第11話 「白銀の竜」
帰還の謎を追う旅が続きます。
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転移門を潜ったその先。シンジとミカエラが見たものは見渡す限り降り積もった銀世界。どうやらここは白銀山脈の最高峰付近のようだった。
周りを見ても神殿らしきものは見当たらず、ふたりでいろんなところを眺めていたら、ミカエラがそれをみつけた。
「シンジ。あの・・・上空にぽつーんとあるあれが・・・神殿なのかな・・・?」
ミカエラが指差す先を目を凝らして見れば神殿のようにもみえる。あまりの高空のため、普通に向かうには少々厳しい。
「一旦戻ってなにか方策が無いか聞いてみようか・・・」
竜大公になにか支援を頼めないかと、もう一度転移門を通って城に戻ることにしたのだった。
事情を話すと、金龍姫が高空へ昇る手伝いをしてくれるとのこと。神殿までは付き添いが許されているらしい。
「金の風、今回は私がお供するわ。いつもシルにばかりいい思いはさせないもん」
「じゃあ、お願いするよ。結界突破も簡単な作業じゃないしね」
ちなみに、高空にあった神殿へ行く途中にはいくつも龍の結界があり、突破するにはそれなりの準備が必要なのだという。金龍姫は今回、そこを通り抜ける手伝いをしてくれるというわけだ。当然、自力突破よりははるかに楽であるため、シンジ達は金龍姫に手伝いをお願いすることにしたのだった。
飛行絨毯というマジックアイテムの上に乗った一行は話しながら先へ進んでいく。
「ねえ、金龍姫?」
「オル、と呼んでいただかないと嫌ですわ」
「あら。シンジと金龍姫様って愛称で呼びあうような仲だったの?」
「実はそうなのですよ、ミク。竜は親しい者と愛称で呼びあうのが好きなの」
「そうですか・・・あたしもたしかに愛称ならミクかミカになるんでしょうけど。違和感が・・・あはは」
「オルはさ、あのときの・・・婚約の話をまだ本気で考えてるの?」
「ええ・・・父が決めたことですもの。従わぬ娘はおりません」
どうやらシンジの同意は無く、竜大公が勝手に決め付けてそのままになっている雰囲気である。
「かつて繰り返された歴史の中でシンジ達だけが我らを殺すことなく災禍から救ってくれたのだ。そのときの褒美として父が決めたこと・・・それが婚約、というわけだ」
「褒美代わりに自分の娘を・・・か。やはり由緒正しき褒美といえばそうなるわよね・・・」
ミカエラが微妙に呆れた目で金龍姫を見つめた。
「そうね・・・縁談話についてはそれだけが理由じゃないんだけど・・・」
「愛の告白も混ざっていたとか?」
「そ、そういう部分もあるかもしれません。 さ、さあ、そろそろ入り口の門に到着するわ。白銀の竜様は礼儀を重んじる方ですから、くれぐれも粗相なきようお気をつけあそばせ・・・」
・・・
・・・・・・
白銀の竜の竜神殿は静寂に包まれていた。やはり高空のため空気が薄い。結界に包まれているために事なきを得ているが、何も無ければすぐに高山病になってしまうほどである。
神殿の門をくぐり、広場をぬける。
見えてきた小さな庵にその竜は座していた。
<<そなたが電脳神か。自身が神の身であろうに、我への願い事は何ぞ?>>
心に響く玲瓏な声。他の者には聞こえていないところを見るとシンジだけに念を送ってきたと見える。すぐにその声に返答するシンジ。
<<我探すは我の生まれし異世界への帰還の法。御身が答えを持つと聞き及び、無理を押して参上した次第。>>
<<その法、我は知らず。月の女神の神殿に其が有りしと聞くが、彼の地はわが守護の下にある神聖なる地。軽率なる訪問は許されぬ。故にそなたに試練を与えん! 我を屈服させよ! 其がそなたへの試練なり!>>
念話が終わるや否や。巨大な咆哮が響き渡り、白銀の竜がその巨大な姿を空中に浮かべた。黒い白目に白い黒目という人間とは間逆の瞳で一行を見据えると吐息を吐き出した。
「オリビア。汝はその女子を連れて一度引き返すが良い。これよりここは戦場となる。常人には耐えられぬゆえ避難するが良かろう」
「承知いたしました。ミク様、せっかくここまでお越しいただきましたが白銀の竜様がおっしゃる以上は一旦帰還せざるを得ません。そしてシンジ様。くれぐれもお気をつけください。貴方はここで命を落とすべき方ではありません」
神妙に頭をたれ、白銀の竜に従う金龍姫。皆が乗ってきた飛行絨毯とミカエラに手を触れると、転移石を握りつぶし、一気に帰還の一途を辿った。
「さて電脳神よ。まずは力比べから始めるとしよう。オリビアの期待を裏切らぬよう、全力で向かってくるのだぞ!」
白銀の竜が宣言した直後。強力な振動波がその口から放たれる。なんとかかわしたシンジ。すばやく【サーチ】を掛けるも結果は芳しくない。
++++++++++++++++++
【白銀の竜】:????・??????
属 性:竜族・神族・BOSS
レベル:????
特殊能力:ブレス、天変地異、神罰、無に還れ
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レベルが見えない。すなわちシンジよりもレベルが高いということである。
「これは無理ゲーだな・・・とにかく【無に還れ】だけは避けないとまずい」
「どうした? そちらから攻撃をしないならばこちらから行くぞ? それ、【神罰】てきめーん!!!」
何処からともなく現れた巨大な津波に足をとられ、竜の神殿の島から外へ流され、シンジは高空に舞った。
「来週もまたみてね~~~~っ!!!」
・・・
・・・・・・
シンジだけが残り戦っている、と聞かされたルミ、ルチア、アーシェラを加えた5人は不安そうに白銀山脈のほうを見つめていた。
ふとその視界にきらめきが映り、白銀山脈の最高峰あたりで雪崩らしき雪の滑り落ちがみえた。
「ふぃ~。危なかった!」
声とともにワープを使って転移してきたらしいシンジがずぶぬれで現れる。
「シンジ様!」
「金の風様!」
「シンジ!?」
「いやあ。一撃で吹き飛ばされたのであわてて転移で帰還しました。」
「難儀やったな・・・」
「シンジ様を一撃で、とかどういった攻撃なのでしょうか」
「うん、【タイダルウェイブ】っていうスキル魔法の中でも最上級に位置するスキル魔法を放たれてね。防御は間に合ったんだけど、範囲スプラッシュ効果なのでその場に踏ん張れずにそのまま流されちゃったってわけさ」
「龍語魔法じゃないぶんまだ”まし”ってところなのね・・・【タイダルウェイブ】対策は魔法防御と【レビテト】が定番だけど、他にも何か対策が必要?」
「そうだね・・・そもそも使ったスキルが【神罰】だから、効果が【タイダルウェイブ】だけとは限らないんだよね・・・」
「思い切り龍語魔法のエクストラスキル使ってきたのね・・・龍語魔法系でエクストラスキルののこりは【天変地異】と【ブレス】くらいかしら。元ネタが分かれば大体の対策はできそうだけど」
「ミカエラさん、お詳しいことで。ついでに聞くけど【無に還れ】って知ってる?」
「それは・・・知らない・・・」
「・・・【終焉のラッパ】とも呼ばれる、白銀の竜様だけが使うとされるスキルですわ」
深刻そうな顔でつぶやく金龍姫。
「嫌なふたつ名だね・・・そもそものスキル名もいやなんだけど。やっぱり消滅系のスキルなのかな?」
「いえ。世界の終焉のときに使うとされるスキルだとされています。白銀の竜様はきっとそのスキルはお使いにならないでしょう」
「しばりアリのスキルなのか・・・じゃあ、その他の対策をとればなんとか勝負に持ち込めるというところか。その他になにか良い案がない? 金龍姫もなにか伝承とかそういったもので何か無いかな?」
「ひとつは竜力減衰のオーブを使うことでしょう。これは私が同行して使うことで一定時間効果を発揮することが可能です。私だけが使えるように特化させているので同行が必須です」
「あとはドラゴンスレイヤー装備をすれば竜には効果が高いけど?」
「うん。ミカエラ、今回はそれはやめにしようと思うんだ。殺すわけじゃないからドラゴンスレイヤー装備は強力すぎちゃって。多分、逆鱗タッチで勝負アリ! にしてくれると思うから、その方向で」
「何を根拠にそんなお気楽な・・・」
「あら。竜族はそれでも充分に勝負アリになりますわ。そもそも”近寄ることもできない強さ”が竜族の誇りなのですから」
「じゃあ、方針は決まり、だね」
まずはワープで金龍姫とシンジでバトルフィールドへ復帰する。その次に金龍姫は竜力減衰のオーブを使い、すぐに転移石で離脱。その隙にシンジは【レビテト】と魔法防御を同時詠唱。あとはひたすら避けまくって逆鱗タッチを狙う、そういう作戦である。
「んじゃ、ちっといってくるから。皆待っててね」
そういい残し、シンジと金龍姫は転移していったのだった。
いよいよ最終決戦が待っています?




