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第28話 「満員、御礼?」

いつもご覧頂ありがとうございます。

ミカエラさんお使いの続きです。

クファンの冒険協会の事務所は溢れんばかりに集まった冒険者達の坩堝(るつぼ)と化していた。

暫し、呆然としたミカエラはとりあえず受付の担当を探し始めた。冒険者達は集まっているだけで、受付でなにかしている姿は見えなかったからだ。


「あのー・・・すいませーん・・・ご相談がありまして・・・どなたかギルドの方はいませんか?」


受付にたどり着いてみると残念ながら受付嬢は不在であった。これだけの人数が居ることを考えると、何処か個室などでの対応で掛かりきりになっている可能性が高い。

ミカエラは仕方なく、近場の冒険者にこの大集合の原因を聞いてみることにしてみた。都合の良いことに女性だけのパーティなども居て、女性一人のミカエラも話しかけやすい。


「こんにちわっ。ちょっと聞きたいことがあるんだけど。今、いいかしら?」


なるべくフランクな口調になるように気をつけながら話しかけるミカエラ。ニコニコ顔で受け答えしてくれたのは、女ばかりのパーティでリーダーっぽい雰囲気を醸している女剣士だった。


「こんにちわ。聞きたいことってなにかな? わかる範囲であればお答えするわ。」

「今日に限って、冒険者がな~んでこんなに沢山集まっちゃってるのかを聞きたいんだけど・・・」

「貴女は・・・見たところ冒険者じゃないから当然理由なんて知らないわよね。 今日は共通依頼通達が出ていた「近辺の魔物の探索」の報告タイミングが丁度同じになっちゃったみたいで。それでこんなに集まっちゃってる状況みたいよ。職員総出で、個室で報告を受けているから受付に誰も居ない状況になってるわけ。」

「共通依頼とはいえ、これだけの人数ということは・・・相当動員されたのね。貴方達も報告で帰ってきたんでしょうけど、探索では何か面白いことでもあった?」

「そうね。私達も見つけてきたんだけど、変なダンジョンの話ならあるわ。というか、この辺の冒険者達の報告はほぼその報告で大半を占めると思うわ。さほど強いダンジョンでもなくて、攻略済みになると最上階が崩壊して光をぼんやりと発するようになるのが特徴かしら。」

「やっぱり・・・同じようなダンジョンが沢山、というわけね」

「同じ・・・ということはあなたも見かけたのね。 あ、それからこれだけ一気集まった理由はたまたまタイミングがあっただけじゃなくて、急遽ギルドから探索中止の伝令が来て、一旦調査を中断して報告に集まるように言われた結果もこの有様を助長したと思うわ。実際、今ここに居る奴らも調査結果報告の報酬待ちな者が半分、そのまま次の依頼の待機組みが半分というところだし」


ミカエラが女剣士と話し込んでいると、そこにひょっこりとギルド長が顔をだした。


「お? そこのハイエルフのお嬢さんは・・・商業ギルドからのお使いの娘じゃないか?」

「はい? 確かに商業ギルドの伝言を(シンジから)預かっては居ますが」

「うんうん。商業ギルドとの約束でお互いに定期報告をするって約束だったんだよ。じゃあとりあえず、立ち話も難だから職員用の食堂で話しを聞こう。他の場所は報告を受け付ける業務で一杯だからね」


そそくさと移動するギルド長とミカエラ。親切な冒険者の娘に礼を言い、冒険協会職員用食堂に移動した。


「さて、ここまで来れば邪魔は入らない。商業ギルドからの伝言を聞かせてくれるか?」

「はい。伝言とお願いがそれぞれあります。まず伝言のほうですが、早ければ今日中に武器の補充が可能になります。鍛造武器をまとまった数で入手できたので冒険者達に案内願います、という内容です」

「ほう? 鍛造武器か。このところ鋳造武器しか目にしなかったが、どこかで良い職人でも見つけたのだろうか? 報告自体はわかった。そのことはこの後すぐに皆に通達しておこう。攻撃力の不足が懸念として上がっていたところだったから助かる。そして・・・お願いのほうはなんだ?」

「はい。おそらく魔物の大侵攻が発生するだろうという噂が飛び交っております。当然備蓄や確保のために食料品が品薄となり価格が暴騰しかねない勢いなのです。打開のために食料ダンジョンへ冒険者を派遣して買取などを強化していただきたいというお願いです。」

「その懸念も理解している。食料ダンジョン・・・か。そういえば近所には野菜ダンジョンと食肉ドロップの古いダンジョンしかないな。主食が少ないのが玉に瑕だが・・・」

「ギルド長は馬鈴薯(ジャガイモ)とか薩摩芋(サツマイモ)とか玉蜀黍(トウモロコシ)という野菜(・・)をご存知ですか?」

「ふむ? 馬鈴薯(ジャガイモ)くらいは聞いたことがあるな。酒場でぽてとふらいという料理を出しているところがあった。昔、各地を旅していた頃で、もうどこの街だったかも覚えていないが・・・」

「ポテトフライの味はどうでしたか?」

「歯ごたえは無かったが、腹に溜まって程よい塩味が酒を進ませるよいアテではあったな」

「その、腹に溜まる食材も野菜(・・)なのですよ。しかも、食べ方によっては小麦と同じような食べ方が出来ます。」


ちなみに、何故か小麦や大麦、米などの穀物は野菜認定されていないらしく、野菜ドロップのダンジョンでは出てこない。


「小麦と同じような食べ方か。どのようなものかね?」

「少し実演して差し上げましょう。丁度ここは食堂ですから、調理台もあるようですし」


ギルド長にそう告げるとミカエラはリュックから袋に入った粉を取り出し、ボウルに開けると水を入れてこね始めた。


「粉、か。小麦とは違う色合いだな」

「ええ。今回は玉蜀黍(トウモロコシ)を荒く挽いたものと馬鈴薯(ジャガイモ)を薄切りにして天日干してから細かく粉に挽いたものをブレンドしています。これに少々の塩を混ぜて水に戻した干しぶどうを加えるとさらに良いのですが、干しぶどうがありませんので塩だけで行きます」


ミカエラは粉をこね終わるとフライパンに油を敷き、こね終わったタネを薄く延ばしてフライパンに乗せ、焼き始めた。


「即席ですから粉が水に馴染んでいません。ですので普段よりも少し弱火で蒸らすように焼いています。タネ生地をもう少し休ませればもっと強火で一気に焼いても大丈夫です。干しぶどう入りのものでしたら型に入れてパン釜に入れて焼くとパンそっくりのものが作れますよ」

「干しぶどうのパン、というわけだな。ふむ。良い香りがしてきたな。確かに小麦とは違う香りだが美味しそうな匂いだな」


程なくして焼きあがった”種無しパン”と呼ばれる、ただ粉を焼いただけのお好み焼きの生地だけのようなそれをギルド長が手に取り千切り、口に入れる。


「うむ。糧食としては充分だな。作り方も手軽。」

「携帯するのでしたら玉蜀黍(トウモロコシ)以外のものにつきましては木箱に入れて日陰になるように持ち運ぶ必要はありますが、茹でるだけ、焼くだけでもほこほこと美味しく食べることができますよ。糧食としてはそのほうが調理が手軽で良いでしょう。また、大量貯蔵をしても大丈夫です。1年程度の長期間に渡って保存することが出来ますので非常に有用だと思われます」

「あいわかった。その野菜の姿形は・・・この羊皮紙に描かれているものか。ふむ、ではこれを沢山持ってこさせるように集まった冒険者のうち、下っ端の者を動かそう。」

「宜しくお願いします。必要に応じて個人的な買取もさせて頂きたいので、あわせてお願いできますか」

「ああ、良いだろう。 それと・・・さっき作ってくれたような料理の仕方も羊皮紙では高級かもしれないが残してくれると助かるのだが」

「羊皮紙は品切れしてしまいましたから、パピルスでよろしければ今手元に先ほど紹介した料理の手順を残しております。こちらを進呈いたしますわ。レシピを広めることに関しましてはギルド長にお任せいたしますわ」

「いろいろと用意してくれて助かる。礼も兼ねて商業ギルドに話しておこうと思う。・・・所属はどちらのキャラバンかな?」

「はい。”アラベスクの金の風”に所属しております。何かありましたら商業ギルドを通じてでも、直接、四つ角の”よろづ屋”でも、都合のよろしいほうにお知らせくださればと存じます。では、まだ仕事がありますのでこの辺でお暇いたします」

「ああ。覚えておくよ。何かの時にはまた宜しく頼む。そうそう、野菜ダンジョンのドロップ品は冒険協会裏の冒険協会専用倉庫に積まれているから早速仕分けしておくよ。さっきの3種類の野菜が必要なら優先して分けてやるよう手配しとくから、係りの者にキャラバンの名前とほしいものを言うといい。格安にしておく」

「ありがとう。では、今日はこの辺でおいとましますわ」


ギルド長に別れを告げて冒険協会を出たミカエラは一旦よろづ屋へ戻った。

ミカエラはふと思いつくとアカネとミルファの末っ子狐姉妹を呼び出してお使いを頼んだ。


「アカネとミルファにはちょっとお願いがあるの」

「お仕事ですか?」

「そうなの。商品の仕入れをお願いしたいの。この台帳を持っていってツケで買ってきてほしいんだ。買ってくる物は冒険協会から、野菜のうちの玉蜀黍(トウモロコシ)馬鈴薯(ジャガイモ)を買ってきてくれるかしら。それぞれ500キロムずつくらいね。運搬用に裏の動物小屋からにょろとにょろりを連れて行きなさい。大八車もあるはずだから、2頭に牽かせてね。積み込みもにょろりにお願いすれば目の触手を使って器用につんでくれるから大丈夫よ」

「結構買うんですね。新商品ですか? また美味しいものだと嬉しいです!」

「たぶん、備え・・・?」


アカネは良い意味で能天気、ミルファは空気が読める子のようだった。


「どちらかと言えばミルファが正解でアカネは半分正解かな。ちょっと魔物が活発化しているから備えのための食糧買い込みなの。それと・・・一度アムフルスに顔を出しておくと良いわ。活発化対策で村の護りをきっちり整えはしたけど、それとは別に親御さんに会っておいたほうがいいと思うからね」

「うん!!」

「了解」

「あ、あと! お土産になにか適当に買って良いわよ! 銀貨1枚くらいまでなら問題ないわ」

「「ありがと~~!!」」


お使い二人はツケ用の台帳をつかむと仲良く動物小屋へ駆けていったのだった。



冒険者協会も一緒に動き始めました。

一気に市場が動いてシンジ達に出所の確かな金銭が入ってきます。

資金があれば大きな仕事も出来るようになるでしょうが、今は未だ来る大禍をどうにかすることが先決のようです。


大海嘯は秒読み状態。シンジ達の準備は間に合うのでしょうか。





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