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第13話 「拠点、作ります」

試練を終えたシンジ達。ちょっと腰を落ち着けてみることにしたようですよ。

訓練、そして拠点探し。クファンは少し大きな都市ということもあって、物語は暫しここを中心に進みます。


交易都市クファン。立派な城門を構え、水運の港を持ち東からの交易の中継地点として栄えてきた都市である。気候の境目でもあり、東西から異なる種類の特産が持ち寄られる。クファンそのものは変わりやすい気候に晒されているためか、水生生物以外の特産に乏しく、交易で都市全体の生活が支えられている。


そんなクファンの一角。シンジ達は冒険ギルドに顔を出していた。新たな仲間の登録と、パーティーキャラバン化に向けた申請のためである。


「いろいろあったせいか、この間来たばかりのクファンが久しぶりに思えるわ。とりあえずこの間到着したときに少し長めに宿を確保してあるから、まずはそこへ行って荷解きをしましょう」


ミカエラに先導されて一同が街壁の内側の市街地へ足を踏み入れる。東西に長いクファン市街地はアリア川に沿うように形成されている。市内を流れるアリア川の東西の端は堰を設けてあり、船の出入りを制限しているようだ。堰を通れる小船だけが市内に巡らされた運河にも出入りし、水運が栄えていることが良くわかる。

そして市街の東端、アリア川下流方面を見れば堰の脇に立派な城壁が聳えている。クファン城だ。この都市は君主制を取っているため、巨大な王城が存在している。その優美なたたずまいも観光資源のひとつであるという。

西端に位置する歓楽街のややはずれに確保している冒険者向けの宿ははあった。旅の宿木亭という名のその宿は3階建てでクファンで一番の部屋の豊富さを誇るらしい。宿の主人がそう自慢していたのだから、およそそんな感じなんだろう。


「ここか・・・でっかい宿だね。じゃあ当座の部屋割りを決めて荷物を置いたら一旦1階の酒場スペースへ集合。今後の話をするよ」

「「「「承知しました」」」」


一行が宿に入ると早速女主人が声を掛けてきた。


「いらっしゃい。・・・おや。お客様、遅いお戻りですね。3日間もお戻りにならないから何かあったのかと心配していましたよ」

「ああ、ちょっとこの男の野暮用が長引いちゃって。暫くは遠出もしないし、訓練所にも通わなくちゃいけないから暫くこの人数で厄介になるよ」


ミカエラがシンジの耳を引っ張りながら言う。シンジ達はクファンにおいては長期逗留が目的となった。理由はいくつかあるが、ひとつは訓練所での各人のレベルアップだ。この世界の住人はいろいろな経験を得たり、物事を達成した後に訓練所に行くことで己の強化を行っている。VRMMOでも同様であったため、そのまま継承されているのだろう。もう一つの目的は後に決まることになる。


「そうですか。訓練所であればこの宿からすぐの城門外にあるよ。一通りの設備が整っているから、どんな職業でも対応可能だ。それこそ巫女でも騎士でも魔道師でもね。」

「ルミもアーシェラも良かったね。特に巫女なんてなかなか訓練設備が無いから・・・」

「はい!」

「がんばるニャ!」


「それと・・・オル、君を冒険者ギルドに登録しにいこう。そこで適正を見極めてもらってから ジョブを決めよう。君の場合は訓練する必要は無いから登録が出来たらちょっと手伝ってほしいことがあるから、付き合ってね」

「分かりましたわ。付いて参ります、シンジ様」

「あたしもオリビアについていこうかしら。どんなジョブに付くのか気になるし」

「ウチはルミはんたちと一緒に訓練所にいきますわ。マーチャントのレベルを上げてもっと交渉上手になろうと思います」

「了解よ。じゃあ部屋割りは1人部屋をシンジにして、残り5人は3人部屋と2人部屋をそれぞれ借りましょう。」


特に反対意見も出なかったので部屋を借りなおす。1月の逗留で銀貨3枚。30万シリングというと結構高めな金額である。それなりにいい宿でもあるので、値段自体は納得できるものであったが。

借りた部屋に荷物を置いたメンバーはそれぞれの目的のために散っていった。



<訓練所にて>


訓練所にやってきたのは、ルミ、ルチア、アーシェラの3名だった。主な目的は訓練によるステータス増強とジョブレベルのアップである。ジョブごとにそれぞれ訓練する内容は異なり、ルミは騎士コースで戦闘鍛錬、アーシェラは巫女コースで祈祷や奉納の舞の型などを練習、ルチアは商人コースで相場動向の知識習得や商品知識の習得訓練を実施するようだ。


「それじゃ、ウチは知識習得がメインやし、昼にまた食堂で落ち合いましょ」

「はい。アーシェラさんも型の練習頑張ってくださいね。」

「はいニャ。頑張ってシンジの役に立てるようになるんニャ」


こうして3人娘はそれぞれ修行を開始したのであった。蓄積されていた経験値が凄まじく、伸び率が異常な値を示すことが分かるのはもう少し先の話である。



<冒険者ギルドにて>


3人娘と別れ、オリビアの冒険者登録にやって来たシンジとミカエラだったが、はたしてギルドカードに種族とか年齢とかをどう記録してもらうかを悩みながら歩いていた。


「安易に竜人とか記載するわけにいかないし、ドラゴニートは姿形が違いすぎるし・・・」

「無難なところだとヒューマンと登録するしかなさそうね。年齢はもちろん詐称! あとはそのツノをどうするか、ね。格納したりは出来ないんでしょ?」

「ええ。そういう風には出来ていないわ。今みたいに髪型で隠すか帽子をかぶるしか隠す方法をしらないの」

「ここは僕のコレクションからうさみみ帽子を出すしかないな」


アイテムボックスから顔を出すウサギの耳が生えた被り物。バニーさんではなく、着ぐるみの頭だけうさぎさんバージョンである。


「ちょっと、それは・・・趣味が悪いねぇ・・・」

「・・・・」


ミカエラはげんなりし、オリビアは言葉も無い。


「しかたない、帽子は後で検討するとしてまずは髪形で隠して、そのうち髪飾り、ということにでもしちゃおう。シンジの謎アイテムを待ってると何を繰り出してくるか不安だわ」

「そうですね、そう致しましょう!」

「ウサギ、かわいいのになぁ・・・」

「いや、それは大事に取っておいて良いわよ・・・」


いまいちセンスのないシンジではあった。

気を取り直して冒険者ギルドにはいった一行は、オリビアをギルドの窓口に案内し、ヒューマン、16歳、で登録をし適正試験を受けさせていた。


身体能力・・・Bランク(手を抜いた)

魔力  ・・・Aランク(手加減できず)

知識  ・・・Cランク(一般常識はお察しください・・・だった)

技能試験・・・剣士C、魔術師A、僧侶A、シーフB、レンジャーB、商人D


ちなみに結果はだいたい上記のような感じである。適正だけで言えば魔術師か僧侶。魔道師と呼ばれる職業が一番しっくりきそうだ。


「オリビア様は魔道師で登録されてはいかがでしょうか。初回登録の決まりですからランクは最低のFから始まりますが、すぐに上位ランクに昇格できると太鼓判を押させていただきます」


ギルドの係員の娘に太鼓判を押され、オリビアも満更でもなさそうだった。


「オリビアのギルド登録も終わったし、次はオリビアのパーティ登録と、うちのパーティのキャラバン申請をお願いします」

「はい、シンジ様のパーティにオリビア様が参加されて、キャラバン化の申請をされるということで承ります。現在シンジ様のパーティはシンジ様、ミカエラ様、ルミ様、ルチア様、アーシェラ様、オリビア様の6名です。キャラバン最低人数の6名を満たしているので第一条件はクリアです。ギルドへの預託金として金貨1枚をご用意いただけますか?」

「はい。金貨1枚。これでいい?」

「結構です。預託金、預からせていただきました。こちらは皆様に何かあったとき、捜索等の支援をすえる支度金として使わせていただくものです。あとは拠点を最低一つお作りください。宿ではだめです。借家でも構いませんし、場所は街中であればどの町でも構いません。移動型の住居で定期的に設営する場所を特定する形でも結構ですが、移動前と新拠点設営後にギルドにお届けいただくことが必須となります。」

「拠点作成か・・・思い切ってクファンに一つ拠点を作っちゃおうか。おねえさん、クファンに拠点を作成することにしようと思いますが、キャラバン登録の続きは作成後になりますか?」

「そのとおりです。登録書を持ってきていただかなくてはなりませんので。不動産関係の取引・登録は商人ギルドで扱っているはずですので、そちらへお越しください。ギルドの推薦状をお渡ししますので、いくばくかはお安くなるはずです。拠点が決まればキャラバン登録は完了しますので、頑張ってくださいね」

「ありがとう。じゃあちょっと登録してくるので、続きはまた今度にでもお願いします」


冒険者ギルドを出る3人。ミカエラが怪訝そうにシンジに声を掛ける。


「シンジ、定住しちゃっていいの? 異世界帰還の目標は?(ボソボソ)」

「うん、大丈夫。今回の試練でいろいろ判った事があってね。なんというか・・・地に足が着いたって感じに納得できたんだよ。じゃあ次は・・・別のやりたいことをやろうってね」


悩みが吹っ切れた良い笑顔。ミカエラは自分が心配していた事が一つ無くなった事を理解したようだった。オリビアも笑顔を浮かべている。が、こちらは事情が違ったのだけれども。


(シンジ様、とうとう妾と添い遂げることをお決め頂いたのですね。お父様。オルはやりました!!)


核心に触れない雑談をしながら商人ギルドの暖簾(のれん)をくぐる。受付には見覚えのある女性が座っていた。


「毎度。ってシンジはんやないか。どないしたんや?」


窓口に座っていたのはルチアだった。訓練の一環としてギルド窓口で訓練をしているのだそうだ。


「物件探しですか・・・ほんなら、クファンに拠点を1つ建てるってことやね? 不動産はあっちの正ギルド員の窓口で確認してほしいんやけど、できるなら大通りに面した売り場があるような場所を希望するで。 クファンは結構でかい都市やから、店を持てるならこれ以上はない宣伝にもなるしな」

「わかったよ。じゃあちょっと物件探しをしてくるから、ルチアも訓練頑張ってね」

「了解や。これでも筋がええいうてほめられてるんやで。見違えるほどに成長したウチに請う、ご期待! ってところや」


ルチアに教えてもらった窓口に行くと壮年の係員が座っていた。


「こんにちわ。商人の拠点になる物件を探したくて来ました。お話を聞かせてもらえますか?」

「いらっしゃい。礼儀正しくて良い事だ。商売の拠点探し、ということは大通りに面した物件が良いのかな? 買い取りかな? 賃貸かな?」

「はい。大通りに面していてそこそこの大きさがあればうれしいです。買取でも賃貸でもどちらでも良いですが、物件そのものの立地にこだわりたいです。」

「ふむ。立地・・・ね。良い立地の物件は既に押さえられている状況だが、1物件だけ空きがある。ここは売りに出されているし、値段も非常に安い。場所は目抜き通りのやや下町寄り、十字路の北東の角地にある古い商館だよ」

「なんかもう、その説明からすると「いわくバリバリありますよ」って感じですよね。」


壮年の係員はにやりと笑うと話を続ける。


「はは、そのとおりさ。 元の持ち主は不幸な事故でずいぶん前に亡くなっていてね。あとからそこを買い取った人間が何人もオバケを見たとかですぐ売りに出してしまう。そのうちに買い手が無くなってしまったというわけさ」

「そうすると、そこに拠点を構えるのはオバケは別にして評判的にも悪い感じがしますけど・・・?」

「ああ、それなら大丈夫。買い手が付かなくなってもう50年ほどたつし、普段は広告看板で覆ってある十字路の一角になってるから、昔のことを覚えている者は少ないと思うよ。破格に安いと入っても値段もそこそこだから、購入に躊躇する人が多いのも買い手が付かない理由さ」

「・・・物件は購入前に見学できますよね?」

「もちろんだ。どうする? すぐに行くかい?」

「お願いします」


曰くつきの街角の屋敷。はたしてそこには何が待ち構えているのだろう?

一行は屋敷へ向けて移動を開始したのだった。



毎度ご覧頂ありがとうございます。


曰くありげな屋敷でしたが、何が待っているんでしょう?

続きは次回にて。

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