「烈火」
「愛情のための一手間なんて料理に不要だ」
「いるのは味のバランスだけ、情なんて入れることなどできない。」
俺は料理人だ。
そして俺は料理が嫌いだ。
なぜか?
それは無礼な奴らのために作るものだからだ。
料理とは奴らのために作るもの。
そう認識してしまった俺に、
料理を作る喜びなどない。
家ではいつも冷凍食品が整列している。
味はまあまあ、栄養もまあまあ。
冷凍食品にしては中々の出来だ。
聞いてわかる通り、俺は少し捻くれてる、
自覚するほどのな。
今日は退屈だった。
明日もきっと、もっと退屈になるだろう。
次の日、俺はいつも通り厨房に立つ。
ウェイターが言う
「シェフ、3番テーブルのお客様がお呼びです。」
はあ、またか。
薄っぺらい言葉を聞きに行くのか。
俺は「すぐ行く。」と答えた。
3番テーブルへ向かう足も重い。
「なんでしょうか?お客様。」
俺は安物のベーコンみたいな言葉を待つ。
夫人が言った。「このお料理絶品でございますわ、特にこの__」
俺は耳を塞ぎたかった。
俺はお前らの飯を作るのに忙しいんだ。
その時、子供が口を開いた。
「このお料理不味いよ?」
茹で過ぎたゆで卵みたいに、
場が固まった。
ここだけでなく、周囲のテーブルも固まった。
夫人が慌てる。
「何をおっしゃるの!この方はお国のトップにもお料理を提供するほどの凄い腕前を持った方なのよ!」
俺は尋ねる。
「不味い理由をお聞きしてもよろしいですか?」
険しい表情になりながら夫人が言う
「子供の言うことなんて気にしないでください!」
夫人が子供を睨み、子供は身構える。
俺は穏やかに言う。
「こちらこそお気になさらないでください。
ただ、不味い理由が気になるのです。
教えてくれませんか?」
子供は言った。
「なんでか分かんないけど、不味いの」
俺も分からなかった。
なぜ不味いのか、俺は分からなかった。
「…そうですか、ありがとうございました、それでは失礼します」と言い俺は厨房に戻り、
その日の仕事を終えて 車に乗り込み家に帰って、
ベッドの上で呼吸をする。
深夜2時、
俺は初めて自分の料理を作り、
答えを味わった。
FIN.
愛情の一手間って何でしょうね。
ありがとうございました。




