聖夜の夜空に
「やぁ、美味しかったなぁ。」
ごちそうを食べつくしたお父さんがお腹をさすった。
…え?タイミング、無くない…?冷汗が頬を伝う。
「俺、ちょっと部屋で仮眠してきます。」
湊くんがカタンと席を立つ。
「わっ、私も!」
勢いで私も立ち上がる。湊くんは一瞬私を見た後、「そ。」と、一言言っただけだったけど…
階段を上って、部屋のドアのぶに手をかけた湊くんを呼び止める。
「ちょっと待ってください!」
湊くんは迷惑そうに顔をしかめる。
「なに…?仮眠したいんだって。」
「ちょっとだけ…話がしたくて。」
迷惑そうに見られて、少し胸が痛んだ。
「…何?」
聞いてもらえるみたいで安心して、そっと顔を上げる。湊くんは無表情だけど、じっと私の目を見てくれていた。
「クリスマスなので、ちょっと来てください!」
私は部屋のドアを開けて、湊くんを中に入れる。湊くんは少し驚いたように、目を丸くしたけど、ゆっくり私の部屋に足を踏み入れた。
「クリスマスプレゼントです!喜んでもらえるかわからないけど。」
私は正座して机においてあったプレゼントを手渡した。
湊くんは少し間を開けて、私の前に座り、そっと包装を破った。
「…マフラー?」
湊くんは紙袋の中から、ふんわりと編まれたベージュ色のマフラーを取り出した。
「はい!三日前にやっと思いついて、頑張って作りました!前に湊くんがスマホ見ちゃったとき、とっさに嘘ついてごまかしちゃったけど、気づかれなくてよかったです!」
その言葉を聞いた後、湊くんははっと息をのんだ。
「え、あれって俺のクリスマスプレゼントを考えてたの?」
「はい!そうですよ?サプライズにしたかったのでヒヤヒヤしましたけど…」
あの時を思い出すと、苦笑いしてしまう。
「…そっか。」
湊くんは、今まで見たことないような笑顔でマフラーを見つめた。その顔に思わずドキリとしてしまう。
「…湊くん。湊くんはカメラの前で無理して笑わないでいいんですよ。そりゃあ少し無理しないといけないこともあるけど、湊くんは湊くんです。」
そこまで言った後、湊くんの持つマフラーに目を落とす。
「このプレゼントも、今言うことを思い出してほしいなーって、少しでも湊くんを暖められたらなーって思って作ったんです。」
湊くんに笑ってほしくて徹夜した夜を思い出し、ふっと微笑む。
「湊くんも、周りの声に惑わされて悲しくなることもあると思います。」
今まで言いたかったことを一つにまとめる。湊くんはまっすぐに私を見ていた。
「でも、私はテレビの中の湊くんより、ありのままの湊くんの方が素敵だと思いますよ!」
本当にそう思う。私のさっきの、ありのままの湊くんの笑顔が大好きだ。
湊くんは驚いたように瞬きを繰り返したけど、ぷはっと笑った。
「歩実は面白いよな。なんでわかっちゃうんだろうな。俺のこと。」
「そうですか?嬉し…ん?待って、今歩実って言いました?!」
私がダッと前に身を乗り出すと、湊くんはスッと立ち上がって、くるっと背をむけた。
「プレゼントありがとう。じゃ、俺仮眠するから。」
湊くんは逃げるように私の部屋から出ていった。
「…なんか、嬉しいー…。」
私はバタンと床に寝転ぶ。あの湊くんの笑顔を思い出すと、胸があったかくなった。
「あの笑顔、テレビの中よりずっと明るかった。あの笑顔が最高のクリスマスプレゼントだなぁ。」
私のつぶやきは、聖夜の星の輝く夜空へと吸い込まれていった。
~十話に続く
最後まで読んでくれてありがとう!
湊くん喜んでくれて良かったねぇ~
ぜひ、次も読んでみて下さい!




