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【連載版】クラスの陰キャが急に告白してきた理由を、俺は一生忘れられない  作者:
一章

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3/12

第3話 ぎこちない距離感

翌朝の教室は、昨日の屋上での会話を引きずったままの俺にとって、地獄のように息苦しかった。

 席につくと、斜め前の東雲がちらりとこちらを見た。目が合った瞬間、慌てて視線をノートへ落とす。

 俺も思わず視線を逸らした。昨日、あんな真剣な顔で「好きだった」と言われたあとじゃ、まともに顔を合わせられるはずがない。


「悠真ー、昨日の補習どうだった?」

「……ああ、普通」

 友人の問いかけに返事をしながらも、意識は東雲に向いてしまう。

 前髪に隠れた横顔、かすかに震える指先、そして時折こちらを意識している素振り。

 その全部が、俺を落ち着かなくさせた。


 ◇


 昼休み。

 購買でパンを買って戻る途中、階段で東雲と鉢合わせた。

「あ……」

 小さく声を漏らす彼女に、俺は条件反射で口を開く。

「よ、よう」

「……こんにちは」

 それだけ言うと、彼女は通り過ぎようとした。けれど俺は思わず呼び止めていた。

「なぁ」

「……はい?」

「昨日のこと……まだ返事できない。ごめん」

 言ってしまったあと、後悔した。こんな廊下で話すことじゃない。

 けれど東雲は首を振った。

「……分かってます。待つって言いましたから」

 その言葉に救われる反面、胸の奥が妙に痛んだ。


 ◇


 放課後、図書室。

 いつものように席を並べたものの、ぎこちなさは隠しようがなかった。

 ページをめくる音がやけに大きく響き、俺は落ち着かずに鉛筆をくるくる回す。

 一方で東雲はノートを開いたまま、ペンが止まっていた。


「……勉強、しないのか?」

「……すみません。集中できなくて」

「俺も」

 思わず口をついて出た言葉に、東雲が小さく笑った。

「……同じですね」

 その笑みはほんのわずかで、それでも俺の心臓を跳ねさせた。


 ◇


 帰り道。

 下駄箱で靴を履き替えていると、横に東雲が立った。

「……一緒に帰ってもいいですか」

 その声は小さかったけれど、はっきりと俺の耳に届いた。

「……ああ」

 校門を出るとき、周りの視線が突き刺さった。だが不思議と嫌ではなかった。

 ただ横を歩く東雲が、時折こちらを見上げる。そのたびに、言葉にならない感情が胸に膨らんでいく。


 それはまだ答えにならない。

 だけど確かに、俺と東雲の距離は少しずつ変わり始めていた。


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