岳の試合で two
「すごかったねー!みなt、みなみくん!すっごい集中してましたね!」
「うん。」
相変わらず塩対応ネー。まぁ、そこが一周回ってかわいいというか、愛おしいというか。
「岳にちょっと挨拶して帰りましょう!」
「ん。」
湊くんは私を見もせず、素っ気なく答えた。
まぁ、そこが一周回ってかわいいというか、愛おしいというか。(二回目)
ニコニコしながら選手が集まっているところに歩いていると、岳の姿を見つけた。
「あ、岳ー!」
岳は、振り返って微笑み、私たちのほうに歩いてきた。
「お、歩実。来てくれたんだ。」
「うん!あ、こちら、みなっ、みくん!」
湊くんって言いそうになって慌てて訂正する。
「みなみ…くん、ね。よろしく。」
湊くんはちらりと岳を見た後、ちょっと黙っていた。
「み、みなみくん?岳に挨拶しましょ?」
湊くんはちらっと私を見て、岳に視線を移した。と、その時だった。
「なぁ、みなみくん。ちょっとこっち来てくれない?歩実も。」
「え?」
岳はちょっと真剣な面持ちで私たちを見つめた。
私たちは岳の後を追いかけ、倉庫裏までやってきた。
「ど、どうしたの?」
不安になってきて、少し震えた声が出た。それに気づいた岳は、私にふんわりと笑顔を見せてくれた。
「大丈夫。聞きたいことがあるだけだから。」
湊くんはじっと岳を見ていた。
「みなみくん。あんた、いったい誰?」
「は?」
私がすっとんきょうな声を上げると、岳はさらに言葉をつづけた。
「俺、試合始まる前、歩実がガラ悪い奴に絡まれてるのを見つけて助太刀しようとしたんだ。」
「えぇっ、あの時近くにいたの?!」
岳は私に頷いて、湊くんの方を向いた。
「歩実、みなみくんに助けられて、敬語でありがとうございますって言ったよな?」
「あっ、」
そういえば、いつもの癖で敬語だったかも…
「いとこに敬語使うかなって、思ったけど、最初は気にならなかった。けど、さっきも、みなみくんって言うたびにちょっと間違えるし、流石におかしいって思ったんだよ。あんた、歩実のいとこじゃないだろ。」
ズバリと言い切る岳。アワアワ慌てる私に目もくれず、湊くんはスッとマスクを取った。
「どえええ??!」
動揺して大きい声で叫んでしまった。や、だってバレるもん!
「俺、西片湊。」
二人の間に、シーンとした冷たい空気が流れる。そこに、ひょこっと私が侵入する。
「の、そっくりさん!!!」
鼻息荒くして、岳に力説する。
「…や、流石に無理あるだろ。」
「…ですよねぇ、」
仕方なく、ぼそぼそと事情を説明した。
「へぇ、じゃあ本物か。すげぇな。」
思ってた反応と違って私はちょっと拍子抜ける。
「え?問い詰めたいんじゃないの?」
「は?そんなことしてどうすんだよ。ちょっと気になっただけだって。このことは誰にも話さない。」
その一言にほっとしてふっと足の力が抜けた。
「良かったぁ…」
へなへなと座り込みそうになる私を湊くんが支えてくれて、
「ま、誰にも言わないんだったらいいよ。もう用事も済んだし、帰ろ。」
「へ?」
湊くんは私から手を放し、さっさと歩いていく。
「あ、ちょっと待ってください!マスク!ちゃんとしてください!」
私の言葉も聞こえないふりしてスタスタ歩いていく湊くん…
「ごめん岳!ちょっと先帰るね!待ってくださーい!」
走って追いかける歩実を見送って、岳は頭をかいた。
「…なんであいつは試合見に来たんだよ…。」
~六話に続く
最後まで読んでくれてありがとう!
ついに岳に正体ばれちゃいましたね~。歩実ちゃん嘘下手らしいですよ。
では、これからも頑張って更新していくので、ぜひ次も読んでください!




