第27話 「衝撃の物量」
いつもご覧いただきありがとうございます。
今回はミカエラさんお使いの回です。
クファンの商業ギルド経由でシャナディへの武器販売のルートを確保してよろづ屋に戻ってきたシンジはミカエラとオリビアそれぞれに次のお願いをしていた。すなわち、アムフルスの防衛のお願いとクファンにおける立ち回りの話であった。
「・・・と、いうことでオリビアはアムフルス側の防衛をお願いしたいんだ。基本線は冒険者達が居るだろうから問題ないけど、度を越えた侵攻であった場合は強大な抑止力が必要だからね。1,000レベル到達者のオリビアにしかお願いできないと思って。」
「そういうことでしたら承知しました。ただ・・・影ながらの保護にさせてください。必要に迫られて本来の姿で竜撃を使用することも考えられますから」
「それはお任せするよ。打てる手はそれほど多くは無いけど、深く知り合った仲の人達はできるだけ救いたいから」
「あたしのほうはクファンで物資のコントロールをしていれば良いのね? ストックに積まれていた初期装備武器を商業ギルドに渡して運んでもらうことと、アムフルスからの物資を食料に変えることと・・・あとはなにかあるかしら?」
「基本線はそれでお願い。ここクファンであっても対処し切れる限度はあると思うから、その場合は防衛に加勢をしてほしい。状況によっては禁呪級の魔法の行使も必要だろうから。大海嘯の発生は明日すぐ、ということは無さそうだけど、1ヶ月以内には必ず動きがあると思うんだ。なので、それを前提にしておいてほしい」
「了解よ」
「承知しました」
シンジは二人に頼みごとを終えるとアウラを伴い転移陣で慌しくシャナディの馬車へと転移していった。
「また・・・多くの命が失われるのでしょうね・・・」
「世界に生きる者達の摂理よ。命を失わせないための戦いもまたその摂理。手の届くところだけでも護りましょう、オリビア。あの無邪気な狐人達の暮らしを護る役目は貴女に任されたのだから」
「ええ・・・。そうだ、お父様達にもこのことは知らせておかなければ。出来れば竜神官達のことを庇護下に置いて貰える様にしないと」
オリビアも実家に行くために転移し、地下室に残されたミカエラは未だ仕事中であろう売り場のほうへ向かった。シンジの指示どおり商品を整理し、商業ギルドに届ける仕事が残っている。
「それにしても長剣、大剣、槍。それぞれ3,000本もあると怪しくて仕方が無いわ。このうち50セットはアムフルスの支援物資にまわすとして、商業ギルドに回すのは2、000セットに留めましょう。残りは長期戦に備えた予備ということにして、シャナディもクファンも守備隊の兵力は1,000前後しかいないからね。兵種も分かれるだろうから、充分でしょう。あとは・・・魔術師も必要ではあるけど・・・魔術師の杖を渡してもあまり意味はないわね。魔力上昇の符か、魔石が妥当だけれど、事前供与はいろいろ弊害が出そうだわ。」
シンジのストックとしては各種9,999という数量でアイテムボックスのインベントリに格納されている。今回は3種類の武器を3,000だけインベントリから取り出し、ストックに積み上げた。その隣に、同じ量ストックしているマジックアイテムから999個だけ魔力上昇符と魔石が取り出され、積み上げられていた。ミカエラの補助用にという話だったが、CvCでも一人でコレだけの物量を消費するのは難しい。きっと防衛用に供与しても良いのだろう。
「あとは・・・よろづ屋の従業員達用にリフレクションビットの符が99枚、ミスリルチェインメイルが10着、エルブンマントも10着、それとファイアワンド10が10本ね。武器は星屑短剣が10本と。よそ様にはあまりお見せ出来ない装備ばかりだわ。」
希少金属であるミスリルは非常に軽くしなやかでありながら、かなりの衝撃耐性を持っている。チェインメイルにすれば重さをさほど感じさせずに強大な防御力を発揮する。エルブンマントは防御力にプラスして魔法耐性を付与し、星屑短剣はキィ・ワードによって魔法を打ち消す空間を一定時間作り出す能力を持つ。ファイアワンド10はスキル魔法【ファイア】をレベル10という高レベルで10発封じ込めた杖だし、リフレクションビットの符は保護対象に向かってくる攻撃を物理・魔法の区別なしに99回、自動的に追尾して跳ね返す魔法の立方体を召喚する符だ。過剰防衛力といわざるを得ない。
「ま、これはこれとしてうちの従業員は前線には出させないから使わない方向で行きましょ・・・」
ミカエラは従業員用の装備を小分けにして渡す準備だけを終わらせると、残りの装備品をアイテムボックスに納め、商業ギルドへ向かった。
・・・
・・・・・・
商業ギルドにつくと、ギルドマスターを呼び出してもらい、約束していた武器類を買い取ってもらった。6,000本の剣が並ぶ様はまさに圧巻。ギルドマスターも生まれて始めてみる光景だというから、物量の凄まじさが伺える。一度の買取をするには商業ギルドですぐに用意できる現金がない、とのことで半分ほどは掛売りの形となった。現金が用意できた時点で支払ってもらうという形だ。
「では、輸送その他は商業ギルドから手配してください。冒険協会のほうから要請が出ていると思いますので、料金はそちらもちになると思います」
「うむ。既に冒険協会からは正式に依頼を貰っているから問題ない。出来る限り早く各地の冒険協会に配備してほしいとの通達だ。モノを見させてもらったが・・・今時珍しい鍛造のものなんだな。今の主流は安く作れる鋳造品で、脆いために使い捨てが常識な劣悪な商品、だからな。」
この鍛造/鋳造あたりはゲームの仕様なのだろうが、アイテム説明欄にもきっちりと説明が載っていた。精錬素材につかえるほうの店売り品の説明追記にこうある。
”匠が精魂こめた鍛造技術で作られている。そのへんの鋳造品には劣らない。”
若干だけ価格が高く、精錬素材とするための端書だったのだろうが、こんなところで品質の差として出てしまっていた。今となってはうれしい誤算と言えるだろう。
「じゃあ、のこりの依頼、食料品の増産のほうも頼むよ。”飯が食えねば戦は出来ぬ”というだろう?」
「ふふ、そのとおりですね。今日から増産体制に入っています。燻製では時間が足りませんから、味は数段落ちますが、保存性は近しいふつうの干物が多くなってくると思います。価格もその分抑えられますから、都合も良いと思いますので」
「うん。宜しく頼む」
商業ギルドを後にしたミカエラは”よろづ屋”へ戻り、アムフルスから持ち込まれる干物をストックに持ち込み、これもシンジからそっと渡されていた”物干し台”をストックに設置し、そこに貯蔵できるようにした。部屋の四隅に消臭の呪いを掛け、魚臭を消す処置も忘れずに行う。
「魚はいいけど、米・麦の類はどうしようかしら。塩は産地があるから商業ギルドが手配するでしょうし、この際香辛料は諦めてもらいましょう。シュバリクの近所は野菜ダンジョンだったから主食は採れないでしょうし・・・」
(ミカエラ。馬鈴薯とか薩摩芋とか玉蜀黍という野菜があるから、それ狙いで野菜ダンジョンを探索すれば主食に近いものが用意できるよ)
(あ、シンジ。なるほど、その手もあるわね。すぐに冒険協会に話を通しておくわ。運搬は勝手に手配するでしょうから)
(そうしてくれるかい。たしかレシピノートが地下室の研究棚においてあるから、そこから幾つか簡易に調理できるレシピを羊皮紙にコピーして一緒に冒険協会に説明しておいてね。料理の方法が判らないと意味が無いから)
(了解! とりあえず人員以外の後方支援策は派手じゃない線では対策完了ね)
突然のシンジからの念話の後、今度は冒険協会に向かうミカエラ。野菜ダンジョンへの探索とそこで取れるはずのドロップとレシピについて話し、糧食の確保に走るよう助言するつもりだった。
暫く歩いて冒険協会の事務所の戸を開けるとそこは騒然となっていた。
「え・・・と。冒険者がすっごいたむろしてるのは何でなのかしら・・・?」
およそ50名は居るだろうか。熟練から駆け出しまで。冒険協会は過剰に満員御礼のようだった。
準備が着々と整ってきました。
今暫く準備のお話が続く予定です。




