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グール進化論 ~おいしさと社会の哲学~  作者: 腹ぺこグール
第1章 【対話】悦の構造と文化の起源
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第1章 【対話】悦の構造と文化の起源 ④

でり学者「でさ。本能ってどこいったんだろ。まあ文化を食べるようになったって話だけど」


学者「文化を食べる体ね」


学者「まあ、文化ってさ、創造されてくだけじゃなくて、『本能』を否定する側面あるよね」


学者「ある程度文明ができてきたグールは生肉を這いつくばってすすることを恥じるようになったと思う」


えも学者「そういやグールの遺跡で原始的なフォーク使ってたらしい痕跡見つかったってこないだ発表があったよね」


えも学者「あ、そっか。本能を否定してでの価値付けが文化ってやつ?」


学者「そうそう。美味しいの作り方も色々できてきたと思うよ。焼いて塩かければうまい、とか」


学者「でもおいしいなら、調理したらそのまま手づかみで食べればいいんだよ」


でり学者「ワイルド」


えも学者「あー、言葉とか複雑な手続きの発生ってひとつの儀式性の発生でもあったのかな。ほら、数学も法則守んないとただしい答えでないし、伝達も過去形とか現在形とかちゃんと守らないと情報伝わんない。たださ、それだけじゃないんだ」


えも学者「分配の試行錯誤の過程でボディランゲージとかも使われてたはず。最初はそんな精密言語じゃなかっただろうし。言語ってパロールと書く記号だけじゃないし」


えも学者「身体記号っていうのかなあ。この辺ってさ、分配の指標以上の意味をこめられると思うんだ」


えも学者「例えば指を三本立てて『君にはお肉を3つあげる』と伝えるとしてさ」


えも学者「腹が立つ顔で指三本振られたらムカつくと思う」


でり学者「あー、儀式性って正しい情報伝達とかだけじゃなくって」


えも学者「ムカつくやり方を禁止するために神聖ななんかが生まれたのかも」


学者「なんとなく気づいちゃった」


学者「本能ってさ。感情になったんじゃない?」


学者「ほら、おいしいとおなかいっぱいが満たされるわけだ。そして、文化は本能を否定するところから始まる」


学者「そう、グールたちは社会性と再分配を試行する時、最初は本能を堪えたはず」


えも学者「そっか!そこからある意味本能の否定は始まっていたわけで」


学者「そうそう。美味しいで争わないためには分け合うこと。そして、それを守るには本能を抑えられないのは『恥』ってことにするのが1番だ」


学者「文化における本能の代謝は感情」


えも学者「えーと、おいしいを覚えてから、生存のために食べるからおいしいから食べる偏食になって」


でり学者「学者が好き嫌いから進化は始まったって言ってたな。おいしい⇒おいしくないのはいや⇒嫌」


えも学者「感情が生えた。好き嫌いによる価値付けからの原始的なやつかー」


でり学者「で、本能に任せて『それよこせ!』ってやるばかりじゃ逆に群れに責め立てられる訳だ。まあ偏食が始まったばかりの時点では、『おいしいもの=生きるためのものとして奪い合う』っていう時点で、まだ生存本能と偏食ってそんな別れてなかった」


えも学者「好き嫌いもだけど、おいしいものはそとそも少ないからそれが主食にシフトした時点で知能を生やさないと絶滅の危機だったのかもね」


学者「おいしいはしんかのもと」


学者「まあこれは欲望の接続切断の二項対立から、さらに好き嫌いで判断するっていう発展になってる。そう、本能だったものが選り好みするってとこから様々な感情へと分化してったんだろうね。分け合えれば食べられるから、そこに接続するために今は食欲を我慢して切断とか」


でり学者「まー、本能から感情がはえて、群れからそういう社会性が生えてきて」


でり学者「分配の時の記号をムカつく形でやるとかいう煽りっていうミームとかも産まれたんだろうね。原始的な時は生きるか死ぬかが判断基準だったけど、感情が産まれてからは戦い方が穏便かつ多様化した」


えも学者「それによる内部分裂で種がほろばないように平等のための儀礼性がうまれて、そしていつしか平等のためだったのが富を得るために利用するための儀礼性として利用されるようになって」


学者「分配できるくらい富が豊富なやつ=神聖視になったんだろうね。分配の基準を決める主体であり、同時に煽っちゃいけないやつ」


でり学者「社会的バランスと利得と感情が結びついてる」


学者「ほらやっぱり人間はグールから進化したんだよ」


えも学者「なんていうかあ…」


えも学者「おいしかったわけでしょ。おいしいを求めて、生存以上の喧嘩が始まったわけでしょ」


えも学者「まあその過程で社会性の再定義とか分配の試行錯誤とか始まってさ。そう、群れが社会に進化してく」


えも学者「そう、グールに『おいしい』を分配し合うための社会的エクリチュールが発生したわけだよね」


えも学者「『これは俺の美味しい』『よこせその美味しいの』って争ってたのが分配し合うようになる。エクリチュールって言葉以前の言葉の傾き偏りを決めるわけでしょ。そう、言葉と社会の秩序」


えも学者「で、それを階級社会がまたいじるの。支配的なイデオロギーなんてない。イデオロギーは元々支配的だから。支配的イデオロギーって言葉が適用されるのは、まさに上位のイデオロギーに『お前らは平民として税を納めろ』とかそういうのを押し付けられる下の側なんだよね」


えも学者「それがでりたんが言ってた、貴族グールの『美味こそ純粋表現、平民グールは食べられればなんでも美味しいって言うから奴らの言葉はただの指標』とか言ってたヤツ」


えも学者「グールのおいしいとか好き嫌いからエクリチュールとかイデオロギーとか発達して今の人間に繋がってきたって…」


えも学者「美味しいを求める執念の果の神話作用が人間って考えると…えも…」


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