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第18話 「漁村、立ち寄りました」

いつもご覧いただきありがとうございます。


燻製の生産ができるようにはなりましたが、素材の供給がまだ不安。

そこで、アリア川のほとりをちょっと探索するようですよ。


翌日。”よろづ屋”開店の準備を進めるために最後の店内飾りつけをミカエラとルミに託し、シンジとルチア、アーシェラの3人はクファンから若干離れたアリア川ほとりの集落に立ち寄っていた。目的は漁師と契約して定期的に魚を仕入れるためである。わざわざ離れたところまでやってきたのは、未契約の漁師を探したかったことと、シンジのある目的のためであった。


「ここは小ぢんまりした集落だね。集落の囲いもナツメヤシの並木だけとは、モンスターへの防衛とかどう考えているんだろうね?」

「匂いからすればここは獣人の集落ニャ。基礎の戦闘力が強いから野生動物とか弱いモンスターには負けないニャよ。」

「獣人ね・・・お。第一村人発見。こんにちわー!!!!」


突然シンジに声を掛けられてビクっとなる通りすがりの狐耳の獣人がぎこちなく会釈してくる。


「こ、こんにちわ。こんなところへ何用で?」

「ちょっと漁をいっしょにやってくれる人を探してまして。こちらにそういった人はいませんか?」

「漁? 我らも魚は捕りますが、職業にしている者はいませんね。よかったら村長のところへ案内するから、詳しいことは村長に確認してくれませんか? なんというか、その、そういう判断は自分はできないので・・・」


気さくで謙遜。うん。日本人の鏡だよアンタ。という感想を持ちつつ、シンジは村長の家を教えてもらい、そちらに向かう。集落はだいたい10軒くらいの日干しレンガの家で形作られていた。村長の家も他と変わらないつくりである。1軒あたりの大きさは結構なものがあるので、田舎の大家族が暮らす農家の母屋とった風情なのかもしれない。


「ここか。すいませーん。通りすがりの冒険者ですがー!! 村長さん!! いませんかー!!!」

「なんじゃ・・・うるさいの。お前さん達はどなたじゃな?」

「通りすがりの冒険者こと、シンジ・スエナガです!。キャラバンやってます!。歳は100さいです!」

「元気の良いわかぞ・・・100歳!? ああ、なんじゃ。ハーフエルフか。お主、ちょっとは落ち着くがええぞ。わしより年寄りなんじゃし」

「元気が若さの秘訣です!。 と、冗談はこのへんまでとして、ちょっとお願いというかなんというかがあってお伺いしました」

「なんじゃね? わしはアルムという者じゃ。この村はアムフルスというんじゃが、この村の取りまとめのようなものをやっておる。この村は川のほとりという以外なんの特徴も無い獣人の村じゃ。生えておるナツメヤシの実とアリア川の恵みを貰ってほそぼそと生活しておるだけじゃからな。」

「実は、そのアリア川の恵みについてご相談があるんですよ。ちょっとまとまった数の魚を定期的に手に入れたいのですが、クファンの近辺ではすでに他と契約済みの漁師ばかりなので、少しはなれたここのあたりで漁をしてくれる方を探しているのです」


シンジのお願いを聞き、腕を組み、困ったようにこちらを見るアルム。


「面白い話ではあるが、そもそもわしらは漁が得意な種族ではない。狐人族といって、元は狩猟を生業としていた種族なのじゃ。250年前の大戦で住む土地を追われ、散り散りになり、分かれた氏族のうちの一つがここでしがなく暮らしている。そんな歴史しかない。魚を定期的に沢山捕る術なぞ持ち合わせておらんし、魚はすぐに傷む。日差しをさえぎるものもないこんな場所では昼間の太陽ですぐにダメにしてしまうじゃろう。魚は新鮮でなければならんのじゃろう?」


アルムの言葉の中にあった250年前の出来事に少しだけショックを受けながらも、たくさん魚を撮る術と魚を保存する術については問題ない、そのやり方を話すので、と持ち掛けた。アルムは興味深そうに耳を傾ける。


「まず、一つ目の魚を捕る術ですが、これは僕のほうから道具とやりかたを提供します。難しいことはありませんので練習していただければ大丈夫でしょう。それから保存に関してですが、元々用途が保存食ですので、この場で開いて干す作業をやっていただければ、沢山太陽が降り注ぐこの環境はうってつけです。輸送についても問題ありません。秘密兵器がありますから。この作業も込みで請け負っていただければ追加で費用をお支払いいたします。」

「そうか。外貨が稼げるのであればこんなにうれしいことは無い。村を豊かにしたくてもできなかった祖霊達も満足されるだろう。」

「では、ご協力いただけますか? あと、よろしければこちらに僕らのキャラバンの出先を作らせてほしいのですが」

「まずはためし、ということで協力しよう。出先作りも構わんよ。空き家は無いから自力で作ってもらわないといけないがな。さ、協力出来る者を4、5人集めてこよう。少し待っておれ」


アルム村長が一声コーン!と鳴くと家から4人の狐人が出てきた。見れば女性ばかりのようだ。


「わしらは魚を捕るのは女の仕事としておる。男どもは防衛と狩猟が主な仕事。この時間は防衛と狩猟に男手が取られておるから、まずはこの女どもにやりかたを教えてやってくれんか」

「わかりました。皆さん、僕はアラベスクの金の風のシンジといいます。これから効率の良い魚の捕り方とそれにつかう道具の使い方をお教えしますので、宜しくお願いします。」

「「「「宜しくお願いします」」」」

「それじゃ捕り方は僕が教えるから、ルチアはアーシェラと残って村長さんと出先の場所の話、それから支払う金額について決めておいてくれるかな?」

「がってん、承知やで。」

「出先はいいけど、建物はどうするニャ? 家を借りるニャ?」

「ゲル、というのを知ってる? 移動式の住居ですぐに建てられるけどそれなりに頑丈なつくりのテントのことなんだけど。アイテムボックスに入れて持ってきてるから、それを使おうと思う。直径10m程度のものが2つあるから、置ける土地を探してくれたら良い」

「了解や。ほんま、いろいろ持っとるねぇ・・・」

「じゃあ、2時間もしたら戻るから、よろしく」


ルチアとアーシェラに頼みごとをすると、シンジは4人の狐人と一緒に連れ立ってアリア川へ向かった。



・・・

・・・・・・



アムフルス村の傍を流れるアリア川は瀬が多く川幅も広かった。投網をつかうには非常にやりやすい環境である。

まずはシンジが手本を示すと、小魚が沢山取れた。

取れた小魚はこれまた用意したビクのなかに入れた。狐人は目を輝かせてビクを覗き込んでいる。聞けばこんな簡単に魚を沢山捕ったことがないそうだ。

早くやり方を教えてほしいとせがむ4人のために、岸に戻り毛糸で出来た練習用の投網を取り出して川原で練習を始めることにした。投網は無闇に打つと魚がおびえ、場所を変えてしまうため漁場を荒らしてしまうからだ。


最初の手ほどきは尻尾の先が白くアクセントになっているミューラという狐人からだ。

「いいかい、網に繋がるロープを左手にしっかり持って、網の縁の6割を左肩に載せる。そして反対端の網の縁を右手でつかんで身体を回転させつつ右手を伸ばして網を離すんだ」


始めの1投は小さい円になった。これでは魚が沢山は入らない。


「チコ、キュール、エイアも今見せたように構えて投げてごらん」


背が低くふさふさ尻尾のチコは筋が良い。1回目にしてシンジと同じ程度の楕円を描いている。

背の高いキュールは網に絡まってしまった。

真っ白尻尾のエイアは網が一直線になってしまった。腰の回転が足りないのだろうか。


そしてシンジがアドバイスをしながら何度も練習すると皆それなりの円を描くことが出来るようになっていた。チコだけは既にプロ級で、シンジより上手いかもしれない。


「じゃあ、本物の網でやってみよう。いいかい、この漁は毎日同じ漁場でやってはいけないからね。同じ場所は5日に1度が限界と思ってね。コレだけ広いアリア川だから、場所を変えれば毎日漁が出来ると思うし。同じ場所で毎日やっちゃうとそこに魚が来なくなっちゃうから気をつけて。それと、捕りすぎても売り切れないから捕る量自体も少なめにね。」


漁の手順を説明しながらそれぞれに投網を渡す。ドロップとして溜め込んであったテンジクマダラクモの糸から作っておいたものだ。4人の狐人は教えられたとおり網を構え、それぞれが決めた瀬に対して投網を投げた。


「わあ!」

「こんなに沢山いるんだ!?」

「やった!」

「おっきい! おっきいよ!?」


歓声を上げて魚を取り込む4人。シルバートラウトの巨体が暴れる網もあれば、もう少し小型のレインボートラウトが跳ねる網もあった。その後もう1回だけ網を投げ、今日の漁は終了となった。シルバートラウトが20、レインボートラウトが40。小魚は無数だったが、明らかにハゼ科とわかる魚(カジカと呼んでいるらしい)以外は全てリリースした。根こそぎも良くないとシンジが思ったからだった。


「沢山取れましたね。普段ならこのカジカが数匹獲れれば良い方なんですよ」

「槍で突くには限界があったということなのかなー」

「槍程度の射程だと水面に映る影を見て魚が逃げちゃうからね」


喋りながらアムフルス村に着き、ゲルを構築し終わったルチア達が立ち話に興じているのが見えてきた。


「ただいまー。大漁だったよ? 魚はこれから実演を兼ねて捌いて処理をするから、準備してくれるかな? そうだ、ミューラ。アルムさんを呼んできてくれるかな?」

「分かりました! じゃあ魚はこちらに置いておきますね」

「ああ。チコたちはどうする? 魚を捌くのを見ておくかい?」

「役に立ちそうだから見ておきます!! キュールもエイアも見るよね!?」

「「うん♪」」


好奇心が旺盛なのはよろしいことで。

村もそんなに広くないのでミューラがアルム村長を連れて戻り、ついでに捌き方を知りたいらしいご婦人方も数名集まってきた。

場所を少し移動し、アリア川から引水しているナツメヤシ用の用水で実演をすることになっている。

シンジがこれから披露するのは一夜干しと呼ばれる手法と、塩漬けと呼ばれる手法、それからオイル漬けの3つである。


「じゃあ、まずは魚の捌き方からです。小型のレインボートラウトと同じタイプの魚は開きにすることで持ち運びもしやすくなりますし、なにより乾燥が速くなります。こうしてナイフを腹の下から入れて内臓を取り出したら、背中側を切りはずさないように刃物を入れて2枚におろします。小型なので頭もこうして二つに切ると綺麗に開けます。これが”開き”です。」


ちなみに、魚を切りやすい出刃包丁は既に配ってあった。レア武器の”ほうちょう”である。何故かコレを装備して料理技能を使うと1ランク上の料理が出来上がるため、ものづくり大好きなシンジは過剰精錬目的で結構な数を所有し、そのまま死蔵していたのだ。

そして、集まった奥様方はそれなりに刃物の扱いには慣れているようで、すいすい開きにしていく。


「シルバートラウトは3枚におろしてしまうか、はらわた・エラだけをはずして下処理をしましょう。切り方によってそのあとの処理が違うので、そこまで含めて覚えてくださいね」


シルバートラウトは半分が3枚おろしに、半分がはらわたを除いただけの処理となった。レインボートラウトははらわたを除いただけの処理が10、残りは開きと3枚おろしで半々といったところだ。


「では次に下処理した魚を塩水で一旦洗います。桶に塩水を作ってよく洗います。洗い終わったら一夜干しの魚は干し台の上に並べましょう。裏も表もよく陽に当てて乾燥させます。はらわたを取り除いただけの魚の場合はエラの穴に紐を通して吊るして干します。塩漬けのほうは少し干して水気をある程度飛ばした後に樽に塩と魚で交互に詰めていきます。三枚おろし、開きの魚が最適です。カジカでもはらわたを除けば大丈夫でしょう。最後に重石を載せたら仕込み完了です。1週間も日陰で保存すれば良い感じになるでしょう。オイル漬けは一旦魚をゆでた後、水気を切って樽につめ、オイルをそこに満たします。この場合は三枚におろした魚が最適です。せっかくナツメヤシがあるのでその油で漬けると良いと思います」


塩水の濃度の目安や魚の樽への詰め方など、実演しながら教えるシンジ。随時質問なども飛んでいる。


「塩はなんでも良いのですか?」

「ええ。何の塩でも構いませんが、味の決め手になるので雑味が強いものだと出来上がりがおいしくないかもしれません。暫くは材料ということで僕が提供しましょう」

「日陰は地下室でも大丈夫ですか?」

「できるだけ風通しが良いところでお願いします。風通しが確保できるなら地下室でも構いません。ただ・・・魚くさくなりますからそこは要注意です」


村の一角。そこには魚が沢山ぶら下がったり並べられたりした魚くさい場所になっていた。風通しが良いので淀んだりはしていないが、そのうち猫とかが集まってきそうな雰囲気だ。

村の狐人達もニコニコしている。思わぬ外貨獲得の手段が得られたからだ。単純に食材としても増量が見込めるのでそのうれしさもあるのかもしれない。

ちなみに今日はこのまま歓迎の宴を開催してくれることになっている。村に恵みを(もたら)してくれた客人へのお礼も兼ねているらしい。


「生産量はなかなかやねぇ。カジカは村で消費しちゃうらしいから今回の商品化としては見送りやな・・・」

「拠点も出来たことだし、おいらもルチアと一緒に少しゲルの中で休ませて貰うニャ。転移陣の設置も終わってるから、自由に行き来できるニャ。」

「僕も少し横になろうかな。宴も暗くなってから開始ということだし。」


こうしてシンジ達はふかふかの絨毯を敷き、風通しをよくするために裾をあげたゲルの中、砂漠の日陰の心地よいまどろみの中に落ちて行ったのだった。



・・・

・・・・・・



ゆさゆさ。揺り起こされる感覚。目を開ければそこにチコのどアップの顔があった。


「のわぁ!!!」

「うわぁ!!!」


シンジはチコのどアップにびっくり。チコは驚かれて大声を上げられたことにびっくり。コントのようなことになってしまった。

どうやらチコが起こしにきてくれたらしい。ふと見ればルチアもアーシェラもまだ夢の中のようだ。

まだどきどき鳴る胸をなだめつつ、チコに謝るシンジ。


「ああ、ごめん。ちょっとびっくりしちゃって。起こしにきてくれてありがとう」

「ううん。村長に起こしてくるように言われただけだから。準備が出来たら広場にきてね。宴の準備はもう終わってるから」

「ありがとう。二人を起こしたら向かうよ」


ルチアとアーシェラを起こし、広場に向かう。ほのかに魚のにおいがするのは順調に乾燥が進んでいるからだろう。

広場にはちょっとした桟敷が設置されていて、食事が並んでいた。カジカの煮つけとなにかの麺類が入ったスープ。

他にはナツメヤシのお酒など、地元の食材を生かした料理だった。


「ささ、シンジ殿。召し上がってください。金品を持たない我らのささやかなお礼です。」

「こんなに豪勢にしていただいてありがとうございます。まだこれから始まったばかりですから、一緒にしっかりやっていきましょう。」

「それから・・・漁以外でもなにか手伝えることがあればおっしゃってほしいのです。人手はあるのですが、仕事のほうがあまりありませんで。今回の投網のような道具を使うことでまたなにか産業が興るならばこれほど嬉しい事はありません。最近はモンスターの被害も酷くなるばかりですから、村の囲いも強いものにしたいと思っております。そのためにもお金が必要なのです」


シンジは迷っていた。おそらく技術を伝承すれば出来ることはもっと沢山あるだろう。しかし、材料の調達ルートや売る先などが確立していなければそれもまた意味を成さない。昔、旅行家と言い張っていたVRMMOの商人がこういっていた。「交流が生まれるところに産業が生まれる。閉塞した文化は滅びに向かうものだ」と。点と点を結び線を成す。その線が多く交わればそれは絵画となる。良い絵画はすなわち優れた文化なのだと。


「わかりました・・・が、今、この村で出来ることはこれが限界です。これ以上なにかをするには他の町との交流が必須です。クファンがなぜ栄えているか。それは交流する人々が描く軌跡が数多く集まるからです。幸いこの村にも魚とその加工という特産が生まれました。僕たちはこれを独占したりはしません。是非いろんな人々との交流のために役立ててください。そうすればこの村は発展し、強い防壁もいろんな仕事も生まれていくことでしょう」

「そういっていただけるとありがたい。ささ、もっとお飲みください。ナツメヤシ酒はまだまだありますぞ・・・・」


こうして夜は更けていくのだった。



今回はちょっと早めの更新。

一旦ストック切れですので、続きはもうちょっと気長にお待ちください。

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