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第19話 「よろづ屋、そっと開店中。」

いつもご覧いただきありがとうございます。


今回はちょっと短め。ではどうぞ。


翌日、昼過ぎに転移陣を使って手軽に帰宅したシンジ達は店の状況を確認していた。飾りつけは終わっており、今のところ乾物販売のお店ではあるが、店開きは出来そうである。ただし、飾り付けをした面子のせいか、わりとファンシーな飾り付けの店になってしまってはいるのだが。


「この入り口の扉とかすっごいひらひらの飾りが付いてるんだね。販売台セットも花の飾りとか付いちゃて・・・」

「これは苦肉の策よ。食品を置くこともあって生臭さがこもっちゃうから、花の香りとかポプリとかで誤魔化さないとすごいことになっちゃう」

「それもそうか」

「あとは、保存食がメインになるから、キャラバンでも食事係の女性が多いんじゃないかって、そんな打算もあるわね。店員が女性であることのアピールにもなるし。」

「やっぱり、女性同士のほうが買いやすいのかな?」

「無骨なおっさんがやっとる店よりはとっつきやすいってだけやね。ささ、シンジはんの首尾もおしえたってや?」

「・・・ああ、とりあえず原材料の確保はなんとかできたよ。明日あたりから供給が出来るようになるね。燻製を施したほうが高級感が出るから、今日は一夜干しを引き取ってきて屋上で燻製だね。」

「はいはい! ルミは燻製の仕方を覚えましたので、お任せください、ご主人様!!」

「おー。僕が作ってる姿を見ただけで覚えたのか・・・うん、お願いしようかな。燻製用のチップは地下室に保管されてるから持って行ってね。炎が上がらないようにしないと良い煙が出ないからよく注意してね。」

「了解です!」


材料の場所を大雑把に伝えると、ルミは燻製の仕込をするために屋上へあがっていった。

ルミを見送ったシンジは地下室の転移陣をくぐり、アムフルス村へと足を運ぶ。漁と干物加工のレクチャーの続きを教えるためだ。

転移陣を置いた青いゲルから外に出ると、丁度いいところに村長が歩いている。


「こんにちわー。シンジです!」

「ああ、こんにちわ。」

「そろそろ干物のほうの次の工程がありますので4人娘を呼んでいただけますか?」

「あいわかった。 今日も特に用事は無いはずじゃからすぐに来るじゃろう。」


アルムがまた「コーン!」と声を掛ける。程なくミューラ達がやってきた。


「こんにちわ、シンジさん。」

「こんにちわ。じゃあ、今日は干物の次の工程を説明します。と、言っても干物を取り込むことと、漁のサイクルの説明だけになるけど」

「承知しました。皆も呼んできますね?」


干物の加工場所で待ち合わせをして、ミューラは残りの3人娘を呼びに走っていった。

待合場所で三々五々集まってくる4人娘。


「こんにちわ。さてじゃあ、干物加工の続きをお話しますね。」

「「「「はい、お願いします」」」」

「まず、塩漬けは暫くかかるものなので昨日説明したとおり1週間後に出荷可能です。僕らで買取する場合は拠点のゲルに運び込んでください。青いゲルが物置です。」

「青いゲル、わかりました。」

「それから干物のほうですが、昨日一日干していたので良い感じに生乾きになっています。僕らはこの段階のものを買い取ります。今回は開きと姿干しのものを1つずつ残して残りを全て買い取りますので、青いゲルへ運んでください。値段は先日アルムさんと取り決めさせていただいたたとおり、シルバートラウトが1匹分で銅貨100枚、レインボートラウトは1匹分で銅貨25枚です。村で消費する分もあるだろうから、売っても差し支えない分だけ持ってきてくれれば買い取るよ」

「承知しました。お金は村長にお預けください。魚はこのあと運ばせてもらいます。」

「よろしく。それと、オイル漬けのほうだけど、これはこのままで出荷可能です。焼いてパンとかナンにはさんで食べるとおいしいから、今回のは村で消費したらどうだろう。1樽だけ買い取らせてもらうけど。たしかシルバートラウト2匹分くらい入ってたよね。ナツメヤシオイルの分もあるから銅貨250枚分で買い取を約束させてもらってるから。」

「ありがとうございます」

「この残した干物は1週間くらい干し続けてみよう。別の保存食になるから。出来上がった時点で食べ方とかも説明するよ」


こうして、取引の1サイクルの説明の後、4人に魚を運んでもらい、さらにその足で漁場に向かうことにする。


「タイミング的にはこの時間で日陰になっている淵を狙うと大物が取れるんだ。今日は昨日と違うところがいいから・・・こっちのちょっと深めの淵にしよう。ナツメヤシの木陰が良い感じだし。じゃあ一番うまいチコが網を打ってみて?」

「がんばります!!」


綺麗に円を描くチコの投網。直径が5mはあるだろうか。底に重石が着く手ごたえを感じると、そっと網を引き上げ始めた。


「お、重いです、シンジさん。石でも引っ掛けちゃったのでしょうか?」

「多分ね、大漁なんだよそれは。ほら、網があんなに暴れてる」


引き上げると大きなシルバートラウトが10匹も入っていた。小魚は淵にはいなかったようで、殆ど入っていない。


「この淵くらいの大きさだとあともう一回くらいが限界だね。捕り終わったらあとは昨日と同じ行程さ。干物はほぼ毎日で構わないけど、塩漬けとかオイル漬けは手間もあるから気が向いたときにやる感じで良いと思う。じゃあ、あとは任せるよ。」


そう言うとあとのことは4人娘に任せ、青いゲルに運んでもらった干物ごと地下室に転移をするシンジ。クファンの拠点、よろづ屋の販売台にまで届くほど陽が傾き、涼しい時間帯に入りかけていることがわかる。


「戻ったよ。燻製の材料も持ち込んだから屋上で燻製を仕上げようか」


燻製の下準備として材木を削ってチップを作っていたルミがかなり頑張ったらしく、しばらくスモークに困らないくらいの量を確保できていた。沢山引き取ってきた干物は燻され、商品に変化していく。


「商材は1種類だけだけど揃ったし、そろそろ店を開店しようか。暫くはルチアとルミで店番をお願いするよ。僕はまだちょっと足りない材料の調達先と店を手伝ってくれる協力者を探してくるから」

「わかりました、シンジ様。シンジ様の護衛が出来ないのは残念の極みですが、これも役目、しっかり全うします!」

「承知やで。頑張って売り物ふやそうな!」


普通に励ましの声を掛けるルチアと無駄に騎士道精神で誓いを発するルミ。苦笑しながら心配は要らないとルミに頷くシンジ。シンジが次に目指すのはチップ用の木材の確保と塩の確保である。このうち塩はクファンに程近い塩の町モーグルで塩棒が産出していたはずだ。純度は低めだが問題なくアイテム作成が出来ていたから干物用なら大丈夫だろう。交易の線を繋げてあげればお互いに物々交換レベルで販路が開けるかもしれない。そうと決まれば早速ギルドに向かうシンジであった。



・・・

・・・・・・



ギルドの窓口にシンジがやってくると、キャラバン登録をやってくれた女性の職員が居たので声を掛けてみた。


「こんにちわ。”アラベスクの金の風”、シンジです。ちょっと相談があるのですが」

「こんにちわ、シンジさん。今日はどんな御用事ですか?」

「ええと、まずは交易のルートの確認なんですが、モーグルからクファンを経由してアムフルスへ行くようなルートを持つキャラバンっているんですか?」


聞いたところだと、キャラバンはある特定の販路ルートを保持し、お互い手が届かないような場所にも協力し合って販路を広げるようなこともやっている。仲介人はだいたいギルドである。VRMMO時代は運んできた交易品をギルドのオークションに掛けておくことでお互い欲しい物や売りたい物を交換していた。現実の世界では仲介人を置いたお互いの取引になる。


「モーグルからクファンへのルートはありますよ。いくつかのキャラバンが登録していますね。主な商材は塩の棒で、純度によってランクと価格が決められているようです。アムフルスは・・・なにもない獣人の村ですから、相手にするキャラバンはいないようですね」

「うん? 獣人の村だと相手にしないんですか?」

「・・・そうですね。獣人達は貯蓄はしない性質ですからお金が無いこともありますけど、特産品を生み出すことも少ないのでキャラバンからは軽んじられているようです。唯一、戦力としての価値は認めているようなので、戦闘奴隷商人などが村を訪れて金品と交換に人を買い取っていくことがあるくらいでしょうか」


現実の世界では獣人の地位が低いことが良くわかる。確かに獣人系のキャラクターは生産能力が無い代わりに戦闘特化の能力が多く、ファイター志向のプレイヤーに人気のあった種族だったが。 


「そうですか。じゃあ、モーグルに行き来しているキャラバンから塩の棒を買いたいので仲介していただけますか。定期的に購入することになると思うので安定した供給が可能なキャラバンをお願いします。」

「承知しました。塩の棒は生活必需品扱いですので、キャラバンと契約せずに交換所で交換していただくことになっています。」


昔の日本でもそうだったが、塩は専売制があるようだ。


「わかりました・・・あとはもう一つ、今度開店する店の売り子を探しているんですが、いい人材は居ませんか?」

「人材・・・フリーの商人は登録されていませんね。さすがにキャラバンの勢力図もあるので、商人の職に着いている者はどこかのキャラバンに所属しているのが普通でしょうね。あと、お手伝いを頼むとすれば・・・そうだ。獣人のグループがキャラバンに馴染めずに困っていましたね。丁度モーグルへ塩の運搬の依頼を受けて出かけて行ったばかりです。3日後には戻ってくることになっていますから、そのときにご紹介しましょうか?」

「3日後ですね。判りました。宜しくお願いします」

「他に何かございますか?」

「今日はもう大丈夫です。それじゃまた来ます」


「塩はこれでよし、と。あとはチップ用の木材だな・・・」


空も夕暮れの色から宵闇の色に。シンジはよろづ屋に戻ることにした。



・・・

・・・・・・



そのころ、よろづ屋の屋上ではオリビアとルミが燻製を仕上げていた。


「こういう作業もなかなかに面白いですわね」

「オルさんはお姫様なのに、こういうことも上手なんですね」

「竜の街は皆が労働をしなければ生きていけない地域でしたからね。とはいっても、料理と(まつりごと)くらいしか出来ることはありませんけど」

「充分ですよ。わたし達獣人はできることも少なくて、もっぱら身体を売るくらいしかなかったですから」(労働力的な意味で)

「今はシンジ様がいらっしゃいますからね。ルミさんも安心でしょう」

「う゛。そのへんはオルさんとはライバルでもあるので複雑です・・・でも仲良くもしたいですし・・・」

「良いのではなくて? 王族は妻が何人もいるものですわ。すべての妻を平等に愛するのも夫の甲斐性ですもの。シンジ様にはそのへんも期待しませんか? 外堀を埋めればあとは本丸を落とすだけですわ」

「そ、そういう考え方もあるんですね。ルチアとミカエラ以外は皆狙っていますから、皆で共同戦線というのも・・・」

「うふふ、じゃあ早速今夜あたり共同戦線を結成して攻め込んで見ましょうか?」

「いいですね!!」


燻製は全てしまわれ、今日一晩味と香りを落ち着けるためにしまわれる。シンジが今晩どうなってしまうのかは神のみぞ知る、ということになりそうだった。



・・・

・・・・・・



こうして出来上がった保存食、魚の燻製が街角のよろづ屋で売られ始めた。半身で銅貨400枚。丸ごとは700枚で売ってみた。

クファンの目抜き通りの十字路という立地と長年閉じられていた店舗だったことも手伝って人入りはそこそこ。

1週間程度は日持ちする燻製は当初の目論見どおりキャラバンと冒険者達に飛ぶように売れたのだった。


「初日から良い出だしだね。午前中で売り切っちゃうと思わなかったよ。」

「せやな。初日という事で冷やかし半分のやつもおったけど、この売れ行きならもうちょっと仕入れをふやさなあかんなあ」

「魚の目処はついたからあとはチップ用の木だけなんだけどね。現時点は在庫が半年分くらいあるからそれまでにルート構築できればいいかな?」


いまのところ木に関する仕入先はオリビアの故郷の近くを想定している。

白銀山脈に到ることができる町はそこしか知らないからだ。今日の燻製の仕込が終わったら、明日はそこに行くつもりであった。


「アムフルスに魚の受け取りに行くけど、一緒に行く人は?」

「シンジ様。私とルミがお供しましょう。」

「浮気していないか、素行調査なのです」

「いや・・・浮気とかないし・・・昨日みたいに大挙して押しかけてきて暴れなければ別に良いけど」

「まぁまぁ、急ぎましょう、日が暮れますよ」


オリビアに促されて転移陣をくぐる。ちなみに転移陣はすこし改良が加わっている。

キャラバンの拠点同士をつなぐ魔力注入起動型に置き換えたのだ。こちらであれば魔力認証ができている者が水晶球に触れて行く先を選択することで自由に転移することができるのである。今はまだアムフルスとクファンにしかないが、今後拠点が増えればネットワークが広がるだろう。


「アムフルスにつきましたね。あら? 取引物置き場に結構な数の干物が置いてありますね」

「ああ。大漁だったらしいな。村長さんに代金を渡したらすぐに戻って仕込みをしよう。」


シンジ達はアルム村長に魚の引き取り代金を渡し、ついでに仕込みようの塩の棒の提供価格を決め、必要な量を売った。今後は塩の棒だけは魚と物々交換のレートを設定し、残りの魚について代金を支払う形に改めた。


「いやはや、塩が手に入るのは良いことです。このあたりは川のほとりですから塩がたまることが稀です。年に一度、雨季にはアリア川が氾濫しますので、そのときに運ばれた土砂が全てを覆ってしまうのです。あのナツメヤシも普通に生えていればもっと背が高いのですが、毎年の氾濫で土砂が堆積するせいで地下に埋もれた部分がけっこうあるのですよ」

「実の収穫もしやすくて良いですね。そうですか。氾濫で土砂が堆積するんですね。このあたりは砂ばかりだけど、もう少し上流なら土が溜まってる場所があるかも・・・今後の探索課題かな」


なにやらヒントを得たらしいシンジの横顔をアルム村長とオリビアが不思議そうに見つめていた。



・・・

・・・・・・



その後、アムフルスからは毎日50匹くらいの原料が供給されている。

でも、よろづ屋の販売スペースの一部、魚売りのスペースでのみの販売であり、他のスペースは「準備中」の札のみが下げられている状況だった。理由は簡単で、売り物をまだ決めていないことと、売り子の人員が圧倒的に足りないせいであった。


「そういえば、アルム村長に他にも手伝えることがあれば、って言われていたな。みんな、ちょっとアムフルスに顔を出してくるよ。」

「「いってらっしゃいませ」」

「気をつけてね」

「あ、ウチもついていくわ」


そしてシンジとルチアはアムフルスへ向かったのだった。



売り子の人員追加。

狐尻尾のもふもふ娘が店員に。なるのでしょうか。はたして。

おっさんだったら・・・or2  ムキムキのおにいさんなら・・・オッスオッス。


ということで次回もまたどうぞ。

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