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三題噺もどき5

授業終わり―美術

作者: 狐彪
掲載日:2026/04/23

三題噺もどき―はっぴゃくろくじゅういち。

 




 教室は少し騒がしい。

 人数が減っている分マシに聞こえるが、それでも騒がしいとは思う。

 声がでかいんだよな、いちいち。もう少し静かに話せばいいのに。

「……」

 机の上に転がったままになっていたえんぴつを片付けながら、そんなことを思う。

 端の方にはめていたキャップを先につけ直し、芯が折れないように保護しておく。

 まぁ、そんなに頻繁に使う物でもないから、多少折れたところで、また削ればいいんだけど。

 ただその削る用の道具というモノが手元にあるわけではないので、気を付ける必要はある。

「……」

 ああ、言うのを忘れていたが。

 ここは美術室である。

 部屋には独特の匂いがこもっている。

「……」

 窓は開けられていたけれど、それでも染みついた匂いと言う物はそれなりにする。

 ましてやそれなりに長い間使われている美術室だ。この学校自体がそれなりに古い。立て直しや補修工事などをしていたとしても、匂いと言うのは案外するものだと思う。

 それに、毎日この教室で活動をしている部活はあるのだから。

「……」

 今日はその教室で、美術を選択した同じクラスの他の生徒と、授業を受けていた。

 この高校は、美術、音楽、書道のどれかを選んで授業を受ける。これは2年生からの選択授業なので、去年美術を選んでいれば今年も美術だ。多分。他を選ぶと言う選択肢が頭になかったので、その可能性があるのかどうかは知らない。

「……」

 だから、この教室にいる人数は単純に、1ラスを3に分けた人数しかいないわけだ。

 美術は比較的多い方だと思うが、平等に振られているはずだから、気のせいだろう。

 ……その美術の授業が終わり、ぞろぞろとクラスに帰り始めている。

「……」

 残念ながら、この選択授業で一緒に教室に帰るような人はいないので、1人で大人しく教室へと帰るのだけど。このクラスでの知り合いは、皆音楽だったらしい。

 音楽でもいいんだけど、歌わされるから嫌なんだよ。

「……」

 筆箱にすべてを直し、机の引き出しの中に直していた教科書を取り出す。

 それをそのまま、廊下に置かれている細い棚に片付けて帰るのだ。

 それぞれ場所が決まっているので、それを間違えないように。

 番号が振ってあるだけなので、たまに知らない人の教科書とかが混じっている。

「……」

 担当の教師はすでに次の授業の準備をしているのか、教室には居ない。多分、隣の準備室にでもいるんだろう。あの人、割とすぐ引っ込むんだよな……。

 教室を出て、教科書を直し、渡り廊下へと向かっていく。

「……」

 甘いものが飲みたくなってきた……昨日あたりから、ものすごく甘いものが欲しい。昨日飲んだココアとかいいんだけど、この時間はさっさと教室に帰らないと次の授業があるから……時間があれば自販機にでも言ったのに。今日に限って持ってきたお菓子はすっぱめのグミだし、飴も甘いと言うよりは苦みのあるタイプだし。

「……、」

 そんなことを考えながら、ぼうっと廊下を進んでいた。

 すると上に続く階段の上から、聞き慣れた声が聞こえてきた。

 聞き慣れた、聞き馴染みのある。

「あ、――じゃん」

「やほ、」

 聞き間違える訳もない。

 筆箱だけをもってきた、あの子だった。

 おそらく次が美術の授業なんだろう。

 一緒に来たのは、同じように筆箱を持っている子と、教科書を抱えたこといる。

「美術だったんだね」

「そだよ、今から?」

「そー」

 昼休み前に、偶然こうしてすれ違えたことが。

 思わず上ずってしまいそうなほどに嬉しい。

 しかしそれをおくびにも出さない。そんなものをあからさまに出して嬉しいと思うのは、付き合っている人間たちくらいだろう。

「あ、えんぴつもってる?」

「もってるけど、持ってきてないの」

「あるけど、先っぽが折れてたw」

「なにしてるw」

 ここですれ違わなかったらどうするつもりだったんだろう。

 あぁでも、もしここに来る前に私の教室に寄っていたなら、なんとなく分かるか。借りる相手なんて他にもたくさんいるだろうに。

「はい、」

「ありがとー、昼休みに返すね」

「ん、またね」

「またねぇ」

 筆箱の中からえんぴつを取り出し、あの子に差し出す。

 白く細い指が、えんぴつを受け取る。

 ひらひらと手を振りながら、美術室へと向かうあの子を見送る。

「……」

 昼休みまであと少し……。

 早く来ないかなぁ。











 お題:ココア・教室・えんぴつ

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