第14話 「屋敷、買います」
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活動拠点を作るため、シンジ達は屋敷の下見に行くことになりましたがさて?
クファンの中央を貫く目抜き通り。その終端に近い十字路の北東の角。北東の角は日本的に言えば鬼門の方角であり、魔が入り込む隙間であるという。そのため、日本では鬼門にあたる場所に守護像を置いて祭ったり、風水などでその方向に縁起の良いもの・色を置いて魔を遠ざけようとする風習があったりする。異世界ではそういった風習は聞いた事は無く、外見にはそこにはなにもおかれていなかった。しかし、裏庭を過ぎて行き着いた屋敷の裏口から入ろうと裏口の扉を見ればそこに大きな魔除け札が貼ってあったのだった。
「魔除けの方陣が書かれた札ですわね。魔力は・・・もう残っていないようですけれど」
オリビアが一見で状況を見抜く。
「ふむ。もう効力は切れていたのか。まぁ、ここ数年はなんの噂も聞いていないし、何も問題はないだろう。とりあえず中へどうぞ」
係員のおじさん-ボルドスと名乗った-が鍵を開けてシンジ、ミカエラ、オリビアを中に案内する。
「まず、ここが物置と食材置き場を兼ねた土間だ。ダイニングキッチンの裏側の作業スペースにもなっているからかなり広いだろう? 8畳くらいはあるんだ」
驚いたことに異世界の建物の広さの単位は畳で通じる。敷物の大きさで広さを測ったところからきているそうだ。畳も無いのに畳と絨毯の基準サイズが同じということで変なところで共通点があるのは面白い。
「そしてこの土間にはダイニングキッチンへの扉と本宅への扉がある。あそことあそこだ。この図面を見てもらいたいのだが、屋敷の間取りとしては土間を除く1階部分が3LDK。部屋はそれぞれ30畳の販売スペース、8畳の事務所スペース、16畳のストック、10畳の接待用リビング、8畳のダイニングキッチン。階段は事務所スペースに据え付けてあって、2階は11部屋あって、18畳の大広間と6畳間が10個ある。」
「広いな・・・果てしなく。でもまあ、一人1部屋くらいは欲しいなと思っていたから丁度いいか」
「じゃあダイニングキッチンと土間以外も見ていこう」
ちなみにダイニングキッチンは竈が3個据え付けられた立派な空間だった。流しもしっかりしており、排水は外の下水に流す仕組みらしい。水は備え付けの水瓶にためて使うように作られているとの事だった。
「・・・キッチンはあとで魔改造しよう・・・」
ぼそりとシンジ。なにやらたくらんでいるようだ。
次に入った事務所には仕事机と書類棚が埃をかぶって鎮座していた。掃除をすれば充分使えるだろう。ちょっとした社長室みたいで掃除した後に椅子に座ると偉くなった気分が味わえそうだ。
そして販売スペースとストックは繋がっていて、ここは石張りのタイルになっていた。陳列棚はなく、ただ単にだだっ広い空間が広がる。部屋を繋ぐドアは3つあり、ドアははずされて立てかけられていた。
「ドアは引き戸にもできそうだ。使いやすいようにあとで改造するのも良いだろうね」
そしてやって来た接待用リビングはめちゃめちゃに荒れていた。綺麗であったろう絨毯はなにかが盛大にぶちまけられたようなシミになっているし、調度品も壊れているものが殆ど。ソファに至ってはびりびりに破けていた。これまでが小奇麗な部屋だっただけに違和感がある。
「どうしてここだけ曰くありげに荒れているんでしょう。ソファとかはもう捨てるしかない状況のようだし」
「うむ。実はオバケ騒ぎはここで起きたとされている。ちなみにシミはインクだよ。血とかじゃないから安心してくれ。」
「・・・ここは少しだけ魔力反応がありますね。残り香というかそんな感じです」
「オリビア、魔力以外にはなにも感じないかい?」
「アンデッド反応もないですし、オバケ関係だけで言えばとくに何もなさそうです」
「ふむ。じゃあ、2階を案内していただいてもいいですか?」
「わかった」
一つしかない階段を上がる。
(階段一つだけは不便だな。どこかにもう一つ付けよう)
2階は売り場スペースとストックの上あたりに大広間を設え、その他の部屋は十字路を通路として並んでいるようだった。部屋の中は何も置かれておらず、殺風景。6畳間の間取りはほぼ全部同じような雰囲気であった。
「二階はなにも調度品がないね。買うか・・・コレクションから出して設置するか・・・だね」
「そういえば、コレクションはいろいろあるって言ってたね、シンジ。」
「シンジ様のコレクション?」
「なにか面白いものを持っていそうよね・・・シンジは」
「まぁ、購入が決まったらご覧に入れますよ」
シンジの夢は広がる。一通り部屋を回った一行はリビングに戻る。
「うん、特に問題はなさそうだ。絨毯とかは入れ替えれば大丈夫だし、調度品もなんとかできる。おいちゃん、この物件っておいくらなの?」
「気に入っていただいて何よりです。値段はギルドに戻って書類を一緒に見ながらお話しましょう」
・・・
・・・・・・
「では、こちらが書類となります。まず、土地ですが、基本は税金を含めた賃借となります。購入するには貴族の地位が必要なので、お客様には無理ですね。賃借料は年間金貨1枚となります。建物のほうは古いこともありますので大銀貨1枚で結構です。」
「・・・格安なのか判断に困る金額だね・・・」
そこへギルドの訓練が終わったらしいルチアが合流してきた。
「どんな按配や・・・?」
「賃貸料が年間金貨1枚で建物の代金が大銀貨1枚だそうだ。裏庭が40畳ほどあって、屋敷の建坪は90畳くらいの空間に、こんな風な部屋配置だよ」
「ふむ。図面のとおりとすれば・・・ウチの憧れだった大店とほぼ同じ規模やね。ちなみにそこの土地代は年間金貨5枚やったで? 都市はちがかったけど。建物も金貨数枚はかかっているというとったし、土地柄も勘案するとかなり安いんとちがうかなあ?」
「土地代1/5なら安いほうなのかな。建物もしっかりしてたし、設備についても下水もあったし上水だけ気にすれば何もいらなさそうだ」
「ではご契約手続きですが、斡旋代が銀貨30枚かかります。届出手続きの代理料金も含めております。工事業者はご紹介できますし、家具屋もご紹介できます。必要に応じてお申し付けください」
シンジは金貨1枚と銀貨280枚を係員に渡し、書類の手続きも終わらせた。屋敷のマスターキーを受け取ると、これでとりあえずの拠点は入手できたことになる。シンジはそのままギルドを後にすると、改めて下見でもするのか購入した屋敷へと向かっていた。
「よし、早速屋敷の整備を始めようか!」
「あの、シンジ様。大工もなにも手配していませんが・・・とりあえず掃除をするということでしょうか?」
「オル、取り敢えず屋敷へ行ったら判るよ。ルチアもちょっと手伝ってくれるか?」
「ええけど・・・何を手伝うん?」
「調度品のセンスとかさ」
「「???」」
そして昼下がり。屋敷の大掃除が始まる。
家具のセンスってほんと人によりますよね。
次回はシンジの玩具箱がひっくり返される予定です。何が出てくるんでしょう?




