閑話「???の過去の事」
いつもご覧頂ありがとうございます。
本業の忙しさもあいまって大海嘯が描ききれていません。
本文はいま少しお待ちいただくとして、サイドストーリーとしてアンキアのお話しを掲載いたします。
「失礼いたします、アルシューレ陛下。件の大騒ぎに関すると思われる情報がありましたのでお持ちしました」
「ご苦労。早速報告してくれるか?」
「は。まずは翻訳した古文書の内容をご覧ください。」
アンキア王、アルシューレは渡された書面に目を落とす。そこには古文書から翻訳されたある事件の記録が記されていた。
---紀元元年頃の古文書---
紀元元年、バニパル大王の御世に大海嘯が発生した。辛くもこれを撃退することに成功したが、その存在は未だ消滅せず。その記録をここに記し、後世の人々へ警告として遺したい。
ある日、各所の遺跡を探索する探索隊が見つけた地下空洞からマナと生命力を吸い尽くす黒づくめの悪鬼が飛び出してきたという。その悪鬼は世界に散らばり、各所でその侵攻を食い止められなかった都市が次々と壊滅していった。
次々と都市が落とされ、世界の人口が10分の1に激減し。地上の人々が風前の灯となったとき、5人の勇者達が現れ、これを撃退することに成功する。
彼らは神の御技と語り継がれることになる数々の魔法を駆使して悪鬼を撃退して行った。
悪鬼たちも抵抗を示し、中でも対応に苦慮したのが暴食の車と呼ばれる、全種類のマナを吸収してしまう牛車の存在であった。
暴食の車は勇者達が放った最大魔法さえも喰い尽してしまい、魔法による殲滅は一旦中断してしまうことになる。
この車は後にxxxxxxxxxxxx(かすれて読めない)崩壊し、以後はxxxxxxxxxxxxx(かすれて読めない)となった。
マナが極端に薄くなった最終決戦の地、死の砂漠で5人の勇者はその身を捧げて悪鬼を異世界に追い払ったとされる。その後、勇者達の姿を見たものはなく、今では彼らは神が使わした使徒なのだ、と理解されている。
くれぐれも。黒き悪鬼たちを侮るなかれ。
勇者なき我らに再び彼らが現れたとき、我々は再び滅びに瀕することになるだろう。
そのときは神に祈るしかない。かの5人の勇者を再び我らに遣わしてもらうために。
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渡された別の古文書にはこうあった。
---記録日不明の古い古文書---
我々が黒い人と呼ぶそれは、はるかな昔、緑溢れる世界だったこの地上世界が滅亡の危機に瀕した時、その災厄から逃れいつの日か地上でまた暮らすことが出来ることを夢見て、地底の世界に移り住んだ者達の末裔である。
そも地上世界が滅亡に瀕したきっかけは二つ。一つは文明加速の悪影響で自然界のバランスが崩壊し、不毛の砂漠化が急速に進み始めたこと。もう一つは技術の絶頂にあった魔法文明がマナの大量消費時代を形成したことだ。
開発のために際限なく自然を破壊し、さらにマナを使いすぎ、地上ではあらゆる箇所でマナが枯渇した土地が発生、魔法文明の恩恵から離れられなくなった人類が住めない世界が広がっていった。
そんな時、新たにフロンティアとして地下大空洞が発見された。
魔法文明から離れられなくなった人々は、もはやマナが枯渇して住めなくなった地上を離れ、豊富にマナの残る地下へとその住処を移していったのだった。
そして多くの人々は地下の空洞に篭もり入り口を何十もの岩塊で閉ざし、マナの流出を避けることにしたのだという。閉ざされた岩戸は重く、その後二度と開かれることはなかった。
このとき移動する人々は全員が黒い装束を身につけ、質素を戒めとした宗教に染まっていたという。
このことから彼らのことを”黒い人”と呼んだ。
さて、全ての人間が地下に逃れたかといえば、そういうわけではなかった。あまり裕福でない者、田舎に居てそもそもこの事象を知らない者などは地下に向かう人の列に入れなかったのである。
このとき地上に残った者たちが不毛のこの大地に根ざして生き抜く我らの祖先となった。
いつの日か地上にマナが満ちるとき、黒い人達も帰還するのかもしれない。
全ての文明を失ったあのときから既に千年の時が経つ。
この書物は連綿と続く歴史の中にこのことが埋もれないため、ここに遺すものである。
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「同じ事象が二つに分けて語られているのか、歴史が繰り返されたのか、判りにくい物だな。古文書のことはわかったが、今回の件とはどう絡むのだ?」
「この古文書に記載のある”黒の人”という記述と今回陣地を展開している仮想敵の装束が同じ黒であるという部分は共通点として判明していることです。」
「さらには今回のきっかけを作った遺跡の塔が地下から現れたことも地下の存在がなんらかの手を尽くしたと推測されます」
王の言葉に意見を奏上する部下達。王は深くため息をつき諭すように言う。
「つまり、証拠はまったく掴んでいない、ということだな。記述の内容については気にすべきことが多くあるだろう。しかし、まったく同じ手合いとして認識するには早計でないか? 敵対行動が見られていない今、こちらから手を出すわけにはいかん」
「はっ、承知いたしました」
「幸い途中にはいくつも都市国家がある。彼らがそのつもりならそこで事が起こるだろう。何が起きても良いように同盟国には支援を送っておくのだぞ。もちろん偵察も兼ねて」
「仰せのままに!」
命令を実行するために出かけていった配下の背中を見送りつつアルシューレの予感は良くない方へ振り切れていた。過去、小競り合いはありつつも厳しい砂漠の土地で人々はようやく生き延びてきた。ここアンキアも砂漠から少し離れているとはいえ、やせた土地であり、けして裕福な暮らしを約束できる土地ではない。ホラズム三角州と呼ばれる川の下流域に位置するこの土地ですらやせているということは、古文書にある歴史は事実なのだろうと容易に予測がついた。
マナと呼ばれる魔法要素が魔法の原動力として利用されなくなって長い時が流れている。現在は生命が生み出す魔法要素を魔力と呼び、その魔力を様々な力に変換して使用する技術に変化しているのだ。
マナと呼ばれる魔法要素が土地の地力に関与しているのだとすれば、いまここであふれ出そうとしている彼らが過去の亡霊であるのならば、さらなる地力の低下を招いてしまうだろう。それを防ぐためには・・・なんとしても拡散を阻止しなくてはならない。
「それこそ、勇者が現れてなんとかしてくれれば・・・と思うのはわしももう老いたということかな・・・」
王の深いため息はまた積み重ねられていく・・・
砂漠の都市で一番の大都市とされたアンキアでの一コマでした。
アンキアは交易都市です。農業生産物で潤っている都市はほんの一握り。
他の都市はそこからの交易か、さまようダンジョンから獲得されるドロップ品で生きる糧を獲得しているわけです。
緑化活動が出来るかは微妙なようです・・・




