第24話 「光臨、召喚の塔」
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大海嘯の前触の続きです。ではどうぞ。
オリビア、ミカエラ、シンジの3人が念話で会話を始めた。
<<何でしょうね。そんな謎の塔なんて、私の知る限り竜の伝承にもないものですが>>
<<巷で噂の”大海嘯”に絡んでるんだろうけど、シンジはそのへん、昔のイベントとかのことを覚えていないの?>>
<<あの時代だと・・・夢幻の塔というイベントはあったけど、こんなにあちこちに沢山出るものだったか覚えていないんだ・・・あと、大海嘯とはなんの関係も無いイベントだったし>>
<<白銀の竜様にでも聞いてみますか?>>
<<安易に神様に頼るのもどうかな>>
相談も行き詰りつつあったそのとき。ふと名前を出した瞬間、轟音とともにそれはシンジ達の頭上に光臨した。
<<呼んだ? 喚んでくれたのよね!? そーれ!! 私! 参上!!>>
強引にこの場に転移してきたのは巨体を誇る白銀の竜、その人だった。
<<久しぶりね、シンジ。なかなか呼んでくれないから、こっちから来ちゃったわよ>>
「はっちゃけすぎですよ白銀の竜様。来ちゃった、とか竜の巨体でテヘペロされましても・・・」
「これは頭の中に言葉が響いて・・・シンジ様、もしやと思いますが、こちらの竜様はお知り合いで・・・?」
「どこからどうみても立派なモンスターやけど、知り合いなんか?」
「・・・にゃ~。」
ルミもルチアもアーシェラもすっかり吃驚している。普通に会話をしているから敵対だけはしていないとわかっているようだったが。見上げる巨体は名前のとおりに白銀に輝きかなりの威圧感がある。
「ちょっとサイズを小さくしてもらえませんかね? 皆おびえちゃってるので・・・・」
<<しょうがないわね。ちょっと窮屈だけど人間タイプに変身するからまっててね!>>
そう言うなり体が縮んで行き、ぱっと光るといつか竜の神殿で見たあの女性がそこに立っていた。
「改めて、久しぶりね、シンジ。なかなか呼んでくれないから来ちゃった」
「大事なことだから2回言ったんですね、わかります。・・・お久しぶりです。えーと、その姿のときはなんと呼べば・・・?」
「そうね。固体名ということならアウラと呼んでもらおうかしら。」
「わかりました、アウラさん。で。何の御用でしたっけ。」
「あら? 私に聞きたいことがあるんじゃなかったの? 伝承だかなんだか・・・」
「どんだけ遠くから盗み聞きしてるんですか。・・・地獄耳ですね? あなた・・・」
呆れ顔でシンジが文句を言うとアウラはそのボン!キュ!ボン!!の身体をくねくねさせながら答える
「そりゃぁ・・・旦那様の言うことを聞き逃すまいといつも注目していますからね!」
(あ。まずい。あの設定まだ生きてるんだ!?)
おさらいしてみよう。対白銀の竜戦の2回戦目。間違いなくシンジは白銀の竜の逆鱗にタッチしている。それ以前に○イタッチも慣行済みであった。ちなみに逆鱗に触れる行為は竜達にとってプロポーズと同義であり、触れられてしまえばその力に屈服したとしてそのプロポーズを受け入れる、という鬼ごっこのような謎の求愛の儀式があった。
そんな背景などまったく知らされていないルミとアーシェラの眦がピクっと上がる。
「「旦那様~!?」」
(いかん。地雷がこんなところに埋まって居ようとは・・・どうやって脱出するか・・・)
「い、いや~アウラさん? そんな他人行儀に呼ばないでも・・・こう、シンジ、と名前を呼び捨てで良いですから・・・」
「自分の夫を旦那様と呼ぶのはなにか他人行儀なの?」
(あ・・・オワタ・・・)
「ぶっ、あーっはっはっはっは!!!!」
「「しーんーじーさーまー????」」
こらえ切れなくて爆笑し始めるルチアと瞳から虹彩が消えうせてびっくりするほどレイプ目のルミとアーシェラがゆら~りと近寄ってくる。
「お、落ち着いてっ! ねぇ、多分、何かの手違いでっ!!!」
そして地雷はここにも埋まっていた。
「熱烈プロポーズだと思っていたのに何かの手違いですって?」
ごごごご。と書き文字を背に背負うアウラ。追い詰められていくシンジ。ルチアは爆笑から腹筋崩壊へと移行したのか笑い声は無くなったのに倒れ伏したままときおりピクッピクッと痙攣し、復帰する気配がない。
(なんだこのカオス・・・もうかんべんして下さい・・・)
3方からにじり寄られ、逃げ場を完全にふさがれたところで半泣きになるシンジ。その顔を見て3人娘の顔色がふと、元に戻る。
「なんて、冗談よ、冗談」
「もちろんわかっていますよ、ご主人様」
「おいらもちょっと冗談が過ぎたかニャ? そんな涙目になると思わなかったニャ」
どうやら各自目配せで合図をし合って冗談を仕込んだようだった。もはやお馴染みになったシンジのどうしようもない朴念仁力のバリアが崩壊しないかなー、という期待をこめて。
「ふぅ~。あ、あまり笑かさんどいてや・・・腹筋が崩壊するから・・・とりあえずアウラはん?やったっけ。話を元に戻すけど、あの塔とか光の柱とか知っとることを教えてくれへんか?」
なんとか復帰し、脱線していた話を元に戻すルチア。それを受けて真面目な雰囲気でアウラが語り始める。
「そうね。まず、光の柱については今迄地上で見たことはなかったけど、双子の月のうちクロスムーンで同じものが過去に存在していたわ。あるとき突然消滅してしまったから今はもうそこにないけれど」
「!! もしかして・・・!?」
「シンジには以前紹介したことがあったわね。そう。召喚魔方陣のゲートと同じ雰囲気の輝きがあの光の柱から感じられるわ。ただ、出力は果てしなく低いから、遠いところに繋がっているとは思えないけれど。せいぜい、隣の大陸に繋がっていれば良いほうじゃないかしら。遠方に見えるどの光の柱も似たり寄ったりな感じね」
隣の大陸。VRMMO時代はまだ開放されておらず、魔が棲む暗黒の大陸とされていた場所だ。シンジが遊んでいた当時は未実装で、近日実装、というアナウンスがあるだけだった。そもそも、砂漠を越えた場所から向こうの同じ大陸ですら未実装だったのだから、ものすごく遠日実装だったのだと推測される。
「隣の大陸・・・ねぇ。魔の世界という噂は聞いたことがあるけど、実際そうなの?」
「実際に降り立ったことはないから、正確な事は言えないけど、遠くから見るとこの地方より魔力の大きな種族が生きていることだけは間違いないわね。少なからず竜種も居る様だし。私の勢力範囲外だから把握はしていないけれどね」
ぽかーんとした顔で取り残されているのはルミ、アーシェラだ。
「あ、ごめん。この人、この間の竜の街で知り合いになった白銀の竜さんで、アウラさんという方。皆もよろしくしてね?」
「うむ。一応竜の守護神をしておる、アウラという。以後宜しくしておくれ。まぁ、気楽にしてくれて構わんから、敬語とかも不要じゃ」
「「は、はい! 承知しました・・・」」
暫くは緊張で固まっている風だった2人も整理がついたのか、先ほど会話がされていた例の塔について話をすることにしたようだった。
「それで・・・もし、あれが魔を召喚するものだとしたら、巷で噂の大海嘯って魔の侵攻ってことなんでしょうか?」
「ありうる話や。うちらより莫大な魔力を持つ種族が相手で、奴らしか知らない謎の遺跡を起動させてこちらに侵攻しようとしてる、とか」
「うん・・・と。転移するだけなら多分遺跡の力はいらないんだよね。。。使える立場からすると転移陣を構築するのは送り込む側だけでもいいんだ」
「で、でも、双方に陣があったほうが安全な転移ルートが作れると思いますし・・・!!」
「多分、だけど。あれってトラップ遺跡の一つだと思うんだよね。不特定多数を転移させるための。それも、こちら側には出口が、遠くはなれた他国にランダムに入り口が開放されるっていう。イメージで言うと巨大な落とし穴の入り口が向こう側で、落ちてくる先がこっち側の塔のあたり、という感じかな。転移陣の起動スイッチがこっち側にある時点で、向こうから操作なんて不可能だからね。」
「・・・獣神様からの神託をもらったニャ。獣神様もシンジと同じような見解だそうニャ。力の流れが逆方向に一方通行ニャので侵攻のための陣としてはおかしいそうだニャ」
(考えられる結論は一つ・・・イベント大海嘯用のモンスター調達の仕掛けということか)
「あの光っている状態が落とし穴のセットが完了した印っぽくて、何かの合図で一斉稼動するんだと思うわ。遺跡の転移陣の解除を頑張って、他の遺跡と連動させないためにこれ以上探索させないようにする、というのがとりあえず取れる方針かしら。転移陣の破壊・解除が難しい場合は事前に殲滅体勢を整えた上で一気に遺跡を全部開放して大海嘯に対抗するしかないわね。」
「アウラの言う方法で何とかするしかないんだろうけど、僕たちだけじゃとても無理だね。よし、シャナディに到着したら冒険協会にこのことを連絡して、対策してもらうことにしよう。必要なら手助けをする、ということで」
今後の方針を決めたシンジ達は今日は野宿し、明日からはスピードを上げてシュバリクに向かうことにした。
・・・
・・・・・・
シャナディの城門を抜けると、活気のある町並みが目に入ってきた。
白銀の竜との邂逅の後、白銀の竜を仲間に加えたシンジ達は脇目も振らず移動し続け、翌日にはシャナディに到着することが出来ていた。予想通り途中でダンジョン塔が幾つか散見され、場所だけを書きとめて通り過ぎてきた。恒例の特産探しと行商はへとへとになっている動物達の急速を最優先させなくてはならないため後回しにして、まずは冒険協会に向かう。
「こんにちわー。キャラバン”アラベスクの金の風”です。報告したいことがあってやってきました!」
冒険協会の受付娘に声を掛けるシンジ。
「いらっしゃいませ。情報提供ですね? あちらの個室へお越しくださいますか?」
受付娘に連れられて個室で待機していると、そこに現れたのはロマンスグレーのオールバックが似合う、壮年の男性だった。
「なにか物騒なことになっていそうだな・・・そちらの・・・息だけで人が死にそうな令嬢も居られる事だし、機密事項として話を聴こうか」
シンジ達の報告が始まった。
冒険者組合のほうの偉い人が出てきたようです。
当然色々見抜ける技能をお持ちな訳で、アウラさんは正体を見透かされている雰囲気ですね。
次回はシンジ達から報告と作戦の相談。どうなることでしょうか。
ではまた次のお話でお会いしましょう。




