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第16話 「屋敷、掃除中です②」

いつもご覧いただきありがとうございます。

屋敷の改造は続きます。ではどうぞ。

シンジの屋敷の掃除と改造は続いていた。

一区切りのため、と訪れた二階のリビングには新しく購入した絨毯が敷かれ、掃除を一通り終えた皆は、それぞれ居心地良さそうに寛いでいる。拠点が出来るということは非常に良いことだ。


「あ、シンジ様、お帰りなさい。作業はいかがでしたか」

「うん、キッチンの改装までは無事に終了したよ。ルミ達もお疲れ様。ルチアに聞いたけど、売り物もだいたい決まったみたいだね」

「そうなんです。でも、他にも考えないといけないことがあって、飾り棚とか販売員の数とか・・・」

「なるほど。そのあたりは一旦キャラバン登録が終わってから人員とかも含めて考え直そう。今はとりあえず掃除を済ませてしまって、明日キャラバン登録をやって、そのあと人員を含めて一緒に考えようか。」

「それで、売り物なんですけど、食料品を扱うお店にしようと思うんです」

「うん、ルチアにも聞いたよ。実は・・・転移魔法が使用可能なマジックワンドがあってね。一度旅先として訪れた街には転移が可能なんだ。クファンはそこそこ大きい街だし各地から直送で食料品を仕入れられたら良い儲けになるよね!」


実際はシンジが一緒に居る限りは転移魔法は自分のスキルを使うつもりであったりする。マジックワンドもあるにはあるが、連続した使用回数が限られるし、チャージにもそれなりに時間がかかる。


「そ、そうなんですか・・・キッチンも広いし干物も作れるしで単に食料品の製造・販売がやりやすいな、と思っただけなんですけど・・・」

「なるほど。そうと決まればディスプレイ用の販売台だけど・・・丁度手持ちに魚屋セットと八百屋セットと肉屋セットがコレクションにあるから、それぞれ売り場に並べようか。たしか販売スペースのサイズ的に3つ並べるとぴったりだった筈。」


休憩もそこそこにシンジは売り場スペースに降りていくとアイテムボックスから販売台シリーズを取り出して並べていく。フレームを見る限りやはりぴったりに収まりそうだ。

ちなみに。魚屋セットは簡易な冷却用魔道具が付属した魚を並べられる販売台と天秤秤、持ち帰りの魚を包む紙袋(ご丁寧に新聞紙だ!)がたっぷり据え付けられた販売台である。肉屋セットはショーケースに肉を入れておけるタイプの奥行きがあまり無い販売台である。こちらも天秤秤と紙袋が付属している。最後に野菜屋セットは魚屋セットの冷却機能無しバージョンである。天秤秤そして紙袋と麻縄、麻袋がセットになっている。これら販売台をコの字型に並べることで販売スペースに余裕がありながらも”らしい”店構えが出来上がったことになる。


「あとは窓を塞いでいる外壁を撤去しないといけないけど、これはお店の準備が終わって、商業ギルドの開店許可を得てからやろう。窓ガラスも損傷はないし、これであとは商品が入れば販売準備OKだね」


「そういえば地下室はどうされるんですか? 1階の居間のど真ん中に扉を開けたままですけど」


昔の応接室の改装はは事務用、ということで一時保留のままにしてあったのだった。


「階段の場所的に移動は難しいから、大き目の書斎机を真ん中に据えて、入り口側にすぐ開けられるドアを付けた隠し階段つきの事務机にしよう。背後に書類棚を据え付けてそれっぽく見せて、と。アイテムボックスオープン!」


シンジの家具コレクションから無駄に大きい事務机が出てくる。入り口をそれで覆うように隠すと、椅子を入れる側が丁度入り口のような按配になった。

さらに書棚を並べていく。まだ何も置くべきものがない、と思っていたら百科事典やら変に分厚い辞書など、どこから手に入れたか謎のアイテムが並べられていく。


「シンジ様、それは何の本なのですか? 材質もパピルスではないようですが・・・」

「お。ルミはわりと博識なんだね。これは辞典。多分300年位前のこの世のことが纏められているはず。読んだことが無いからしらないけど。材質は魔法で生み出された紙、らしい。基本、骨董品程度の価値しかない本だよ」

「これだけ揃ってれば少なくともこけおどし位にはなると思うで。シンジはんにしてはええセンスやな?」

「ほめないで。照れる。」

「いやいや。普段のセンスを疑っとるだけやから。気にせんでええで?」

「・・・弄りに拍車がかかってきた気がするのは気のせいだろうか・・・」


事務所の飾り付けが終わったらいよいよ地下室に降りていく。【ライト】のスキル呪文を唱え、当座の明かりにしておく。


「そういえば転移陣だけ設置したんでしたね。他はどうされるんですか。工房、とおっしゃっていましたけど。」

「まずはさっき外に設置した煙突装置を繋ぎこんで換気をしっかり取ろう。」


屋敷の壁面にそって取り付けた煙突用のダクトがここまで降りているらしく、部屋の片隅に2本のダクトが設置されていた。【増築】で埋め込んだのだろう。


「これをそれぞれ、吸気・排気で接続すればいつでも新鮮な空気が確保できるというわけさ。これを部屋の四隅それぞれに設置できるようにしているから、さっさと済ませちゃうね」


部屋の四隅でシンジがごそごそ。換気扇装置も地下にしまいこんで、外からは煙突が出ているだけに見せかけるつもりのようだった。


「換気の設置が終わったら次は錬金台の設置だね。これはキッチンの下辺りに設置して、竈の排気と接続しなくちゃ。【増築】!」


アイテムボックスから出てくる巨大な設備。巨大な竈を中心に、薬品を煮炊きする大釜、そして金属を鍛えるのだろう金床。試験管が並ぶ机もくっついている。


「水道も引き込んで接続して、排水も接続・・・【増築】と。」


瞬く間に地下の半分が謎の錬金工房に早変わりしてしまった。当然、付いてきた面々は唖然である。


「のこった半分の面積は資材とか製品の置き場にしよう。転移陣からの搬入出もあるし。さて、工房の改装はこれで終わり。 あ。 そういえば、皆は錬金術とか使えないよね?」


「使えるわけ無いでしょ。地下がごそごそうるさいから来てみれば・・・シンジはこの工房でホムンクルスでも生み出すつもりなの・・・?」


階段から降りてきたミカエラが呆れたように地下室を見回している。


「まぁ、設置しただけで何をするかとかはまったく何にも考えてないよ。まだいろんなところに行けてないし、拠点は拠点らしく謎の部屋とか欲しかったし?」

「シンジはん・・・この工房で生産したものは売らへんからね・・・アシがついたら大事(おおごと)になりそうな予感しかせぇへんわ・・・」


その後全員で地下室を見学した一行だが、シンジ以外はルチアのこの言葉に大いに賛成したのだった。



・・・

・・・・・・



屋敷の整備を終え、書類を持ってギルドでキャラバン登録をする。


【キャラバン名:アラベスクの金の風】

【登録メンバー】

 リーダー:シンジ・スエナガ

 メンバー:ミカエラ・アルマイル

      ルミ・ルス

      ルチア・アルテット

      アーシェラ・ガフ

      オリビア・オルトリンデ

【拠点住所】

 交易都市クファン 目抜き通り4番十字路北東1番地


いたって簡単な登録内容。さらにここにランクが格付けされるのだが、それは預託金の額と実績によって左右されるらしい。シンジ達はとりあえず最低ランクの登録になる。

預託金もあまり大げさなことはできないため、当座は金貨10枚を納めた。


「”アラベスクの金の風”ですか・・・はい、預託金も頂きましたのでこれでキャラバン登録はおしまいです。皆さんは拠点も馬車もお持ちなので、すぐにでも交易が可能ですが、まずは拠点にお店を開けられるとのことでしたから、出店許可証と側壁の撤去を実施させていただきます。明日の午後には業者が撤去に伺いますので、宜しくおねがいします。許可証はこちらです。お店の中で見えるところに張り出してください。」

「ありがとうございます。では、失礼します」


ギルドから外に出て、じんわりとした実感がシンジを包んでいた。

お店とか開いてみたかった。

キャラバンで仲間と楽しい旅をしてみたかった。

家族のような仲間と一緒に過ごしたかった。

元々VRMMOを始めた根本の理由だった。そして今それが実現していく。ゲームの中では、非現実の思いが強いこともあってつい、機械的な金儲け一辺倒、偏執的なアイテムコレクションへの没頭、ということに終始してしまっていた。NPCだって決まりきった台詞しかしゃべらなかった。いま、ようやく夢のスタートラインに立てた気がしていた。


「よし・・・。じゃあ今日という日を始めようか。」

「え? なんですか? シンジ様?」

「なにかあったの? シンジ。目から汗が流れてるけど・・・」

「何処か痛い所でも? すぐに治癒いたしますよ?」


いつの間にか滂沱と涙を流していたシンジだった。そう、いまシンジの新たな一歩が始まったのだ。


「大丈夫、ちょっと感動をしていただけだから。さて、じゃあ何から始めようか」

「まずは魚だニャ。売り物を準備しなきゃはじまらないニャ?」

「せやな、アーシェラ。ちょっと市場とかをみてみぃひん? シンジはん、うちらでちょっと探してくるさかい、先に屋敷へ戻っておいてな!」

「・・・気を使わせちゃったかな・・・」


穏やかな夕暮れ。優しい時間が過ぎていったのだった。



・・・

・・・・・・


-商業ギルドにて-


ギルドマスターの執務室。壮年の女性が机に積まれた書類に目を通している。傍らに立つのはシンジ達が手続きをしてもらった受付嬢である。


「ギルドマスター。少々ご報告が」

「なんだね。なにか問題でも起きたか?」


ギルドマスターは書類から目をはずさず、話を促す。


「問題・・・まで到ってはおりませんが、本日のキャラバン承認のレポートの中で気になる名前を発見しまして」

「ほう? 犯罪者でも紛れ込んでいたかね?」

「いいえ。今ではもう伝説のキャラバン、”アラベスクの金の風”という登録名でキャラバンを登録申請してきた者たちがおりました。」


書類から目線をはずし、受付嬢に目線を向けるギルドマスター。


「ほう。はるか昔”国興し”を成し遂げた伝説のキャラバンの名前だな? 名にあやかってのゲン担ぎじゃないのかね。よくあるだろう? まぁ、名前負けを恐れて殆どの商人はその名を避けるだろうが」

「登録名だけなら私のそう判断したのですが、登録リーダーの名前にまた問題がありまして」

「リーダーの名前?」

「ええ。”国興し”の主要幹部の中にその名を残す、”/極めたるスキルマスター”シンジ・スエナガと同姓同名での登録が成されております。冒険者カードでのチェックも行われておりますので、本名なのは間違いはありません」

「しかし・・・250年も前の伝説だぞ? 単なる偶然ではないのか?」

「もしかしたらそうなのかも知れません。しかし登録者がハーフエルフであることを加味するともしかするかも知れませんので・・・」

「わかった。暫くは動向に注意しておくように。本物であれば・・・この危機に大きな助力となってくれるだろう」

「承知いたしました」


退出する受付嬢を見送り、書類に目線を戻しながらギルドマスターはつぶやく。


「本物か偽者か。今は些細なことだな。キャラバンとして役に立ってくれるなら、どこの馬の骨であろうと今は気にしない程度には切迫しているからな・・・」


ギルドマスターの手元の書類。そこには昨今の魔物の強化、強力なダンジョンの出現。世界が変わろうとしているようなそんな報告がびっしりと書かれ、総括として次の報告がなされていた。


大海嘯(だいかいしょう)の前触れ・・・実に200年ぶりの大戦がまた始まるのか・・・」


悄然と肩をおとし、ギルドに登録された人員から実力者をピックアップ、フォーメーション、布陣、補給路。ギルドマスターの頭の中でいろいろなことが高速回転を始めていた。

地下室さんの本気はもう少し先で。

不穏な空気も漂ってきましたが、シンジ達は何処吹く風。

次回は釣りに行ったりする予定です。

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