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グール進化論 ~おいしさと社会の哲学~  作者: 腹ぺこグール
序章
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序章 おいしいの哲学

今回は講義録形式。

学者「はいはい、魔物哲学の時間です。人間の祖先グール起源説について説明しまーす。といっても講義室誰もいないけどね、講義した証拠のこしとかないと来季の予算危ないからさ…ようし、自動筆記魔法、同期開始」


学者「まずはグールについて、魔物についての復習からいきましょう」


学者「グールとは、二足歩行する、足が二本手が二本の人間によく似た魔物です。食べるのは主に死骸。まあ、鮮度がいいもの食べたとしてもすごく弱い魔物や衰弱しているやつ。ちなみに弱点の属性は火属性です」


学者「あ、言っとくけど人間に擬態して人間を襲ったり、墓漁って死体食べたりとかの伝承上のやつじゃないからね。言雫教の伝承にある、理性と言葉のない、堕落した禁忌の象徴とか言われてるグールじゃないから。れっきとした魔物生物としてのグールだから」


学者「よし、話を戻します。魔物の生態系は圧倒的な食物連鎖です。生きるには何よりもパワー。ベヒーモスなんかは個体で圧倒的な突き抜けた力を持つし、小さな魔物でも、例えばアルミラージなんかはめっちゃ弱いけども、群れで行動することにより数で押し切ります」


学者「グールなんかもとにかく何でも見境なく食べるという摂食可能なジャンルの広さ。これも生きるパワーと言えるでしょう」


学者「で、ここからは魔物考古学の最新発表からね」


学者「ある時、グールに新しい価値観が生えた。本能とも違う新しい快楽ーそれは、『おいしい』です」


学者「『おいしい』が発生した起源として、魔物考古学では、たまたま雷に打たれたか、もしくは炎属性ブレスなんかを受けておいしくウェルダンに焼けたお肉を食べたことにより、『焼けた』もののおいしさに目覚めたからだと推測されています。生肉が主食のはずである彼らが、『火』を使った痕跡があったからです」


学者「そう、ミディアムだかウェルダンなお肉がおいしかったから、それまで弱点の火属性を避けていた彼らは、火属性を『おいしい』のために扱うようになったといわれています」


学者「さてと。『おいしい』からどうなったかに話を戻します。『おいしい』を覚えたことによって、グールは好き嫌いを覚え、偏食家になってしまいました」


学者「それまで好き嫌い言わずに何でも食べていたのに、『おいしい』しか食べたくなくなったから、争いが起きるようになりました。だって『おいしい』に限定すると食べられるものはぐっと減りますから。そして好き嫌いしたので弱体化しました。お前らもちゃんと魚は食べろよ」


学者「『おいしい』をめぐっての争い。しかし、身体は弱くなるしおいしいは足りないし、このままでは種が滅んでしまう」


学者「そこで、彼らは『おいしい』を分けあうために、自分たちの社会性と再分配を試みていくことになります。そう、何度も何度も」


学者「その気の遠くなるような試行の果てにいつしか人間に進化しました」


学者「文明は『本能の我慢』から始まった。『これはぼくのおいしい!』『お前のおいしいをよこせ!』これはすごく痛いし、飢えるから。とにかく『おいしい』を食べまくりたいを我慢して、分け合うことを試行し始めたのです。群れを社会性に、獲物を狩る力を分け合う力に変えていって」


学者「はい、魔物考古学での前提終わり。ここからがようやく魔物哲学、魔物人文学の時間」


学者「伝承上の禁忌のグールが祖であるとか聞いて震えあがってるだろうけど、そういう葛藤や試行錯誤は生き物としての我らの先祖のグールもやってきたことです。はい、次は『悦』と『快』の視点から」


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