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第1話 「出会っちゃいました。」

主人公シンジがパーティを組むきっかけになった出会いの場面です。

ヒロイン2名、ハイエルフのミカエラさんと獣人奴隷のルミちゃんの登場シーンです。

VRMMOアラベスクの世界にシンジが”降り立って”1年が過ぎた。

降り立った直後はゲームの続きと思っていたものだがログアウトアイコンがどこにも見つからない。

そして普段は手ごたえがあるはずの現実世界の身体の感触がまったくない。


戻りたい、戻れない。


戻るための方策を探しながらの1年。孤独にその方法を探してきたけれど、この世界で仲間を作って生活の場として生きていくのもそう悪いものでもないなと思い始めていた。

レベルはすでにカンストだったけど、ここにあるのはただレベル上げの毎日ではなく、匂いも味もある本物の日常があった。


シンジがいままでやっていたゲームと違う、この世界で経験した日々の糧と睡眠。

それは人として生きるためには必要で、ゲームの要素としては切り捨てられた生活だった。


シンジがそんな事を考えながら街道を進んでいると前方から戦いの音が聞こえてきた。

砂漠の縁を走る街道。そこでは善意だけでなく悪意もおなじ道で旅をする。

小さな大八車が何者かに襲われているようだ。どうやら女の子2人が4人の男に襲われているらしい。


「多勢に無勢。ましてや女の子対野郎ども、ときたら女の子の味方になるしかないよね」


前に出て戦っているのはスラリと背が高い女性。背後に獣耳を生やした少女を守っているようだ。


対する男たちは偉そうなデブが一人とあとは武装を固めた男たちだ。

ゲームのイベントにでてきた山賊の格好をしているような気もする。


「ちょっとまったぁ! いたいけな獣耳女の子と綺麗な女性をよってたかって、なんてけしからん!」」


そのままいつでも割り込める位置に駆け込む。


「なんだお前は! 邪魔するなら一緒に切り捨てるぞ!!」


男どもから罵声が飛んでくる。

男達に警戒しながら背が高い女性に守られている少女を見るとその手には枷がはめられていた。

ゲームでは悪の組織が誘拐して奴隷組織に売るイベントがあったけど、同じようなイベントなのかもしれない。

男たちをサーチしてみてもレベル100程度。雑魚だろう。


「どうも。通りすがりの正義の味方です。」


「どうやら邪魔者のようだな、お前たち、あの女と一緒にやっちまえ!」


いきり立つデブを横目に、背の高い女性の様子も探ってみる。


(【サーチ】・・・ハイエルフのようだ。 年齢は・・・280歳!? ま、まあエルフだしな。 職業は自由人・・・なんだそりゃ。・・・レベルが200か。 この場はこのねーちゃんだけで余裕勝ちじゃないの・・・?)


「加勢してくれるのかい? 恩に着るよ! この子のことを見ていてくれたらさっさと終わらせちゃうからさ!」


「わかった。 守りは任せてくれ!」


(女の子に守られるのは柄じゃないけど、こっちの偽装レベルよりも向こうの方がかなり上だし、やる気満々だから止めようもないな。)


「さて、わん子ちゃん。おとなしく待っていようかね。【サークルプロテクション】!」


【サークルプロテクション】は半径5mにバリアを張るスキルである。術者のレベルとHPに応じた防御力を持つ。

シンジが展開するとこの場のザコには手も足も出なくなってしまう。


(おねーさんのお手並み拝見といったところか。)


「賊だけが相手だったら手加減は無用で、爆風も気にしなくて良さそうね」


「手加減? 女の細腕でなにをふざけた事を言ってる? あの男もたいした事ないな!威勢よく割り込んできたくせにこんな細腕の女のうしろにかくれちまうとはなぁ!」


相手を見下す目。完全に有利だと思い込んでいる表情。背後の男たちも、下衆なだらしない笑みを浮かべている。


(うん、賊のやつら、バカ面晒して実力がぜんぜん見えてないな、あれは)


「ねえ、おにいちゃん。わたしはいいからお姉ちゃんを守ってあげないの?」


(この子は、と【サーチ】・・・50レベル。仕方ないよな。自分よりレベルの高い人間の数値は見えないからな)


「大丈夫さ。あのお姉さん、めちゃくちゃ強いぞ?」


「空を旅する星々の忘れ形見を地に落とさん【メテオライト】」


エルフがスキルを唱えた瞬間。輝く流星が一筋、男たちに向かって落ちてゆく。

範囲魔法【メテオライト】だ。効果は一定範囲に火属性+土属性+風属性ダメージを与えるもので、ゲーム内では流星が落下するエフェクトが発生していた。


「メテオだと!?」


落下に伴うあまり暴風にそうつぶやくのが精一杯だったのだろう。

次の瞬間吹き荒れる爆風と炎、轟音の狂宴。シンジが展開したフィールドに砂やら石やらがばしばし当たる音も聞こえる。


(ゲームじゃないから範囲魔法になると自分以外敵味方無差別だからなぁ。この威力では・・・おっさん達は跡形も残らないな)


爆風が収まるとそこには直径10m程度のあさいクレーターが残るだけだった。

爆心地にあったものはみな、粉みじんに吹き飛んでしまったらしい。

デブは離れていたおかげでなんとか助かったようだが、馬車ごと吹き飛ばされて地面に転がっている。

おそらく気絶しているものと思われた。


「拘束せよ【荒地の蔦】」


エルフが手早くデブを拘束すると尋問タイムのはじまりだ。


「さて、威勢よく吹き飛んだ訳だけど。 何が目的で突然襲ってきたのかしら? あと、あの女の子の手枷はなあに? 正直に答えないと・・・粉みじんでは済まなくてよ?」


デブはガクガクブルブルと震えだした。


「お、俺たちはただ人を輸送していただけだ! そ、そう、貴族に奴隷を運べと言われてな。途中で綺麗な女を見つけたらそれも運べと屈強な男たちを貸し付けられただけなんだ。悪いのは貴族で、俺たちじゃない!」


エルフの周囲の気温がどんどん下がっていくように感じられる。

目線で人が殺せたらいいのにって表情だ。


「言い分はそれだけね。奴隷は犯罪じゃないけど。誘拐は犯罪よ。しかも貴族の手下ということは捕まえたってすぐに手が回って助かっちゃうわけよね。そんでもって以下繰り返し。円環って断ち切ればそこで終れると思わない?」


デブのガクブルは既に最高潮に達している。


「やっぱりそれ相応の時間、反省してもらわないとね?」


デブは激しく首を左右に振る。ガクブルの縦ゆれに首振りの横揺れ。もはや声もでないようだ。


「暗き牢獄の門よ開け【次元牢獄】」


スキルをつぶやくと同時に何処からともなく出現する牢獄の門。がこん。と音を立てて扉が開く。

デブはそこに蹴り込まれた。牢獄に蹴り込まれるのと同時に【荒地の蔦】が消滅してゆく。


「牢獄の門が閉まると次に開くのは5日後よ。運がよければどこかの街の傍で開放されるかもしれないけど、何処に出現するかはわからないの。飢えと孤独をを罰に与えるわ。しっかり反省しなさい。そうそう。あなたの顔・姿は罪状と一緒に全部のギルドにしっかり報告しておくから。運よく戻れても・・・まじめに生きることね。」


牢の扉が閉まる。そのまま地響きを立てて地面に埋もれていく。涙目のデブを閉じ込めたまま。

【次元牢獄】は雑魚敵排除のスキル。BOSSの取巻きを一時的に排除して狩をしやすくするためのスキルだったはずだ。


「さて、こっちは終了。お手伝いありがとう、正義の味方さん?」


ことが終わり、こちらを向く整った顔立ち。赤いバンダナを巻いた銀糸の長い髪の毛が印象的なエルフだ。


「おせっかいだったようで。僕はシンジ。流しの冒険者さ」


「あたしはミカエラ。守りを固めて相手の気をそらせてもらえたから戦いやすかったわ。一応身元確認の意味もこめてあなたのこともサーチさせてもらうわね。【サーチ】」


シンジの装備品、ごまかしの腕輪は【サーチ】に反応し、嘘の情報を認識させる効果がある。

主に対人戦で相手を出し抜くためのスパイスとして導入された一品だ。

やたら高価だったので誰でも持っているわけではないが、このアイテムを装備していると、レベルと種族を完全にごまかせる。


「150レベルのハーフエルフ。出身が無いのは、流れ者ということね。職業は冒険者。登録ギルドはアンキアか。ずいぶん都会で登録したものね。あたしは200レベルの魔法剣士。種族はハイエルフね」


「おねえちゃん、おにいちゃん、ありがとうございました」


話し合っていたシンジとミカエラに捕まっていた獣人の女の子がお礼を言ってきた。


「ルミと言います。白狼族の獣人で、16になったばかりです。 一族が困窮してしまったので仕方なくわたしが身売りされることになって、運ばれている最中でした」


この女の子は誘拐されたわけではなかったのだろうか? シンジは正式な奴隷であれば持たされるものだ、と女の子が示した登録証を確認した。

それはルミがしている首輪にぶら下がった一枚の小さなプレート。


シンジが確認のための魔力を籠めると登録された内容が浮かび上がってきた。

”ルミ、150レベル、獣人、♀、奴隷登録No.43989128、所有者【    】”

このプレート自体はこの世界の全員が持っている。身分証明のために各所で発行されているためだ。

関所であればこの証明書で身元確認をするが、冒険者は簡易版のサーチで済ませる場合が多い。


「あれ。レベルが違うみたいだけど?」


「はい。今は足枷の腕輪のせいでレベルが100落ちた状態になっているのです」


シンジがこちらの世界にきてから、ゲームにはなかったことや、先ほどのメテオライトのようにエフェクトだけでなく、実際の事象が伴って魔法が発動する状況をよく目にする。

おそらく、現実世界となったここは日々進化していたり、現実に即した事象に変わってきているのだろう。


「そうかそうか。僕と同じ150ね。所有者が空欄になってるってことは雇い主が確定する前に誘拐されちゃったということか。それならさっきのおっさんたちの状況も納得できる」


「えと、ルカンドに居るわたしの家族が心配なのです。わたしが居なくなって、家にお金が入らず、税金が払えなくなって、さらに妹達奴隷を出すようなことは避けたいのです」


横からミカエラが口を出す。


「こういうのを”乗りかかった船”って言うんだっけ。 正義の味方さんはきっと助けにいくわよね?」


(なにか見透かされている気がするが・・・このままってのも本人も含めて寝覚めが悪い。幸いルカンドはこれから向かう目的地だ。まさにミカエラの言うとおりの乗りかかった船・・・)

 

「そうだね。ここで助けなかったら何のための正義の味方ってことだね」


そしてシンジ達はルカンドに向けて歩き始めたのだった。

奴隷制度は職業のひとつとして設定しました。

手軽に現金を得る手段であり、犯罪を犯したものの強制労働のための職業でもあります。

生き抜くのが厳しいこの世界では簡単に軽犯罪者を殺していくとそのうち労働力が枯渇するので、刑罰が死刑でなく奴隷制度に姿を変えました。凶悪犯の場合は相変わらず死刑も残っていますが。

それと、人頭税が重いので、それを何とかする手段としての位置づけもあります。

この世界の田舎の子沢山は死亡率が高いから、だけではなかったということです。

それでもイベントが起きて街が魔物に蹂躙されると莫大な人間が死滅するわけですが。

世界のバランス的にも増えすぎたら壊滅。某ポ○ュラスというTVゲームではプレイヤーがその立場でしたね。。。

神もバランス調整が大変なのかもしれませんね。


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