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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

聴きたくて、聴けなくて。

作者: 露爛

『言いたくて、言えなくて。』攻め視点。前作と同じく旧サイト掲載作品の加筆修正版です。

もう、限界だった。

誰もが振り返るほど綺麗なお前。

男のお前が同じ男である俺なんかを好きになるわけが無いと、俺は好きでもない女と付き合っては「好き」、「愛してる」の言葉に、自分の感情を責められているような気になってしまい、誰とも長続きしなかった。

普段は周りから「氷の美貌」と唄われるくらい無愛想なのに、気を許した相手にはとことん甘えたがるお前が可愛くて、愛しくて・・・

いつ暴走するか分からない自分自身を持て余してた俺は、とうとうダメモトでお前に告白した。

世間話にかこつけて、冗談めかして言ったのは、絶対に断られると思っていたから。

でも、

「ああ。そうするか」

普通すぎるほど普通に俺の気持を受け入れたお前。

「…え?いいのか?」

余りにあっさりとしすぎているお前に、正直、想いを告げた俺の方が焦ったくらいだ。

でも、そんな俺にお前は少し首を傾げて、

「おかしなやつだな。嫌だったらいいだなんて言ってない」

と、不思議そうな顔をして俺を見たんだっけ。

この時俺は、好きなやつに受け入れてもらえた自分は最高に幸せな男だと思った。




愛してる。

いつになったらお前は俺にその言葉をくれる?











「美咲。好きだよ」

「…うん。知ってる」

・・・ナンカチガウ。

俺の方を見もせず小難しい本を読み耽っている美咲の横顔をチラリと横目で見た。

俺が美咲に玉砕覚悟で告白してから早一月。

でも、その間お互いに忙しくてろくに会うことすら出来なかったため、未だに清い仲だったりする。

そんな俺達が本当に久しぶりに揃って休日を過ごすと言ったら、やっぱ蜜月的な甘さを想像するだろう?

それがどうだ?

恋人のこの冷たい態度!!

折角恋人の家に来たというのに、何が悲しくて自分に見向きもしない恋人の横で、一人寂しく茶をすすらにゃならんのだ。これじゃ、今までの関係となんら変わらないいじゃないか!

なんで寝室じゃなくてリビングにしか通してくれないんだ?

むしろ、友人だったの頃の方が、まだ気を許してくれていたんじゃないかと思う。

「なぁ。本当は俺のこと好きじゃないんじゃないのか?」

思わず出てしまった俺の本音。

そう。俺は最近この事ばかり考えていた。

だって、一度も言われたことがないのだ。

何がって?

もちろん「好き」や「愛してる」という恋人なら当たり前のように言うはずの言葉を、だ。

かつて自分ができる限り避けていた言葉だけに、同じようにその言葉を避ける美咲の気持ちをどうしても疑ってしまう。

「…なんで?」

そんな困った顔をして俺を見るなよ。

お前がわざとその言葉を避けているのは俺にだって分かる。

俺がお前に「好きだ」と言う度に一瞬戸惑った顔をして、それから悲しそうに笑うんだ。

そんは風にされて俺が気付かない訳無いだろう?

どれだけ長い付き合いだと思ってるんだ。

やっぱり本当は仲のいい友人を無くすのが惜しくて無理に付き合っているんじゃないのか?

それとも、お前は優しいから俺に同情して付き合ってくれているのか?

「なんでじゃないだろ?俺が何度好きだって言っても、お前は一度も俺に返してくれないじゃないか」

ほら。またそんな辛そうな顔をする。

俺はお前を苦しめたくて付き合っているわけじゃないんだぞ?

「同情で付き合ってくれてるなら俺が惨めだ。・・・別れようか?」

本当は別れたくなんかない。

でも、このままじゃお互いに辛いだけだ。

お前が辛い思いをするのは耐えられないんだ。

だから、お前の負担にしかならない俺は潔く別れて美咲の前から消えた方がいい。

でも・・・

「・・・でも、別れる前に・・・一度でいい。お前を抱きたい」

体が目当てで付き合ったわけじゃないが、許されるのならやっぱり触れたい。

これが最後になるというのなら尚更だ。

堅い表情で美咲を見つめていると、美咲が突然泣き出した。

声も出さずポロポロと綺麗な滴が美咲の白い頬を伝って流れ落ちてゆく。

「泣かないでくれよ。美咲」

俺に抱かれるのはそんなに嫌なのか?

酷く切ない気持になる。

でも、俺はもう止まれない。

俺は美咲の細い体を抱きしめ、そっと指先で涙を拭き取った。

「美咲。好きだ。愛してる」

俺はそう囁きながら、強く拒絶されないことをいいことに、美咲の服を脱がせていった。

そして現れた美咲の美しくしなやかな裸体。

俺は待ちきれないとウズく自身をなだめつつ、自分も急いで服を脱ぎ、美咲をその場に押し倒した。

「美咲。美咲・・・愛してる・・・」

もう、返事はいらない。

俺はだんだんと呼吸の荒くなってきた美咲の身体中にキスをしながら囁き続けた。

その間、美咲は何かを耐えるように押し黙ったままだったが、どうせもとには戻れないのだからと、俺は荒れた心の赴くまま、愛しい人を好きなだけ蹂躙したのだった。













何度も犯し、美咲が疲れ果てて意識を失っても、気つけに部屋にあったワインを飲ませながら、何時間もこの甘美な地獄に付き合わせ続けた。

自分にこんな鬼畜の所業ができるとは思わなかった。これじゃ、罵られるどころか、警察に突き出されても文句は言えない。

まだ欲望は尽きないが、ふと我に返り、ぐったりとした様子で瞼を閉じている美咲を見て、さすがに手が出せなくなった。


美咲…。目を覚ましたお前は、俺になんて言うんだろう?


それとも、冷たくなった視線で、俺の心を突き刺すのだろうか?


突然、眠っていたはずの美咲が、俺の背に腕を回し、抱きついてきた。

「美咲?」

「…好き」

「…え?」

「愛してる。愛してるんだ。離れていかないで。俺を見捨てないで」

空腹のままアルコールを取らせ過ぎたせいか、熱に浮かされたぼんやりとした表情で俺を見つめ、縋りつくように美咲が俺に愛の言葉を伝えてくる。

はじめは突然のことに理解できず、茫然と美咲を見つめ返していたが、徐々に美咲の愛の言葉が、俺の全てに沁み渡り、俺は幸せで胸が熱くなるのを感じた。

当然こんな可愛い美咲を見せつけられたら下半身も熱くなるわけで…

「ごめん、美咲。俺、優しくできそうにない」

「いい。優しくなんてしなくていい。英司になら何をされても構わないんだ」

ああ。そんなに可愛いこと言われると、本当に押さえが利かなくなる。

「美咲。じゃあ、足をもっと開いて?」

俺が美咲を攻め立て始めると美咲が切なげに何度も俺の名を呼ぶ。

「美咲・・・美咲、愛してる」

「あ、あ。・・・お・・・れも・・・好き・・・」

部屋に響くのはベッドのきしむ音と美咲のあえぎ声と俺の荒い息遣い。

俺はやりたい盛りのガキみたいに無心で腰を振り立てた。











「う~ん。やっぱり無理させ過ぎたかな…」

今更と言っちゃ今更なのだが、俺はぴくりとも動ずに泥のように眠っている美咲に罪悪感を感じ、後悔の念に苛まれている。

「こんなつもりじゃなかったんだけどな~」

初めてはやっぱり優しくゆっくりと…なんて思っていたのに。

それがどうだ?

いい歳こいた大人のくせして、この中坊みたいなこの有り様は。

「はぁ~。情けねぇ。…でも、さっきの美咲は最高だった」

勝手に頬が緩んで顔がにやける。

これじゃただの危ないやつだ。

でも、本当にヤってる最中の美咲は可愛かった。

あ、勿論普段から美咲は可愛いけどな。

罪悪感と背中合わせの幸福感と相手を征服する最高の高揚感。

男心も結構複雑だ。

「さてと、美咲はきっと起きても動けないだろうから、飯でもつくっかな」

俺は汚れたシーツと美咲を清めたタオルと洗面器を持って立ち上がる。

う~ん。俺ってなんて甲斐甲斐しいんだろう。

きっと、いい婿になれるぞ。

勿論相手は美咲しかいない。

そしたら、美咲が俺の奥さんか~。

なんていい響きなんだ。

俺はでれでれとだらしない面を晒したまま、鼻唄混じりに足取りも軽く寝室を後にした。











「…ん?」

今、美咲の泣き声が聞こえなかったか?

どうしたっていうんだ?

「え…じぃ。英司、英司…」

寝室のドアを開けると、美咲が枕に顔を押し付けて俺の名を呼びながら泣いているのが目に入った。

「どうしたんだ、美咲?」

「え・・・いじ?」

俺の存在に気付いた美咲はなぜかきょとんと不思議そうな顔をした。

なんなんだ???

「なんて顔してんだよ。俺の大好きな可愛い顔が台無しだぞ?」

いや、本当は泣き顔もすげぇ可愛いんだけどね。

でも、やっぱり美咲には幸せそうに笑っていてほしい。

俺は美咲を抱き上げると、ベッドの縁に腰掛ける。自分の膝の上に美咲を横抱きに座らせて、その顔を覗き込んだ。

「なんで英司がここにいるんだ?」

は!?それって酷くないか?

「なんだよ。俺がいちゃ駄目なのか?」

「駄目じゃない。嫌だ。どこにも行かないでくれ。ずっと俺の側にいて・・・」

そう言って美咲がぎゅっと俺にしがみついてくる。

は~。も~。かわええ~。

「うん。もう、美咲が嫌だって言っても別れてやれない」

「…本当か?」

「ああ。昨日あんなに熱烈なラブコールを受けたのに別れられる訳無いだろう?」

俺が言った途端美咲は奇妙な顔をした。

「なにそれ?」

「あれ?なんだよ。覚えてないのか?」

なんだよ。あんなに激しかったのに、全く覚えてないってのか!?

冗談はよしてくれ。

あ。でも待てよ?

ふっふっふっ。いいこと思いついちゃったもんね。

「知りたい?」

きっと俺はにやにやと明らかに怪しい顔をしているのだろう。

俺の様子から不穏なものを感じとったらしい美咲の表情が俺を警戒してこわばっている。

でも、律儀な美咲のことだから、きっと自分言ったことが気になる筈だ。

「ま、まあ…」

ほらね?

よし。これで本人の了承を得たことだし…

「OK.じゃ、遠慮無く…」

俺は無防備に薄く開かれた美咲の唇に素早くキスをした。

「んんっ!何!?なんで!?」

当然のことながら、状況を飲み込みきれていない美咲は焦って俺の顔をぐいぐいと押し戻そうとする。

「ただ口で言うより同じシチュエーションで教えた方がいいかと思って」

俺はしれっと言ってやる。

だって、美咲があんまり可愛いから、俺の息子が性懲りもなくまた自己主張し始めちまったんだよ。

美咲は美咲で俺をこんな風にしておきながらつれないことを言うし、ちょっとくらいいい思いをしてもいいだろ?

「嫌だ。朝っぱらからなんて無理だってば!」

「そんなこと言うなよ。愛してるぜ。美咲」

美咲の耳元で低く囁くと、

「ん…」

美咲はびくりと肩を震わせ甘い声で鳴いた。

まだまだいけそうだな。

思わず笑みがこぼれてしまう。

そんな俺を美咲が、キッと睨みつけてくる。

「俺が動けなくなったら、ちゃんとお前が世話しろよ」

そんなの当たり前だ。

「了解。よろこんで」

俺は喜々として美咲を押し倒した。

一時はせっかくの休暇を無駄にしたかと思ったけど、やっぱり不審がる美咲に無理やり有給使って連休取らせて正解だったな。

きっと美咲は明日は動けないだろう。

「美咲。愛してるよ」

「…うん。俺も」

俺はやっと本当の意味で君からの言葉を手にいれた。











後日、今までなんで頑ななまでに愛の言葉を言わなかったのか問い詰めたら、

「お前が言ったんだろ!?」

と、めちゃくちゃ怒られた。

俺のことをそこまで思ってくれていたことが嬉しくて、思わず顔がにやけてしまったら、また怒られた。

そして、実は今も口をきいてくれない 。

さて、困ったもんだ。

どうしよう?


ねぇ、愛してるよ。

だから聴かせて。

君の言葉を。


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