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第一話:夢
暗闇の中で少女が膝を抱えて俯いている。
自らの手足すら視認できないような暗闇のはずが、目の前にいる人影が少女であることはすぐ分かった。肩ほどまである艶やかな黒髪が彼女の顔を隠しているせいで、表情は伺い知れない。
彼女はぽつりぽつりと、何事か、呟いている。憐憫を催す声色に、胸の奥が細波立った。判然としない、散り散りの言葉が余計に不安を掻き立てる。
少しでもその声を聞き取ろうと、少女の方へ近づいた。
彼女はぴくり、と肩を震わせ、顔を上げる。闇に溶け込むような黒髪が割れ広がり、少女の表情が闇の中に浮き上がった——。