第1章 【対話】悦の構造と文化の起源 ③
でり学者「はい、本能いこうか」
えも学者「本能にいくまえに整理しよ。まずグールは生き物として見境なく食ってた。生存本能。まあ生きるために食べる。で、ある日『おいしい』を覚えて、生きるために食べることから『おいしい』を貪ることにシフトしたって話だよね」
学者「そうそう。で、おいしいから好き嫌いを覚えて偏食するようになったから、グール特有の強い肉体スペックが弱体化して、人間になったわけ」
えも学者「その偏食でまず争いが起きて、社会性の再定義と再分配が何度も試みられるうちに言語とか発達してきて、手続きが変わったからっていうのも今の人間への進化の道筋にあるよね」
でり学者「それ。生きるフィールドが単なる自然の中の弱肉強食から、社会ってとこに変わった」
えも学者「うーん、社会が新しい野生って感じ?」
でり学者「野生っていうから本能の更新じゃない?単なる欲求だけで動くと生き残れない性質になった」
えも学者「おいしいがないと生きられないからだになった…」
でり学者「そのさー。理性で分配をコントロールするとこってさ、ぼく的には『欲求』から『欲望』への進化に見えるわけよ」
学者「といいますと」
でり学者「単純に原始的な生物の本能が生きるためってとこに仮定するとさ。まあ、色々分配が発達すれば、生きるとおいしいが同時に満たされるようになる」
でり学者「となるとまあ生きる条件はある程度揃ったとしよう。そこから先は純粋な欲求じゃなく『欲望』が始まったと考えられるわけ。あいつより美味しい物食べたいとか誰よりも恵まれたいとか」
でり学者「となると、欲望を満たす再分配なわけ。新しい本能だよね、『満たされたい』って。それも生存ばっかりじゃなくて、文化的にもさ」
えも学者「なるほど。生存ライン変わるよね。野生の頃は生きてさえいれば勝ちだったのが、文化的な手が回ってこない=理性による美味しいがちゃんと分配されてこないのは満たされないってやつ」
学者「じゃー、おいしいから始まり、かつて原始的だった生存本能は栄養から文化を食べることを望み始めたわけだ」




