果範囲が非常に広く、抵抗属性が少ないことが特徴の大魔法だ。魔方陣が浮かぶと、帯状にシンジを取り囲む詠唱陣が励起し輝きを放ち始めた。


「・・・大いなる(いかずち)の雨よ襲え!!【サンダーレイン】!!!」


次の瞬間、励起した詠唱陣が空へと一瞬で飛び去り、たちまち敵陣直上に暗雲が立ち込めると、苛烈な雷の雨が降り注いだ。そして数秒遅れて轟く落雷の音の雨。


「「「「「うあぁぁぁああぁあぁああ!!!!」」」」」


防衛側もそんな大魔法を目にするのははじめてである。突然の大音声に驚いた。しかし、すぐに態勢を立て直すと、敵にぶつかっていく。完全に浮き足立っている今がチャンスと見たからだ。


「よ、よし!! 今が攻め時! 槍隊前へ!」

「はっ!!」


一方、大魔法を打ち込んだシンジは苦虫を噛んだような顔になっていた。


「ちっ・・・中央部は強力なプロテクションが張られているな・・・中枢部にはほとんどダメージがないぞ・・・」

「あの苛烈な雷にも耐えたのですか!?」

「魔法の効果は超強力な雷雲を召喚するまでだから、後は通常の雷と同じなんだ。まぁ、通常の雷がそもそも超破壊力を持っているから普通は殲滅に近い効果を得られるんだけど・・・」


そのとき、似たような魔法を選んだのだろう、クファン方面から落雷の音が聞こえてきた。


「ミカエラも【サンダーレイン】を使ったか。効果は似たようなものだろうし決定打に欠けるな・・・」


<<シンジ様。私が竜撃を放ちましょう。方向は北天の方向に致します。街もなく、砂漠が広がるだけですから。射線上には敵陣の中央がかすります。良い牽制になると思います>>


オリビアの竜撃ならあるいは効果が期待できるかもしれない。そもそも竜撃に耐え切れるプロテクションシールドを見たことがなかったからだ。


<<申し訳ないが頼む。アムフルスからはすこしはなれてやってくれると助かる。射撃位置がそこだと思われたくないから>>

<<承知しております。既にアムフルスから東に数百メルテの位置まで移動しておりますから>>

<<じゃあ、頼んだよ、オリビア>>


念話が切れると同時に元の身体に戻ったオリビアがその巨大な口腔から竜撃を放つ。オリビアはゴールデンドラゴンであるため、その竜撃(ブレス)は太く直線状に伸びるビームタイプである。



・・・

・・・・・・


【???軍 中枢】


敵軍の魔法使いから大魔法が降り注いできた。【サンダーレイン】だろう。瞬間魔法で、効果範囲が広く、後への影響が残りにくい。広範囲魔法としての選択は正しいが、こちらも対策は充分に練ってある。雷属性を乗せたプロテクションで保護すれば、その威力はプロテクションの結界膜に沿って地面に逃げ、威力を大幅に減じることが可能なのだ。


「見よ、蛮族の浅知恵などものの数でもないのだ。ゴーレムどもは多少損耗したがまだまだ余力はある。皆の者、歩を進めるが良い!!」


さらに士気を高め、攻勢に転じようとした大神官が軍配を振り上げたその瞬間。光の洪水がその場のすべてを消滅させていた。


「なにが・・・・」


本陣奥深くまでその光の帯は貫かれていた。



・・・

・・・・・・



オリビアの竜撃は極太のビームとなり敵陣深く刺さっていった。魔力で生成されたそれは1億度という超高温をもって空気をプラズマ化しながら進み、触れるものは蒸発、傍らを通り過ぎるだけでも炭化が免れないくらいの高温を撒き散らした。プロテクションなど薄い紙以下。あっというまに崩壊させ、さらに奥へと突き進む。最終的にはアムフルス方面からクファンに押し寄せた敵軍の中衛部隊を全て蒸発させる格好でその一撃は終息した。


<<オリビア、ありがとう。疲れただろうからアムフルスへ戻って休んで。ミカエラは悪いけど、アムフルスへ飛んで、オリビアのサポートについてほしい。クファンはもう大丈夫だろうから>>

<<もちろんよ。オリビア、アムフルスに戻っておいてね>>

<<ありがとうございます。少し疲れました。休ませてもらいます・・・>>


これだけの一撃を加えても被害はほんの一部。戦乱はまだ治まりそうもなかった。


ちょっと多忙のため端折った形での掲載になっています。

時間ができたら推敲しなおそうと思います・・・


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